第十四話 猫王と猫王
本日3話目です。書き方や空行瞑想中です。
暗闇だった。
上も下も分からない。空も地面も存在せず、果ての見えない闇の中を無数の光が漂っている。赤や青、白の光は夜空の星々のように静かに瞬いていた。
レオンはゆっくりと目を開く。
「ここは……」
声は闇の中へ吸い込まれていった。
寒くも暑くもない。不思議なことに足元の感覚すら曖昧なのに、落ちる気配はなかった。王都で黒竜を見上げていたはずなのに、その景色はどこにも残っていない。
「核の中……?」
フェリスの言葉を思い出す。
災厄の核。黒竜の心。
その言葉を反芻しながら周囲を見回すと、遠くに一つだけ大きな光が見えた。他の光とは違う、眩しいほどの金色だった。
「……行ってみよう」
レオンが一歩踏み出した瞬間、闇が水面のように揺らいだ。波紋が広がり、景色が一変する。
視界が白く染まった。
轟音。
悲鳴。
炎。
そして――戦争。
「っ!?」
レオンは目を見開く。
そこは戦場だった。
焼け焦げた大地。黒雲に覆われた空。見渡す限りの瓦礫と倒れた兵士たち。燃え続ける街は、まるで世界の終わりのようだった。
「何……これ」
震える声を漏らした時、背後から声が聞こえた。
「懐かしいな」
振り返ると、一人の青年が立っていた。
二十代前半ほどの黒髪の青年。特別目立つ容姿ではないが、不思議な存在感がある。そして何より、その肩にはどこか見覚えのある白猫が乗っていた。
「フェリス?」
レオンが呟く。
白猫は今より少し幼く見えた。
青年は苦笑する。
「似てるだろ? 昔のフェリスだ」
レオンの心臓が跳ねた。
青年の周囲に光が集まる。
白。
黒。
金。
赤。
見覚えのある四つの光だった。
フェリス。
クロ。
ライ。
アカネ。
四柱の神猫たち。
「え……」
言葉を失うレオンに、青年は頭を掻きながら笑った。
「そんな顔するなよ。俺だって最初は信じられなかったんだから」
その気の抜けた笑顔に、レオンは妙な既視感を覚える。
見覚えがある。
鏡を見るたびに見ている顔に、どこか似ていた。
「まさか……」
青年は頷く。
「初めまして、レオン」
優しい声だった。
「俺はユウ。千五百年前の猫王だ」
世界が止まったような気がした。
伝説の英雄。世界を救った猫王。
もっと威厳のある人物を想像していた。だが目の前にいるのは、どこにでもいそうな普通の青年だった。
それが逆に信じられない。
ユウは苦笑する。
「そんな反応されると傷付くな」
「いや……もっとすごい人だと思ってた」
「よく言われる」
肩をすくめる仕草まで、どこかレオンに似ていた。
「でも安心した」
ユウが言う。
「お前が俺と同じで」
「同じ?」
レオンが首を傾げる。
ユウは静かに笑った。
「助けたいと思っただろ」
その言葉にレオンは息を呑む。
黒竜のことだった。
倒すのではなく、救いたいと思った。
ユウは満足そうに頷く。
「なら大丈夫だ」
その時、戦場の向こうから咆哮が響いた。
世界を揺らすような轟音にレオンが振り向く。
そこには黒竜がいた。
今、王都を襲っている竜と同じ姿。しかし様子が違う。
身体を覆う黒い霧。
胸に埋め込まれた赤黒い結晶。
そして苦しみに満ちた瞳。
「昔からなんだ……」
レオンが呟く。
ユウの表情が曇った。
「そうだ」
静かな声だった。
「全てはあの日から始まった」
風が吹き、燃える街の熱気が頬を撫でる。
ユウは黒竜を見上げた。その目には深い悲しみが宿っていた。
「これからお前に見てもらう。千五百年前の真実を、世界が隠した歴史を」
レオンは息を呑む。
戦場の空が赤く染まり、黒竜が苦しそうな咆哮を上げる。その胸では災厄の核が不気味に脈打っていた。
ユウは静かに振り返る。
「覚悟はいいか?」
レオンはゆっくりと頷いた。
ここから始まる。
千五百年前に隠された、本当の物語が――。
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勝手に書いてた世迷言少しお休みしますね。




