第八十一話 封印の最奥
本日1話目の投稿です。
石碑の奥へ続く道は、白銀の光に照らされながら静かに姿を現した。壁一面には古い紋様が刻まれ、そのどれもが微かに淡い輝きを放っている。長い年月、誰一人として足を踏み入れることのなかった場所とは思えないほど、そこには穏やかで澄んだ空気が流れていた。
「こんな場所があったなんて……」
巫女は驚きを隠せず、小さく息を呑む。
長老も静かに首を振った。
「私も初めて目にします。代々の長老ですら、その存在は伝えられていなかったのでしょう」
レオンは石碑の奥へ視線を向ける。
「行ってみよう」
その一言に仲間たちは頷き、白銀の番人も静かに歩き始めた。もう一体の守護獣もその隣へ並び、二体は迷うことなく最奥への道を進んでいく。その背中を見つめながら、レオンたちも後に続いた。
通路を歩き始めると、壁に刻まれた紋様が一つ、また一つと順番に輝き始める。光は足元を照らすだけではなく、まるで訪れた者を歓迎しているようにも見えた。やがて壁画のような彫刻が姿を現し、そこには七神猫と多くの人々が共に歩む様子が刻まれていた。
「見て!」
アカネが壁を指差す。
「これ、七神猫だよね!」
「本当だ……」
ミアは壁画へ近づく。
光、影、雷、風、炎、氷、星――七柱の神猫は、それぞれ異なる力を纏いながら人々を守るように立っていた。その中央には一人の青年が描かれている。顔は風化して分からない。それでも七神猫が自然とその青年へ寄り添っている姿から、特別な存在だったことだけは伝わってきた。
「猫王……」
レオンが小さく呟く。
「そうでしょう」
長老が静かに頷く。
「七神猫を従える王ではなく、七つの理を繋ぐ者。その姿がここに残されているのです」
ライは腕を組みながら壁画を眺める。
「へぇ。俺たちのご先祖様ってわけじゃねぇが、なかなか立派な奴だったみてぇだな」
「……似てる」
クロが短く呟く。
「え?」
レオンが振り向く。
クロは壁画の青年とレオンを見比べ、小さく頷いた。
「目」
その一言にミアが微笑む。
「うん。私も少しだけそう思った」
レオンは照れくさそうに頭を掻く。
「そんな立派な人と比べられても困るよ」
穏やかな笑いが広がり、張り詰めていた空気が少しだけ和らぐ。
その時だった。
先を歩いていた白銀の番人が足を止める。
低く喉を鳴らし、視線を正面へ向けた。
通路の先には、大きな円形の部屋が広がっている。その中央には白銀の台座があり、その上には一冊の分厚い書物が静かに置かれていた。表紙には石碑と同じ八つ目の紋様が刻まれ、近づくだけで神聖な気配が全身を包み込む。
「まさか……」
巫女の声が震える。
「失われたはずの……」
長老は目を見開いたまま、その名を口にした。
「『始原の記録』……」
その言葉が響いた瞬間、閉ざされていた歴史の扉が、静かに開かれようとしていた。
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