第八話 炎神猫アカネ
本日4話目です。こうやって人間は自ら苦しんでいくんだなぁ(遠い目)
黒煙が空へ立ち上っていた。
フェリニア獣王国の王都を目前にしたレオンたちは、急いで街へ向かっていた。
「急ぎましょう!」
ミアが焦った声を上げる。
「王都で神猫が暴れているなんて聞いたことがありません!」
ライも珍しく真面目な表情だった。
「嫌な予感がするな」
「第四席か?」
クロが首を振る。
「いや。第四席ならこんな騒ぎにはならん。もっと面倒な奴だ」
その言葉にフェリスが小さくため息を吐いた。
レオンは嫌な予感しかしなかった。
やがて城門へ到着する。しかし門は破壊されていた。周囲には兵士たちが倒れている。幸い命はあるようだが、誰も近づけないらしい。
「何があったんですか!?」
ミアが兵士へ駆け寄る。
獣人の兵士は青ざめた顔で答えた。
「赤い猫だ……」
「突然現れて……」
「誰も止められない……」
直後――
ドォォォォォォン!!
王都の中心部から巨大な爆発音が響いた。赤い炎が空高く噴き上がる。
レオンは思わず目を見開いた。
「火事!?」
「違う」
クロが即答する。
「あれは魔力だ。神猫の炎だ」
再び轟音が響く。空気が震えた。
フェリスの顔が険しくなる。
「急ぎます」
一行は王都へ駆け出した。
街中は大混乱だった。住民たちは避難し、兵士たちは遠巻きに様子を見ている。そして広場へ到着した瞬間――
レオンは言葉を失った。
巨大な炎の竜巻。その中心に、一匹の猫がいた。
燃えるような赤毛。
紅玉のような瞳。
小柄な体。
しかし放たれる魔力はフェリスやライにも劣らない。いや、怒りによって増幅された魔力は、それ以上にすら感じた。
「アカネ……」
フェリスが呟く。
赤猫が振り返った。
その瞬間、周囲の炎がさらに激しく燃え上がる。
「フェリス!」
少女のような声。しかし怒気に満ちていた。
「やっと来たか!」
「何をしているんです!」
フェリスが叫ぶ。
「街が壊れます!」
「知るか!」
アカネは尻尾を振る。
それだけで火柱が発生した。兵士たちが悲鳴を上げる。
ライが頭を抱えた。
「あー……」
「いつも通りだな」
「知ってるの?」
レオンが聞く。
ライは苦笑した。
「怒りっぽいんだよ」
「七神猫第五席」
「炎神猫アカネ」
「昔からな」
アカネは広場の中央へ降り立つ。紅い瞳がギラリと光った。
「教会の連中がいたから焼いた! 全部焼いた!」
フェリスが頭を押さえる。
クロも呆れていた。
「馬鹿かお前は」
「馬鹿じゃない!」
「教会は敵だろ!」
どうやら本人なりの正義らしい。だが街の被害が大きすぎる。住民たちは完全に怯えていた。兵士たちも武器を構えている。このままでは戦闘になる。そして神猫相手では王都が消し飛ぶ。
フェリスが前へ出る。
「落ち着いてください」
「嫌だ!」
「話を聞いて――」
「聞かない!」
会話にならなかった。
ライが肩をすくめる。
「いつもこうだ」
「じゃあどうするの?」
レオンが聞く。
するとクロがレオンを見る。
「王」
「え?」
「お前の仕事だ」
「は?」
突然振られた。
レオンは目を白黒させる。
「無理だよ! 相手は神猫だよ!?」
「だからだ」
クロは当然のように言った。
「猫使いだろ」
レオンは言葉を失う。確かに猫使いだ。だが相手は普通の猫ではない。神話の存在である。
しかしフェリスも頷いた。
「レオン様ならできます」
ライも笑う。
「やってみろ」
ミアまで期待の目を向けていた。
逃げ道がない。
レオンは大きく息を吐いた。そしてアカネへ近づく。
周囲から悲鳴が上がった。だがレオンは止まらない。
アカネが睨む。
「何だ?」
「お前も説教か?」
レオンは少し考えた。そして正直に言った。
「違う」
「ただ聞きたい」
アカネが眉をひそめる。
「何をだ」
「どうしてそんなに怒ってるの?」
その瞬間だった。
アカネの表情が止まる。炎も少しだけ弱まった。
「……は?」
予想外だったのだろう。
レオンは続ける。
「教会が嫌いなのは分かった。でも本当に怒ってる理由は別じゃない?」
沈黙が落ちる。
風だけが吹いた。
やがてアカネは小さく呟く。
「……遅かった」
「え?」
「ずっと待ってたんだ」
その声は先ほどまでと全く違っていた。
怒りではない。
寂しさだった。
「千五百年だぞ」
アカネが俯く。
「皆いなくなった」
「フェリスも、クロも、ライも」
「王も」
紅い瞳が揺れる。
「また一人になったと思った」
レオンは何も言えなかった。その感情が伝わってきたからだ。長い孤独。誰もいない時間。神猫だからこその苦しみ。
そしてアカネの周囲の炎が消えていく。
広場が静まり返った。
フェリスが微笑む。
ライも笑った。
クロだけは少し視線を逸らす。
照れ臭いのかもしれない。
アカネはレオンを見る。
「お前、変な奴だな」
「よく言われる」
レオンが苦笑すると、アカネは初めて笑った。
「気に入った」
そして小さな体で胸を張る。
「七神猫第五席、炎神猫アカネ! 今日からお前についていく!」
その瞬間、フェリスが満足そうに頷いた。
こうして四柱目の神猫が仲間になった。
だがその直後、王都の遥か上空。誰にも気付かれない場所で、一羽の黒い鳥が飛び去る。その足には小さな手紙が括り付けられていた。
行き先は聖王教会総本山。
そして手紙にはこう書かれていた。
『猫使い確認。神猫四柱が集結』
世界最大の宗教組織が、ついに本格的に動き出そうとしていた。
閲覧ありがとうございました。
筆が乗っているうちにどんどん投稿です。そう、まさに猫のような自由さ。
いやぁあの気まぐれな感じがいいですよね。普段つんけんしてる猫様がいたとしましょう。
機嫌がいい時にゆっくり近寄り”すりっ”とされてみてください。
はい。いちころです。当たり前ですね。猫様ですもの。(いつもの世迷言です)




