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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第五章 白銀の大地

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第六十三話 現れし黒き巨獣

本日1話目の投稿です。改めて59話は修正済みです。

闇の中で開かれた二つの紅い瞳は、まるで獲物を見定めるようにゆっくりとレオンたちを見渡した。渦巻く瘴気が一気に膨れ上がり、祈りの間の床を震わせる。石碑を中心に集まっていた黒い結晶は次々と絡み合い、巨大な四肢を形作っていく。その姿を目の当たりにした長老は息を呑み、思わず一歩後ずさった。


「こんなの……」


ミアが震える声を漏らす。


「黒い雪の力なの……?」


巫女は静かに首を横へ振る。


「違います。あれは黒い雪を生み出している存在ではありません。黒い雪に集められた怨念が、仮初めの器を得た姿です」


黒い結晶が砕けるような音を響かせ、ついに巨獣がその全貌を現した。狼にも虎にも見える漆黒の身体は天井へ届きそうなほど大きく、全身を覆う結晶は禍々しい赤黒い光を放っている。口を開けば冷気と瘴気が混ざり合った白い息が流れ出し、その咆哮だけで祈りの間の空気が震えた。


「来る!」


レオンが叫ぶ。


巨獣は地面を砕きながら一直線に飛び込んできた。ライは真正面へ飛び出し、雷をまとった拳を叩き込む。激しい雷光が炸裂し、巨獣の身体をわずかに揺らしたが、その巨体は止まらない。鋭い前脚が振り下ろされ、ライは舌打ちしながら横へ跳び、床へ深く刻まれた爪痕を見て眉をひそめた。


「力任せじゃ押し切れねぇか」


その一撃を囮にするように、クロの姿が影へ溶ける。気配を完全に消したまま巨獣の背後へ回り込むと、鋭い爪で首筋へ伸びる黒い結晶を切り裂いた。乾いた音とともに結晶の一つが砕け、巨獣は苦しげな咆哮を上げて大きく身体を揺らす。


「……効く」


「なら、一気に行くよ!」


アカネは炎を噴き上げながら巨獣の身体を駆け上がる。燃え盛る蹴りを連続で叩き込み、砕けた結晶が火花のように宙へ舞う。しかし次の瞬間、新たな黒い結晶が瘴気の中から伸び始め、砕けた場所を覆うように再生していった。


「うそ!? 戻ってる!」


レオンは歯を食いしばる。クロが壊し、アカネが砕いた結晶が、まるで時間を巻き戻すように元へ戻っていく。このままでは、いくら攻撃を重ねても決定打にならない。


その時だった。


白銀の番人が低く唸り、巨獣の真正面へ静かに歩み出る。黄金色の瞳は巨獣から逸れることなく、その身体から淡い白銀の光がゆっくりと溢れ始めた。まるで忘れていた何かを思い出したかのように、巨獣の紅い瞳が一瞬だけ揺らぐ。


巫女はその光景を見つめ、小さく微笑んだ。


「思い出したのですね……守護の理を」


その言葉とともに、白銀の番人の足元から純白の光が静かに広がっていった。


閲覧ありがとうございました。誤字脱字などありましたらご報告の程お願いします。

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