第十三話 黒竜の願い
本日2話目の投稿です。よろしくお願いします。
第13話 涙を流す黒竜
『助けて』
その声は確かに聞こえた。
誰にも聞こえていない。だがレオンだけには分かった。それは黒竜の声だった。
レオンは空を見上げる。王都の上空で暴れ続ける黒竜。その咆哮は大地を揺らし、人々を恐怖に陥れていた。
だがレオンには違って聞こえる。
「あいつは敵じゃない」
レオンはゆっくりと言った。
「苦しんでるんです」
全員が振り返った。
ミアが目を見開く。
「レオンさん?」
アカネは呆れたように尻尾を揺らした。
「何言ってるの? あれ黒竜だよ? 災厄だよ?」
ライも苦笑する。
「普通はそう思うよな」
だがレオンには分かっていた。
王都を揺らす咆哮は怒りではない。
悲鳴だった。
助けを求める叫びだった。
フェリスが静かに頷く。
「聞こえるのですね」
「うん。ずっと聞こえる」
レオンは迷わず答えた。
クロが小さくため息を吐く。
「猫王の力か」
アルトは黒竜を見上げたまま呟いた。
「前の猫王も同じだった」
またその名前だった。
前の猫王。千五百年前の英雄。
レオンはまだ会ったこともないその人物に、不思議な親近感を覚え始めていた。
その時、黒竜の胸で赤黒い結晶が激しく脈打った。
次の瞬間――
ゴォォォォォォッ!!
黒い霧が噴き出した。王都へ広がる呪いの霧に、兵士たちが慌てて後退する。
「近付くな!」
ミアが叫ぶ。
「呪いです!」
霧に触れた石畳は黒く染まり、草木は瞬く間に枯れていく。ただ漂うだけで周囲を蝕む異様な力だった。
レオンは思わず息を呑む。
「これが……」
「災厄の核だ」
アルトが険しい表情で答えた。
「千五百年前も同じだった。核は生き物を狂わせる。竜も人も関係なくな」
レオンは黒竜を見つめた。
あの巨大な竜も被害者なのか。
そう思うと胸が苦しくなった。
「助ける方法はないんですか?」
沈黙が落ちる。
やがてフェリスが口を開いた。
「あります」
レオンは顔を上げた。
「本当ですか?」
「ですが危険です。成功する保証もありません」
フェリスの表情は真剣だった。
「それでもいいです」
レオンは即答する。
黒竜は苦しんでいる。
なら助けたい。
理由はそれだけだった。
フェリスは小さく微笑んだ。
「やはり貴方は猫王ですね」
クロが呆れたように言う。
「お人好しとも言うがな」
ライは大笑いした。
「いいじゃねえか!」
アカネも楽しそうに炎を揺らす。
「助けるなら助けよう!」
神猫たちの反応に、レオンは少しだけ笑った。
その時、黒竜がこちらを見る。
真紅の瞳。
ほんの一瞬だけ、その瞳から敵意が消えた。
『助けて』
再び声が聞こえる。
レオンは拳を握った。
「絶対助けます」
その言葉に呼応するように、胸の奥の力が熱を帯びた。
フェリスが静かに言う。
「方法は一つです」
「何ですか?」
「核の中へ入ってください」
レオンは固まった。
「……え?」
「核の中です」
「いや、ちょっと待ってください。どうやって入るんですか?」
ライが吹き出し、アカネも大笑いする。
クロは呆れたようにため息を吐いた。
だがフェリスだけは真面目だった。
「災厄の核には心と記憶があります。黒竜の心を救うのです」
数秒の沈黙。
レオンは頭を抱えた。
世界を滅ぼしかけた災厄の中心に飛び込めと言われているのだ。
無茶苦茶だった。
だが不思議と嫌ではない。
空を見上げれば、黒竜は今も苦しんでいる。助けを待っている。
「分かりました」
レオンはゆっくり頷いた。
「行きます」
その瞬間、黒竜の胸の結晶が眩く輝いた。
赤黒い光が空を染め、王都全体が震える。
そして結晶の表面に亀裂が走った。
「まずい!」
アルトの表情が変わる。
「核が暴走する!」
次の瞬間、赤黒い光がレオンを包み込んだ。
「え?」
視界が真っ白になる。
身体が浮き、世界が遠ざかる。フェリスたちの声も聞こえなくなっていく。
そして最後に見えたのは――
涙を流す黒竜の瞳だった。
レオンの意識は、災厄の核の中へ吸い込まれていった――。
閲覧ありがとうございました。
(やばい、何も思いつかない。私の猫愛はこの程度なのだろうか。皆様に猫様のすばらしさを伝えたいのに。)もっと猫様への愛を深めたいと思います。(ここまで真面目に読んでる方はあまりいないでしょうが)




