第一記:始まり
光が、消えた。
「……え?」
気づいたときには、もう地面に立っていた。
「……ここ、どこ?」
周りを見渡す。
知らない景色。
崩れた建物。
ひび割れた地面。
そして、たくさんの緑。
「……すご」
思わず、声が漏れる。
「なにこれ……すごい」
怖いはずなのに。
少しだけ、ワクワクしていた。
「アッ君に見せたら、びっくりするだろうなぁ」
くすっと笑う。
「……よし」
小さく気合を入れる。
「探検、開始!」
最初に見つけたのは、大きなビルだった。
半分くらい崩れてる。
でも、中には入れそう。
「おじゃましまーす」
誰もいないのに、つい言ってしまう。
中は、ひんやりしていた。
足音が響く。
コツ、コツ、と。
「……ちょっと怖いかも」
小さく呟く。
そのとき。
カサッ、と音がした。
「……!」
振り向く。
何もいない。
「……気のせい?」
少しだけ、不安になる。
でも。
「大丈夫、大丈夫」
自分に言い聞かせる。
「すぐ帰れるし」
そう思っていた。
その日のうちに、迎えが来るって。
外に出る。
空は、少しだけ暗くなっていた。
星が、見え始めている。
「……あ」
見上げる。
「きれい……」
思わず、立ち止まる。
無数の星。
そして、その中に。
少しだけ赤い星。
アルスの声が頭に浮かぶ。
『あの星はなんて言うの?』
「アンタレス。さそり座の心臓…」
「ふふ」
「ちゃんと覚えてるよね」
少しだけ、寂しくなる。
「……早く帰ろ」
そう呟いた、そのとき。
「——ここは安全です」
「!?」
一気に振り向く。
誰もいない。
「……え?」
今の、なに?
「安心してください」
また。でも、今度は。
少しだけ、怖くなかった。
「……誰?」
小さく、問いかける。
返事はない。
でも。
なぜか、思った。
“悪いものじゃない”
「……ほんとに?」
自分でも分からない。
でも。
さっきまで感じていた不安が、少しだけ薄れていた。
「……まあ、いいか」
小さく笑う。
「安全なら、それで」
その言葉は。
まだ、自分のものだった。
その夜。
メルセは、廃墟の中で眠った。
少しだけ、不安を抱えたまま。
でも。
どこかで、安心しながら。




