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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第五章 白銀の大地

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第六十二話 黒き鼓動

本日3話目の投稿です。58話の修正前と修正後のものが混ざって59話として投稿されてしまっていました。申し訳ありません。

祈りの間を揺るがす激しい震動に、天井から白い雪がさらさらと舞い落ちる。壁に張り付いていた黒い結晶は生き物のように脈打ち、不気味な鼓動が部屋全体へ響き始めた。白銀の番人は静かにレオンたちの前へ歩み出ると、低く唸り声を漏らしながら剣を構えた。黄金色の瞳は祈りの間の奥を鋭く見据え、迫る危険を誰よりも早く察知していた。


「みんな、来るぞ!」


「……左」


クロの声と同時に、その姿が影へ溶け込む。


「俺は第三席、雷神猫ライ!」


ライの身体が一瞬だけ光に包まれ、その輪郭が鋭く引き締まる。次の瞬間、雷をまとった姿へと変わり、拳を打ち鳴らした。


「まとめて来い! 全部ぶち抜いてやる!」


「よっしゃ!」


アカネは炎を噴き上げると、その身体が眩い光に包まれた。次の瞬間、炎は渦を巻くように彼女の周囲を覆い、赤い髪がさらに鮮やかに燃え上がる。瞳は灼熱の輝きを帯び、全身から溢れる熱気が空気を歪ませた。変身を終えたアカネは、炎をまとったまま一気に駆け出す。


「あたしが先に行く!」


次の瞬間、壁一面の黒い結晶が砕け散った。飛び散った欠片は空中で黒い霧へ変わり、幾つもの獣の姿を形作っていく。白銀の狼にも似たその魔物たちは、赤黒く染まった瞳をぎらつかせながら低い唸り声を上げた。冷気と瘴気が入り混じり、祈りの間は一瞬で戦場へと姿を変える。


白銀の番人は一歩も引かず、魔物の群れへ鋭い眼差しを向けた。全身の毛が逆立ち、低い唸り声が祈りの間へ響く。その姿だけで、目の前の敵が今までとは比べものにならない存在だと全員へ伝わってきた。


「考えてる暇はねぇ!」


ライが床を蹴り、雷鳴とともに正面の群れへ突っ込む。拳が一匹の胴体を貫き、激しい雷光が周囲の魔物まで巻き込んで吹き飛ばした。しかし砕けた身体は黒い霧となり、再び集まって元の姿へ戻ろうとする。


「へっ! しぶてぇな!」


その隙を縫うように、クロが背後へ回り込む。影から滑り出したその身体が一瞬だけ揺らぎ、鋭い爪が閃いた。魔物の首元に刻まれた黒い結晶だけが正確に切り裂かれ、結晶を失った魔物は悲鳴も上げられず、そのまま白い粒子となって崩れ落ちる。


「……核だ」


「なるほど!」


レオンはクロの一撃を見て叫ぶ。


「黒い結晶が弱点なんだ!」


「任せろ!」


アカネは炎をまとったまま軽やかに跳び上がる。空中で身体をひねると、燃え盛る蹴りが次々と魔物の結晶だけを砕いていく。一匹、二匹と光へ変わって消えていき、祈りの間へ再び白い雪が舞い始めた。


「やった!」


しかし、巫女は静かに首を横へ振る。


「まだ終わっていません」


その穏やかな声と同時に、祈りの間の中央にある石碑が低く唸り始める。床一面へ黒い紋様が広がり、砕けたはずの黒い結晶が吸い寄せられるように集まり始めた。瘴気は渦を巻きながら天井まで伸び、その中心で巨大な何かの輪郭がゆっくりと浮かび上がっていく。白銀の番人はレオンたちをかばうように一歩前へ出ると、喉の奥から力強い唸り声を響かせた。


「……デカい」


クロの短い言葉に、その場の誰もが息を呑んだ。


闇の中で二つの紅い瞳が、静かに開かれた。


閲覧ありがとうございました。誤字脱字などありましたらご報告の程お願いします。

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