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エピローグ:探記
外に出る。
風が吹く。
コケが、静かに揺れる。
アルスは、振り返った。
あの場所は、確かに存在している。
でも——
「……もう、違うんだな」
人がいたはずの世界。
でもそこには、“人”はいなかった。
ただ、安全に保たれた何かがあるだけだった。
「……消失済世界」
小さく呟く。
消えたんじゃない。
「……もう、終わってたんだ」
静かに、そう理解する。
空を見上げる。
星が広がっている。
あの日と同じ夜空。
「……あれは、何座だっけな」
小さく笑う。
『あれはねぇ、大隈座だよ!』
声が、よみがえる。
「……アンタレス」
ぽつりと呟く。
「蠍座の心臓、だったよな」
返事は、ない。
それでも。
アルスは、目をそらさなかった。
長い旅の果てに見つけたもの。
それは、希望なんかじゃなかった。
「……ちゃんと、見てきたよ」
誰に向けたのかも分からない言葉。
ただ一つ、確かなことがあった。
この世界は、もう——
取り戻せない。
それでも。
これは。
確かに、自分が見た“記録”だ。
消失済世界探記。
Fin.




