【6】
みくちゃんの登場で、謎が深まります。
30分おきに必ずメッセージを入れる事を約束して、やっと外出許可が出たみくちゃんは友達の家に行く前に公園に花が落ちていないか探しに来たそうだ。
「ポケットにお花が入っていたの?」
「うん。10本で一束になってるけど1本なくしたと思ってたから……探しに来たかったけどすぐには来れなくって…」
まぁ、親御さんは心配だよな。見つかってから今まで一人で行動させてもらえなかったようだ。なんとかお母さんと約束してダッシュで公園まで来た所、花を発見した俺たちを見つけたと。
「これ、君が持ってた花なの?」
すっと彼女の前に花を差し出す識き目から、それを受けとるとじっと見つめる。
「おんなじ。ちょっと持ってて」
識き目に花を預けるとランドセルから小さな赤い花束を出す。
「ほら、おんなじでしょ」
「そうだね。…ちょっと見せてもらっていい?」
識き目が尋ねると、いいよ、と大事そうに花束も預けてくれた。
「…どうだ?」
じっと花束を見つめる識き目の瞳が青みがかっていき、ざわざわした感じが一瞬する。
「うん、やっぱり私と近いね」
「そうか」
ありがとうと花をまとめて返すと大事そうに受け取る。
「このお花を持ってると安心するの。あっちにいた時も朝起きるとご飯と一緒に置かれてたから」
「そっか。…みくちゃん。もし良かったらあっちにいる時のこと、ちょっと聞いてもいいかな?怖かったり嫌だったりするなら、無理はしなくていいよ。断ってくれていいからね。どうかな?」
「いいよ。怖いなって思わなかったし。あんまり覚えてないけど…」
みくちゃんの話はこうだ。
学校が終わり一人で帰っていた。公園の前を通った時、リィーンときれいな鈴の音が聞こえた。その音がどこからしていのるか気になって公園に入ったと思ったが、気付くと明るい部屋に横たわっていた。
それなのに怖いとは思わなかったそうだ。その部屋にはテーブルがあって、折り紙と赤い花束が置かれていた。それを見た時に鶴を折らなきゃ、と思ったそうだ。部屋にいる間は鶴を折り続けていた。お腹が空く頃にはテーブルの上に食事が置かれ、食べ終わるといつの間にか片付けられていた。折り続けた鶴もある程度増えるといつの間にか消え、新しい折り紙が置かれている。トイレやお風呂に入った記憶はないけど、身体がかゆくなったり気分が悪くなったりする事はなかった。朝起きると身体中がきれいになっていて不思議だった。何か気配の様なものは感じるが誰の姿も見えず、声や音も全く聞こえなった。それでも怖い感じはしなかった。戻ってきた時も憶えていない。気付くと公園のベンチで寝ていた。
一通り話してくれた後、警察にも同じ話をしたと教えてくれた。
「話してくれてありがとう」
「ううん。…お兄さん達も警察の人?」
「いや俺達は警察じゃないよ、えっと俺は大学院、あ、学生で、こいつは」
「私は妖怪の識き目だよ」
「っおい!」
「えっ!!お兄さん妖怪なの!?」
さらっと正体を話す識き目があまりにもあっけらかんとしていて拍子抜けしてしまう。
「…私の事、連れてったのも妖怪なの?」
「…怖い?」
「ううん。全然怖くないよ。妖怪なら納得!」
なんかちょっと目がキラキラしてないか…。
「ココだけの話、実は私の仲間じゃないかって思って調べてるんだ。だから私たちのことは秘密にしてもらえると助かる、お願いできるかな?」
「いいよ!秘密にする」
シーッだね、とジェスチャー付きで約束してくれた。すっかり識き目を妖怪と信じたようだ。ま、本物だしな。
「そっかぁ妖怪仲間か…。妖怪だったらこんな不思議な事もできるかもね。うん…」
何やらフムフムと納得している。
「私の話、少しは役に立つかな?」
「うん。すっごく助かった。ありがとう」
そろそろ返した方がいいかもな、親御さんとの約束もあるし。何かあったら連絡して欲しいとメッセージアプリで連絡先を交換した。別れ際に振り返ったみくちゃんが、これと赤い花束を半分に分けて識き目に渡した。
「お兄さんにあげる。お友達見つかるといいね」
「いいの?ありがとう」
バイバーイと元気よく手を振って走っていくのを見送った後、二人してベンチに座る。
「手がかりだよな、それ」
「そうだね」
こうやってまじまじと見ても俺には普通の花束にしか見えない。
だが、花束を見つめている識き目の瞳はまた青みがかっている。
「私と似たような気配の色が濃い。悪意は、感じられない。あの子が言ってたように落ち着くというか穏やかにする力が込められてる」
花びらを撫でながらじっと見ている。
「それと…。この公園の植物じゃないね。ポケットに入っていたのに全く傷んでないから、そいつが作成したものだ。植物の形はしてるけど御守りってのが正しいかな」
ツンツンと花をつつきながら識き目が続ける。
「公園の近くを通った時に鈴の音がしたと言ってた。おそらくこの公園に部屋に通じる場所があると思う。隠してるから簡単には見つからないし、まだあるのかも分からない」
「確かにな。そいつが目的を達成したのなら、みくちゃんで最後だ。わざわざ入り口を残しておく必要もないし、痕跡も全部消しそうだな」
「そうすると何が目的だったかはもう分かんないね」
確かに。何かもやもやするなぁ。考え込む俺を他所に、突然識き目が立ち上がった。
「かき氷食べたい。どこに行く?」
「はぁ?急かよ。…うーん。この前のファミレスでいいか?」
「行く」
こいつに奢ってばかりじゃないか、最近。意気揚々と公園を後にする識き目を追っかけた俺は、翌日11人目の被害が起きるなんて想像もしていなかった―。
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