第六話 雷神猫ライ
本日二話目の投稿です。
いつの間にか100PV超えてました。ありがとうございます。
「おおっ! こいつが新しい王か!」
森中に響く大声とともに、黄金の毛並みを持つ巨大な虎――いや、神猫が豪快に笑った。バチバチと青白い雷が走るたび、周囲の木々が震える。
レオンは思わず後ずさった。
「で、でかい……」
「失礼だな!」
神猫は不満そうに鼻を鳴らす。
「俺はライだ!七神猫第三席、雷神猫ライ!よろしくな、王!」
初対面とは思えない距離感だった。
レオンが戸惑っていると、クロが呆れたようにため息を吐く。
「うるさい奴が来たな」
「何だと!?」
「事実だ」
「喧嘩売ってるのか!」
「買う気はない」
「くっ……!」
なぜかライだけが一方的に怒っていた。フェリスは慣れているのか苦笑し、ミアも額に手を当てる。
「神話の神猫様ってもっと神秘的な存在だと思ってました……」
「神秘的だぞ!」
「全然そう見えません」
「むう……」
ライは少しだけ落ち込んだ。意外と単純である。
その日の昼、一行はフェリニア獣王国へ向けて移動を開始した。森を抜ければ国境が見えてくるらしい。
「王、疲れてないか?」
「まだ大丈夫」
「そうか!」
ライは満足そうに笑う。一方でクロは周囲を警戒し、フェリスはレオンの隣を歩き、ミアが先導役を務めていた。
こうして見ると本当に旅の仲間のようだった。昨日まで一人だったのが嘘のようである。
その時、フェリスが足を止めた。
「レオン様」
「どうしたの?」
「少し試してみましょう」
フェリスが前足で示した先の茂みには、一匹の野良猫がいた。茶色の毛並みをした、ごく普通の猫だ。
「話しかけてみてください」
「普通の猫に?」
「はい」
言われるまま近づくと、猫は警戒するどころか興味深そうにこちらを見ていた。
レオンはしゃがみ込む。
「こんにちは」
猫が鳴いた。
『おなかすいた』
レオンは固まった。
確かに聞こえた。耳ではなく、頭の中に直接響いた感覚だった。
「え?」
『さかな食べたい』
「しゃ、喋った!?」
『人間が驚いてる』
猫の方も少し驚いているようだった。
レオンは慌ててフェリスを見る。
「聞こえた……!」
「そうでしょうね」
フェリスは当然のように頷く。
「猫使いの力です」
レオンは再び猫へ意識を向けた。
『君の名前は?』
そう考えた瞬間、猫が答える。
『タマ』
今度は自然だった。言葉というより感情に近いが、意味ははっきり理解できる。
「これが猫使い……」
胸が高鳴る。初めて職業らしい能力を実感した瞬間だった。
しかし、その感動は長く続かなかった。
ライが突然立ち上がったのだ。
「来るぞ」
耳をぴんと立てたライの声に空気が変わる。クロも身を低くし、ミアの表情が緊張に染まった。
「魔物ですか?」
「違う」
ライは険しい顔で答える。
「人間だ」
レオンも気配を感じた。森の奥から複数の足音と金属音が近づいてくる。
「教会か?」
クロが呟く。
だが現れた集団を見て、全員の予想は外れた。
黒い鎧に赤い外套。そして胸には竜の紋章。
「ドラグニア皇国の兵士か」
ライが眉をひそめる。
レオンもその名は聞いたことがあった。竜人たちが治める軍事国家であり、世界最強の武力を誇る大国だ。
その兵士たち十数人が森の出口を塞ぐように並んでいた。
隊長らしき男が前へ出る。そしてライを見た瞬間、片膝をついた。
「雷神猫ライ様」
一同が固まる。
予想外の展開だった。
男は頭を下げたまま続ける。
「我が皇帝陛下より伝言があります」
ライは腕を組んだ。
「聞くだけ聞こう」
男はゆっくり顔を上げ、今度はレオンを見る。
「猫使い殿」
「ぜひ我が国へお越しください」
「皇帝陛下が面会を望んでおります」
レオンは目を瞬いた。
教会には追われ、神猫には王と呼ばれ、今度は大国の皇帝から招待される。
状況が理解できない。
しかしフェリスの表情は険しく、クロも警戒を解いていなかった。そんな中、ライだけが面白そうに笑う。
「なるほどな」
雷が弾ける。
ライの黄金の瞳が細くなった。
「どうやら世界は思ったより早く動き始めたらしい」
その言葉の意味を、まだレオンは知らなかった。
閲覧ありがとうございました。
大きい猫、いいですよねぇ。なんというか、こうお得感がありますよね。あ、いえ小さい猫様が物足りないだとかいう不敬なことはこれっぽっちも思っていません。あくまで大きい猫は大きい猫の良さがありますということを言いたいだけです。はい。
あと、ネコ科の動物全般はすべて愛すべき対象だと思っております。やはり猫。猫様は世界を救うのです。(相も変わらず猫好きの世迷言です。)




