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神獣使いではなく猫使いです  作者: 猫屋敷 春人
第一章 始まりの猫使い
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第一話 ハズレ職業「猫使い」

初めまして。猫屋敷ねこやしき 春人はるとと申します。

猫に焦点を当てた異世界物の小説というのもありなのではと思い、ぼちぼちと執筆していきます。

遅筆かもしれませんがよろしくお願いいたします。

「レオン・アークライト。前へ」


神殿に響く神官の声に、十五歳の少年レオンは一歩前へ出た。

今日は人生を決める日。

この世界では十五歳になると、神から授かった職業が明らかになる。


戦士。

剣聖。

魔導師。

聖騎士。

錬金術師。


優れた職業を授かれば、富も名誉も約束される。

神殿には同年代の少年少女たちと、その家族たちが集まっていた。

レオンは緊張しながら祭壇へ向かう。


(何でもいい。立派な職業じゃなくてもいいから、誰かの役に立てる職業が欲しい…!)


そう願いながら、水晶玉へ手を置いた。

眩い光が神殿を包む。

神官が目を見開いた。


「おお……これは……」


周囲がざわつく。

レオンは少しだけ期待した。

珍しい職業なのだろうか。

だが次の瞬間、神官の表情は微妙なものへと変わった。


「職業……猫使い」


神殿が静まり返る。

そして。


「ぶっ……!」


誰かが吹き出した。それを皮切りに次々と言葉の波が伝播してゆく。


「猫使いだってよ」

「聞いたことないぞ」

「犬使いならまだ分かるが猫使い?」

「何するんだ? 猫を散歩でもさせるのか?」

「見世物小屋に転職か~?」


笑い声が広がっていく。

レオンは固まった。

猫使い。

そんな職業、聞いたこともない。

神官も困った顔をしていた。


「記録によれば……動物系の下級職業の一種だと思われます」


思われます。


そう、つまり神官ですら詳しく知らない。

父は深いため息を吐いた。

その顔には今吐いたため息のような深い失望が刻まれている。

母は気まずそうに視線を逸らした。

せめてこちらを見てほしい。

自分が悪いわけでもないのに、レオンの胸が少しだけチクッ、と痛んだ。

それでも彼は無理に笑顔を作った。


「猫は好きだから、悪くないかもしれない」


そう呟いた瞬間だった。


「悪いに決まってるだろ」


冷たい声が響いた。

振り返ると、そこには幼なじみのカイルが立っていた。

彼は先ほど職業鑑定で『剣士』を授かっている。

村でも期待されている少年だ。


「レオン。お前、俺たちのパーティーに入る約束だったよな」


「う、うん」


「悪いけど無理だ」


周囲が静かになる。

カイルは容赦なく続けた。


「俺は将来Aランク冒険者を目指してる。それなのに猫使いなんて連れて行けるわけないだろ」


「……ッ」


その言葉に周囲も頷いた。

レオンは何も言えなかった。

確かにその通りだからだ。

剣士なら戦える。

魔法使いなら魔法が使える。

だが、猫使いは何ができるのか分からない。


「……ごめん」


反射的に謝罪の言葉が口からこぼれる。

パーティに入るという約束をしたのに。

役に立てないという罪悪感からなのかもしれない。

カイルは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに背を向ける。


「別に謝らなくていい」


その声はどこか優しさを含んでいた。


「ただ現実を見ろって話だ」


そう言い残して去っていった。

冷たいがどこか優しさを感じる言葉。

いや、自分がそういう風に思いたいだけなのかもしれない。







神殿の外へ出る頃には、空は夕焼けに染まっていた。

レオンは一人で歩いていた。

村へ帰る気にはなれない。

笑われるのが嫌ではない。別に、笑われるのは慣れている。

だが期待していた家族の落胆した顔は、思った以上に胸に刺さった。


「猫使い、か……」


何ができるんだろう。

何のために存在する職業なんだろう。

いくら自分に問おうとも答えは出ない。

何も考えずにただ歩く。


そして何かに導かれるかのように気づけば森の奥まで来ていた。


その時。


「…ニャア」


今にも消えてしまいそうなか細い鳴き声が聞こえた。


「……猫?」


レオンは足を止める。

茂みの向こう。

小さな白猫が倒れていた。


「あっ!」


慌てて駆け寄る。

白い毛並みは泥だらけだった。

足には傷があり、血も滲んでいる。

魔物に襲われたのだろうか。


「大丈夫か!?」


白猫は弱々しく目を開いた。

美しい蒼い瞳だった。

まるで人間のような知性を感じる。


「待ってて」


レオンは腰のポーチから包帯を取り出した。

冒険者になるための訓練で応急処置は習っている。

それが猫にも通用するのかはわからないがやることに意味がある。

傷を洗い、丁寧に包帯を巻く。

白猫は大人しくしていた。


「よし、これで少しは楽になると思う」


そう言って頭を撫でる。

白猫は目を細めた。


「ニャ」


「はは。可愛いな」


レオンは自然と笑っていた。

今日初めての笑顔だった。

どんな職業を授かったかなんて関係ない。

傷ついているなら助ける。

それだけだ。


すると。


突然、足元が光り始めた。


「え?」


地面に巨大な魔法陣が浮かび上がる。

今までこれほどの魔法陣は見たことがない。

白銀の光が森を照らした。

風が吹き荒れる。

木々が激しく揺れる。


「な、何だこれ!?」


レオンは目を見開いた。

目の前の白猫が宙へ浮かび上がる。

その体が光に包まれ、その光が膨れ上がる。

小さな体が巨大化していく。


白い毛。


黄金の紋章。


神々しい翼。


圧倒的な威圧感。


その姿はもはや猫ではない。


伝説にしか存在しない神獣だった。

森全体が震える。

レオンは言葉を失った。

巨大な神獣は静かに頭を垂れた。


そして。


人間の女性にも似た美しい声が響く。


「長き時を経て、ようやく見つけました」


蒼い瞳が真っ直ぐレオンを見つめる。


「我らが王よ」


レオンの思考は完全に停止した。

ただ一つだけ分かったことがある。

今日、自分の人生は終わったのではない。


今、確かに始まったのだ。

閲覧ありがとうございました。

ところで、皆様突然ですが、私は、猫が好きだ。そう、猫が好きだ。はっきりといえる。

私は、猫が大好きだ。

あのもふもふの体毛が好きだ。

あの立派なお鬚が好きだ。

目が好きだ。爪が好きだ。肉球が好きだ。しっぽが好きだ。

そう、猫は、猫様なのです。崇めましょう。(猫好きの世迷言です。聞き流してください。…どこかの少佐のセリフに似てますね。)



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