第二話 神獣フェリスと失われた職業
読みにくい部分があればご指摘の程よろしくお願いいたします。
基本的に毎日10:00に登校日予定です。
「我らが王よ」
その言葉を聞いた瞬間、レオンの思考は完全に停止した。
目の前には巨大な白銀の神獣。
森の木々よりも大きな体。
月光のように輝く毛並み。
神々しい翼。
そして黄金色の紋章が全身を覆っている。
どう考えても普通の猫ではない。
いや、普通の生き物ですらない。
「お、王?」
レオンはようやく声を絞り出した。
「ちょっと待ってくれ、王って誰のこと?」
白銀の神獣は首を傾げた。
「あなたです」
「いやいやいや!」
レオンは今にも首が取れそうな勢いで全力で否定した。
「僕はただの村人だよ!?
今日だってハズレ職業を授かって笑われたばかりなんだ!」
神獣は静かに目を細めた。
その姿はどこか微笑んでいるようにも見える。
「ハズレ職業?まさか」
次の瞬間。
神獣の体が再び光に包まれた。
巨大だった体が縮んでいく。
やがて現れたのは、一匹の白猫だった。
先ほどまで怪我をしていた小さな猫である。
「こっちの姿の方が話しやすいですね」
「しゃ、喋ったぁ!?」
レオンは飛び上がった。
猫が喋った。
しかも普通に会話している。
白猫は前足で耳を掻きながら言った。
「改めまして、私はフェリス。七神猫の一柱です」
「七神猫?」
「はい」
フェリスは当然のように頷いた。
「この世界には七柱の神猫が存在します。
私たちは古代よりこの世界を見守ってきました。
人々からは神獣と呼ばれています」
レオンは混乱していた。
神話の話なら知っている。
子供の頃に聞いたことがある。
世界を救った七柱の神獣。
だがそれは昔話だ。
おとぎ話だと思っていた。
実在するなんて聞いたことがない。
「そんな存在が何で僕なんかを王って呼ぶんだ?」
フェリスの瞳が真っ直ぐレオンを見つめた。
「あなたの職業を思い出してください」
「…猫使い」
レオンは苦笑した。
思い出したくもない。
人生が終わったと思った原因だ。
だがフェリスは真剣だった。
「猫使いは失われた伝説職です」
「伝説?」
「はい」
フェリスはゆっくりと語り始める。
「三千年前、神猫たちを束ねる者が存在しました。その名も猫王です」
森に風が吹いた。
どこか神話を語る吟遊詩人のような声だった。
「猫王は七神猫と契約し、世界を統べていました。
人々を守り、魔物を退け、国々の争いを終わらせた英雄です。
その猫王だけが授かる職業。それが猫使い」
レオンは思わず笑った。
「そんなわけないだろ。僕だよ?
村の普通の少年なんだよ。剣も強くない。魔法も使えない。
王様なんて無理だよ」
フェリスは静かに答える。
「だからこそです」
「え?」
「歴代の猫王は皆、優しい人でした。
力で支配した者はいません。
あなたは傷ついた私を助けました。
見返りも求めずに」
レオンは言葉を失った。
当たり前のことをしただけだ。
目の前で傷ついている命を放っておけなかった。
それだけ。
「それに」
フェリスが続ける。
「あなたは既に力を使っています」
「え?」
「私の声が聞こえるでしょう?」
レオンは固まった。
確かにそうだ。
普通なら猫の言葉など理解できない。
だがフェリスの言葉は自然に理解できている。
まるで最初からそうだったかのように。
「これが猫使いの力です。
猫たちの心を理解する能力。
全ての始まりの力」
レオンは自分の手を見る。
何も変わらない。
だが心の奥で何かが動いている気がした。
その時だった。
フェリスの耳がピクリと動く。
「来ます」
「え?」
「人間です」
レオンも気配を感じた。
森の奥から松明の明かりが近づいてくる。
複数人。
しかもかなりの人数だ。
「いたぞ!」
怒鳴り声が響く。
鎧を着た男たちが現れた。
十人以上いる。
胸には見覚えのない紋章が刻まれていた。
「教会騎士団……?」
レオンは呟いた。
聖光教会直属の騎士たちだ。
なぜこんな場所にいるのか。
隊長らしき男がレオンを指差した。
「発見した!」
「猫使いだ!」
その言葉にレオンは凍りつく。
猫使い。
なぜ彼らが自分の職業を知っている?
しかも探していたような口ぶりだ。
「生け捕りにしろ!」
「教皇様の命令だ!」
騎士たちが剣を抜いた。
レオンの顔から血の気が引く。
だがその隣で。
フェリスが静かに立ち上がった。
白猫の瞳が黄金色に輝く。
「どうやら」
フェリスは小さくため息をついた。
「彼らはまだ諦めていなかったようですね」
「フェリス?」
「レオン様」
白猫は振り返る。
その瞳には三千年の時を生きた者だけが持つ深い光が宿っていた。
「これがあなたの最初の試練です」
その瞬間。
白銀の魔力が夜の森を覆い尽くした。
騎士たちの顔が恐怖に染まる。
そしてレオンはまだ知らない。
自分が授かった「猫使い」という職業が。
世界の歴史そのものを揺るがす存在だということを。
閲覧ありがとうございました。
やはり猫なんですよねぇ。そう始まりは猫なんです。
猫から始まり、猫を経て、猫に終わる。
心理は猫にあり、です。(猫好きの世迷言です。聞き流してください。)




