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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第五章 白銀の大地

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第七十五話 猫王の選択

本日1話目の投稿です。

黒い影は静かに前脚を持ち上げる。その動きに呼応するように、石碑の亀裂から溢れる瘴気はさらに勢いを増し、祈りの間を覆い尽くそうとしていた。雷も、影も、炎も確かに闇を押し返している。それでも石碑から流れ込む力は尽きることがなく、戦いは終わりの見えない均衡を保ち続けていた。レオンは剣を構えたまま、黒い影ではなく石碑を見つめる。


「……違う」


小さく漏らしたその一言に、ミアが振り返る。


「レオン?」


「この子を倒しても終わらない」


レオンはゆっくりと石碑へ歩き出す。


「あの影は封印を守ってるんじゃない。封印から力をもらって動いてるんだ」


巫女は静かに目を見開いた。


「気付いたのですね」


「だから、戦う相手はあの影じゃない」


レオンは白銀の番人を見つめる。


「番人がずっと守ってきたのは、この石碑なんだよね」


白銀の番人は低く喉を鳴らし、小さく頷くように目を細めた。


「だったら僕も守る」


その言葉を聞いた瞬間、黒い影が初めて大きく動いた。紅い瞳がレオンだけを捉え、一直線に距離を詰めてくる。黒い腕が振り下ろされ、空気そのものが裂けるような轟音が祈りの間へ響いた。


「させねぇ!」


ライが巨体を滑り込ませ、雷をまとった拳で黒い腕を受け止める。激しい雷鳴が響き、衝撃で床が砕け散る。それでも黒い影は止まらず、さらにもう一方の腕をレオンへ伸ばした。


「……遅い」


クロが影から現れる。


鋭い爪が黒い腕を深く切り裂き、瘴気の流れを断ち切る。その隙へアカネが神炎をまとって飛び込み、燃え盛る蹴りが黒い影を大きく吹き飛ばした。


「レオン!」


アカネが振り返る。


「今だよ!」


レオンは力強く頷き、石碑の前へ駆ける。白銀の番人も並ぶように歩み寄り、静かに前脚を石碑へ添えた。純白の光と氷の理が石碑を包み込み、その隣へミアもそっと両手を重ねる。


「お願い……もう苦しまなくていいから」


生命の光が静かに広がる。


その瞬間、石碑の亀裂が淡く輝いた。


黒い瘴気ではない。


温かな白い光が、亀裂の奥からゆっくりと溢れ始める。


巫女は目を潤ませ、小さく微笑んだ。


「封印が……応えています」


その言葉と同時に、黒い影の動きが初めて止まった。


紅い瞳が揺らぎ、まるで何かを思い出そうとするかのように、静かにレオンたちを見つめ返した。


閲覧ありがとうございました。誤字脱字などありましたらご報告の程お願いします。

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