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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第五章 白銀の大地

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第六十八話 雷神猫の本来の姿

本日3話目の投稿です。

祈りの間を揺らす鼓動は、一度鳴るたびに重みを増していく。石碑の亀裂から溢れる瘴気は白銀の結界を押し広げるように広がり、黒い腕も次々と再生を繰り返していた。白銀の番人は懸命に結界を維持しているが、その足元へ黒い瘴気が絡みつき始めている。長い年月守り続けてきた力も、少しずつ限界へ近付いていた。


「このままじゃ……」


レオンは白銀の番人を見つめる。


「番人がもたない」


その言葉に、ライは静かに前へ歩み出た。いつもの豪快な笑みは消え、真っ直ぐ石碑を見据えている。その横顔を見たクロも、影の中から静かに姿を現した。


「……限界だ」


ライはゆっくりと拳を握る。


「仕方ねぇか」


その身体から眩い雷光が溢れ始める。青白い稲妻は床を駆け抜け、祈りの間の天井まで伸びると、轟音とともに渦を巻いた。激しく揺れる光の中でライの身体は一回り、また一回りと大きくなり、黄金色の毛並みは逆立つ雷そのものへ変わっていく。


「おお……」


長老は思わず息を呑む。


「これが……雷神猫様」


やがて雷光が弾け飛ぶ。


そこに立っていたのは、レオンの何倍もの大きさを持つ神々しい雷神猫だった。黄金の毛並みには無数の雷が走り、たてがみは雷雲のように揺らめく。一歩足を踏み出すだけで床へ稲妻が走り、祈りの間全体が震えた。その姿には恐ろしいほどの力が宿っているにもかかわらず、仲間たちを見つめる瞳はどこまでも力強く、優しかった。


「へっ」


ライは口元を吊り上げる。


「久しぶりだな。この姿になるのは」


レオンは思わず笑みを浮かべる。


「ライ……すごい」


「後ろは任せた!」


ライは地面を蹴る。


雷鳴が轟いた瞬間、その巨体は信じられない速度で巨獣の懐へ潜り込んでいた。巨大な拳が黒い腕をまとめて打ち砕き、続く体当たりが石碑から伸びる瘴気ごと吹き飛ばす。圧倒的な雷の奔流は再生しようとする黒い結晶を焼き尽くし、祈りの間へ久しぶりに眩い白い光を取り戻した。


「すごい……!」


ミアは目を輝かせる。


「これが七神猫の、本当の力……」


しかし、巫女は静かに目を伏せた。


「まだ足りません」


その言葉と同時に、石碑の亀裂がさらに大きく広がる。


砕け散ったはずの黒い腕は瘴気を吸い込みながら再び形を取り戻し、その数は先ほどの倍以上へ増えていた。さらに石碑の奥からは、今まで感じたことのないほど濃密な闇がゆっくりと溢れ出し始める。


ライは石碑を睨み据え、小さく息を吐いた。


その瞳には、まだ終わらせるつもりはないという強い意志が宿っていた。


閲覧ありがとうございました。誤字脱字などありましたらご報告の程お願いします。

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