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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第五章 白銀の大地

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第七十九話 千五百年越しの約束

本日2話目の投稿です。

石碑に浮かび上がった八つ目の紋様は、静かな鼓動を刻むように淡く明滅を繰り返していた。その光は七つの紋様とはどこか異なり、見る者の心へ直接語りかけるような不思議な温もりを宿している。祈りの間を包んでいた神聖な空気はさらに澄み渡り、先ほどまで激しく戦っていたことが遠い出来事のように思えた。


「こんな紋章……見たことがありません」


巫女はゆっくりと首を振る。


「白猫族に代々伝わる記録にも、この印は残されていないはずです」


長老も石碑へ歩み寄り、静かに紋様へ手を伸ばす。しかし指先が触れる寸前、紋様は水面のように揺らぎ、柔らかな光となってレオンの前へ流れてきた。


「僕に……?」


レオンが思わず呟く。


白銀の番人はその様子を静かに見守り、小さく喉を鳴らした。隣に立つもう一体の守護獣も穏やかな瞳でレオンを見つめ、ゆっくりと頷く。その仕草には迷いがなく、まるで二体とも同じ答えへ辿り着いているようだった。


すると紋様から一筋の光が伸び、レオンの胸元へそっと触れる。


温かい。


春の日差しのような優しい温もりが全身へ広がった瞬間、レオンの脳裏へ無数の光景が流れ込んでくる。


雪に閉ざされた山々。


白銀の毛並みをなびかせながら駆ける守護獣たち。


笑顔で寄り添う白猫族の人々。


そして――空を覆い尽くす黒い瘴気。


「っ……!」


レオンは思わず息を呑む。


それは誰かの記憶だった。遠い昔、この地で本当に起きた出来事が、映像となって心へ流れ込んでくる。


「レオン!」


ミアが慌てて駆け寄る。


「大丈夫?」


「ああ……大丈夫。でも……」


レオンは石碑から目を離せない。


「この石碑は、僕に何かを見せようとしてる」


巫女と長老は顔を見合わせ、小さく頷いた。


「封印は、あなたを認めたのでしょう」


長老が穏やかな声で言う。


「猫王としてではありません。この時代を生きる、一人の継承者として」


その言葉を聞いたライは腕を組みながら笑う。


「へっ、さすがレオンだな!」


「最初からそうなると思ってた!」


アカネも嬉しそうに尻尾を振る。


一方でクロは石碑を見つめたまま、小さく呟いた。


「……来る」


その一言に、その場の空気が変わる。


石碑の奥から、新たな光が静かに溢れ始めていた。


それは先ほどまでの優しい輝きとは違う。


誰かが長い眠りから目を覚まそうとしているような、確かな気配だった。


閲覧ありがとうございました。誤字脱字などありましたらご報告の程お願いします。

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