第七話 王としての最初の選択
本日3話目の投稿です。
さてストックが2桁を切り始めました。
でも公開したいから仕方ないよね。
「猫使い殿。ぜひ我が国へお越しください」
ドラグニア皇国の使者は頭を下げたまま動かなかった。森の中に緊張した空気が流れる。
レオンは思わずフェリスたちを見る。正直、自分一人では判断できない。昨日まで普通の村人だったのだ。国の招待など受けたことがあるはずもない。
「どうする?」
小声で尋ねる。
すると予想通り、意見が割れた。
「断るべきです」
最初に口を開いたのはフェリスだった。
「理由は?」
「早すぎます」
フェリスは使者たちを見ながら続ける。
「レオン様の存在はまだ秘匿すべきです。今の段階で大国と接触すれば、世界中に情報が広がります」
確かにその通りだった。教会が既に動いている。さらに国々まで動き出したら面倒なことになる。
「俺は行ってもいいと思うぞ」
ライが笑った。
「ドラグニアの連中は強い。力を重んじる国だ。少なくとも教会みたいに裏でコソコソはしない」
クロも珍しく口を開く。
「半分正解だな」
「半分?」
「ドラグニアは利用価値のない相手には興味を示さない」
レオンは苦笑した。それもそれで問題である。
ミアが不安そうな顔になる。
「私は反対です」
「ミアも?」
「はい」
彼女は真剣だった。
「フェリニア獣王国が先です。王都には神猫神殿があります。猫使いについても調べられます」
レオンは腕を組む。全員の意見に一理ある。だが問題は――
「僕が決めるの?」
「当然です」
フェリスが即答した。
「えぇ……」
胃が痛くなってきた。
しばらく考えた後、レオンは使者へ向き直った。
「招待は嬉しいです」
使者の表情が少し和らぐ。
だがレオンは続けた。
「でも今は行けません」
「理由をお聞きしても?」
「約束があるからです」
ミアが驚いた顔をする。
レオンは笑った。
「フェリニア獣王国へ行くって決めたんだ。途中で変えるのは違うと思う」
使者はしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。
「承知しました」
予想外にあっさりしていた。
「では伝言だけお伝えします」
使者は姿勢を正す。その目は真剣だった。
「皇帝陛下はこう仰いました」
森が静まり返る。
「王が現れたならば、竜もまた目覚める」
レオンは意味が分からなかった。だがフェリスたちの表情が変わる。特にクロ。いつも無愛想な黒猫が露骨に眉をひそめた。
「まさか……」
「知ってるの?」
レオンが聞く。
だがクロは答えなかった。代わりに使者が立ち上がる。
「それでは失礼します」
ドラグニア皇国の兵士たちは整然と森の奥へ消えていった。
使者たちがいなくなった後、レオンはクロへ向き直る。
「さっきの言葉、どういう意味?」
クロは面倒そうに尻尾を振った。
「昔話だ」
「気になるんだけど」
「俺もだ」
ライまで口を挟む。
クロは大きなため息を吐いた。
「……千五百年前」
その言葉に全員が耳を傾ける。
「最後の猫使いには仲間がいた」
「仲間?」
「竜王だ」
ミアが息を呑む。
レオンでも聞いたことがある。神話に登場する存在。世界最強の竜。
「猫王と竜王は共に戦った」
クロの声はいつもより低かった。
「そして共に消えた」
「消えた?」
「死んだのか?」
ライが聞く。
クロは首を横に振った。
「分からん。誰も知らない。ただ二人とも戻らなかった」
沈黙が落ちる。
レオンは空を見上げた。千五百年前。前の猫使い。竜王。教会。どんどん謎が増えていく。
その日の夕方、一行は森を抜けた。
目の前に広がる景色にレオンは思わず足を止める。
「すごい……」
地平線の彼方まで続く草原。その先には巨大な城壁都市がそびえていた。夕日に照らされ黄金色に輝いている。
「あれが」
ミアが誇らしげに言った。
「フェリニア獣王国です」
猫耳が嬉しそうに揺れている。
レオンは感動していた。村の外に出たことなどほとんどない。こんな大都市を見るのは初めてだった。
だがフェリスだけは表情が険しい。
「どうした?」
レオンが聞く。
フェリスは城壁を見つめていた。
「嫌な気配がします」
「え?」
「王都で何かが起きています」
ミアの顔色が変わる。
「そんな……」
その時だった。
遠くの空に黒煙が上がる。城壁の近くだ。人々の悲鳴が風に乗って聞こえてくる。
ライが目を細めた。
「騒がしいな」
クロも立ち止まる。
「間違いない」
「何が?」
レオンが尋ねる。
クロの黄金の瞳が鋭く光った。
「神猫の魔力だ」
全員が息を呑む。
フェリスが静かに告げる。
「第四の神猫が見つかりました」
「ですが――」
その表情は決して明るくなかった。
「かなり危険な状況です」
レオンは王都を見つめる。黒煙は増えている。悲鳴も止まらない。胸騒ぎがした。
そして彼はまだ知らない。
王都で暴れている第四の神猫が、七神猫の中でも最も気性が激しい存在だということを。
その出会いが、彼らにとって最初の大きな試練になることも。
閲覧ありがとうございました。
猫が嫌いな人に聞いたことがあります。何故猫が嫌いなのか。答えは、「引っ掻くから」、「懐かないから」、「威嚇してくるから」と。
……全てご褒美では?猫様の愛らしい爪で傷をつけて貰えるのです。下手すりゃ一生モノです。懐かない?なら懐いた時素晴らしく愛らしくなってしまいます。威嚇なんてとても可愛らしいではありませんか。
ほら、ね?(猫好きの世迷言です。…いつもより長くなってしまった)




