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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第五章 白銀の大地

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第五十四話 雪原に咲く希望

本日2話目の投稿です。2000PVありがとうございます!

再び、ユキただ一人だった。


小さく開いた白い花を見つめ、思わず息を呑む。


見間違いではない。


黒い雪に覆われていた蕾が、確かに命を取り戻した。その奇跡を知る者は自分しかいない。ユキは胸の鼓動を抑えながら、そっとミアの横顔を見つめた。


その時だった。


ガルルルルッ!!


森の奥から黒狼たちが一斉に飛び出す。


雪煙を巻き上げながら迫る群れは、先ほどよりも数が多い。その赤い瞳には理性はなく、黒い雪に侵された獣特有の狂気だけが宿っていた。


「王!」


ライが叫ぶ。


「正面は俺が止める!」


青白い雷が弾ける。


ライは一直線に黒狼の群れへ飛び込み、その拳を地面へ叩き付けた。轟音とともに雷が雪原を駆け抜け、先頭を走っていた黒狼たちが一斉によろめく。


「クロ!」


レオンの声と同時に、黒い影が動いた。


クロは雪煙へ紛れ、一瞬で敵の背後へ回り込む。鋭い爪が閃くたび、黒狼たちの足元だけを正確に切り裂き、動きを封じていく。その姿は風より静かで、雪よりも気配がなかった。


「今だ!」


レオンが叫ぶ。


「任せろ!」


アカネは嬉しそうに笑い、炎を纏って駆け出した。


雪を蹴るたび炎が弾け、小さな火の粉が白銀の森へ散っていく。そのまま黒狼の間を縫うように駆け抜け、鋭い蹴りを次々と叩き込んだ。


「一匹!」


炎の回し蹴り。


「二匹!」


続けざまの猫パンチ。


「三匹!」


最後は身体をひねりながら飛び蹴りを放ち、黒狼をまとめて吹き飛ばす。


「やった!」


嬉しそうに拳を突き上げた次の瞬間、雪へ足を取られる。


「うわっ!」


転びかけた身体をライが支える。


「だから最後まで気を抜くなって!」


「ごめん! でも全部倒したぞ!」


「半分な!」


二匹のやり取りに、レオンも思わず笑みを浮かべた。


しかし、その笑顔はすぐに消える。


森の奥から、さらに重い足音が響いた。


ドン……。


ドン……。


雪が震える。


黒狼ではない。


もっと巨大な何かが、ゆっくりとこちらへ近付いてきていた。


「来る」


クロが低く呟く。


全員の視線が森の奥へ集まる。


その時、ミアの足元で揺れていた白い花が、ふわりと淡い光を放った。


誰も気付かないほど小さな光。


けれど、その光へ触れた黒い雪だけが静かに溶けていく。


「……やっぱり」


ユキは小さく呟く。


胸へ手を当て、静かに目を閉じる。


遠い昔。


シラユキから聞いた、一つの伝承。


『命を慈しむ者が現れた時、大地は再び息吹を取り戻す』


その言葉が、今になって胸の奥で静かに蘇っていた。


一方、少し離れた場所ではフェリスがしゃがみ込み、溶けた雪を指先ですくい上げていた。


黒い魔力は確かに弱まっている。


しかも、それは浄化の魔力とは違う。


もっと穏やかで、温かく、生命そのものを感じさせる不思議な力だった。


フェリスは誰にも聞こえないほど小さく呟く。


「……まさか」


その瞳は驚きに揺れていた。


そして森の奥から姿を現した巨大な影が、白銀の大地へ咆哮を轟かせる。


その姿を見たユキの表情が、一瞬で青ざめた。


「そんな……」


震える声が雪原へ消えていく。


「あれは……『白銀の番人』」


閲覧ありがとうございました。誤字脱字などありましたらご報告の程お願いします。

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