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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第五章 白銀の大地

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第七十六話 救うべきもの

本日2話目の投稿です。

揺らいでいた紅い瞳が、ゆっくりとレオンへ向けられる。


その瞳に宿る憎しみは薄れ、代わりに苦しみと戸惑いが滲んでいた。全身を覆っていた瘴気も勢いを失い、黒い影は頭を押さえながら苦しげに唸る。まるで身体を支配する何かへ必死に抗っているようだった。


「やっぱり……」


ミアは胸を押さえながら一歩前へ出る。


「この子、助けてって言ってる」


レオンは静かに頷いた。


「ああ。もう分かった。僕たちが倒すのは、この子じゃない」


その言葉に巫女は静かに目を閉じる。


「あなたなら、そう答えへ辿り着くと思っていました」


その瞬間だった。


黒い影の胸から禍々しい黒い結晶がゆっくりと姿を現す。心臓のように鼓動を繰り返し、そのたびに黒い瘴気が影の身体へ流れ込んでいく。苦しみの原因は誰の目にも明らかだった。


「……あれだ」


クロが短く告げる。


「へっ! 分かりやすくて助かるぜ!」


ライが雷をまとい、一気に飛び出した。轟く雷撃が黒い結晶を守る瘴気へ叩きつけられ、その壁を大きく揺らす。続いてアカネが炎をまとい、燃え盛る蹴りで瘴気を吹き飛ばした。


「今だよ!」


影が揺らいだ一瞬を逃さず、クロが足元の影から飛び出す。鋭い爪が結晶を覆う最後の闇を切り裂き、黒い結晶が完全に姿を現した。


「レオン!」


仲間たちの声が重なる。


レオンは迷わず駆け出した。


白銀の番人も並ぶように石碑の前へ立ち、氷の理を解放する。石碑から溢れる白銀の光が剣を包み込み、祈りの間全体へ優しい輝きが広がった。


「もう終わりにしよう」


レオンは剣を真っ直ぐ突き出す。


狙うのは黒い影ではない。


その胸に宿る、闇だけだった。


白銀の光をまとった剣が黒い結晶を貫く。


乾いた音が響き、結晶は大きく亀裂を走らせた。


「ギャアアアアァァァッ!」


耳をつんざく悲鳴とともに結晶は砕け散り、黒い瘴気が天井へ向かって一気に噴き上がる。闇は悲鳴を上げながら霧となって消えていき、祈りの間を覆っていた重苦しい空気は嘘のように晴れていった。


黒い影は力なく膝をつく。


全身を覆っていた闇が静かに剥がれ落ち、その奥から淡い白銀の光が姿を現し始めた。


閲覧ありがとうございました。誤字脱字などありましたらご報告の程お願いします。

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