(109)会えるけど会わない方がいい関係
ー グレーの結界が見えてるなら、カズがその力の外に抜けた証だよ。
それはね、この土地にかけられている呪いなの。
カズと学校に行った時、結構沢山歩いたけどその辺りは全部グレーに覆われてた。私にもどれぐらいの範囲かは分からないけど、多分隣の町ぐらいまでだと思う。
その結界の中で生まれてからずっと住んでる人なんかは、町で起きた悪い歴史や出来事とかを忘れちゃうみたい。逆に外の土地の人がそういう事を知ってても、結局この町に来て結界の中に入ると忘れちゃうんだって。カズはそういう状態だったの。でも今は結界が見えてるでしょ?それはカズがそのルールから外に出たっていうことなの。何て言えばいいんだろ・・・うーんと・・例えばサッカーってみんなでボールをわざわざ足だけで運ぶじゃん?そういうルールだからさ。でもあれって何も知らない初めて見た人からしたらすごい変だよね?なんで足だけであんなに難しい事をしているんだ!?って。それで、もしその人が参加してもいいって言われたらさ、当然ボールを手で運ぶよね?ひょいって持ってラグビーみたいに走ってってゴールにズドンと投げ込む。・・要するにそんな感じ。分かるかなぁ?w
とにかくカズは(今あるルールを守らなきゃいけないって思い込んでいる人たち)と同じ所にいるけど、それを守らなくてもいい存在になったってこと。どう?無敵でしょ?
世の中にはさ、沢山の人達が守らなくていいのに守らなきゃいけないって思い込んでる事がいっぱいあるよね?例えばお金の使い方とか。
ねぇ、なんであの紙きれで食べ物や服と交換出来るの?変だと思わない?だって一万円札って一枚20円で作れるんだよ?それなのになんで一万円は20円の価値じゃないの?ねぇ、なんで少ないってだけでそんなに使い道がないダイアモンドの値段はすっごく高くて、生きるのに必要な水の値段はタダ同然なの?それって誰かがダイアモンドは高級品だ、価値があるんだっていう見えないルールを作ったからでしょう?誰かが、一万円札は20円で作れるけど20円の500倍の価値なんだって思い込ませてるからでしょう?
私達は私達が作ったルールに首を絞められて、逆に今じゃそれで死にそうになっているんじゃないの?その外側に本来の幸せ・・元々人間が望んでる本当の幸福があるんじゃないの?
どうして人々はそれを忘れてまた新しいルールを作って、そのルールの中で苦しんだり泣いたりしなきゃいけないの?
ねぇ、どんなにもっともらしい理由をつけても(戦争をするべきだっていう思い込み)は、完全に間違ったルールなんじゃないの?
・・・ごめん、話が脱線しちゃったね・・でも私こういう事を子供の頃からずっと考えていたんだ。・・ブスでイジメられてて友達もいなくてさ、学校から帰るとベッドに寝転んで天井を見ながら、いつも一人でこういう事ばっか考えてた・・・それをね、なぜか今日の朝思い出したの。
アナタが横で眠っててさ・・少し寒いけど、澄んだ空気と静かで落ち着いた空間の中にいて・・・ここの天井が子供の頃住んでた家に似てたからかなぁ・・ああ、こういうのが本来の私だったんだなぁって思った・・・芸能界に入ってからはもちろんだけど、気づけばもう十年ぐらいはこういう事を考えてなかったなぁって。
時々立ち止まって元の自分に戻るっていう作業は、本当はすごく大切な事なんじゃないかな?それをする事で、みんないつの間にか自分が作ってしまった思い込みや(勘違いの結界)から出られるんじゃないかな・・・私はね、大きな一軒家に住んでバリバリ働いているお父さんと、美人のお母さんの間で、何不自由なく育ってアイドルになった女の子になりたかったの・・誰もが羨むような環境で、誰もが羨むような人生を歩む・・・でも、どうしてそうなりたかったんだろう?そうじゃなきゃいけないんだろう?・・いつからそんな風に考え始めたのか・・そういうルールを作っちゃったのか・・って事には気づいてなかった。・・・それはね、多分私には何もないと気づいた時からだったと思う。
可愛くもない、勉強も好きじゃない、運動も出来ない、音楽や芸術の才能があるわけじゃない、ある時(それがいつだかは分からないけど、多分同世代との集団生活の中に入った頃から)何もないカラッポの私に気づいて、その事を私自身が認めたくなかった。そして私はそんな自分を見ないようにした。
自分が自分を無視してるせいで、他人からも無視されたりイジメられたりするようになっていって、それを全部周りにいる人や環境のせいにした・・・そしてある日、その限界がきちゃって(チェンジ)の能力が発動したんだ。・・・でも、こういう事をはっきり分かったのはね、つい最近のこと・・・お母さんが死んでから。
何もない自分を無理やりチェンジさせても、結局は何もなかったんだよ・・だってそれは勝手に私が、そうすれば他人に認められるって思い込んで作ったルールだから。その中でどんなに成功したって、上手く出来たって、その外側には永遠にいけないの。誰かがどれだけ褒めてくれてもそれは誰かの価値観、本当のダイアモンドじゃない。本当の幸せはありのままの自分を自分自身が認めてあげないと、一生手に入らないんだってやっと分かったの。
だから私はこれから、自分が認める自分になる。私自身がこうありたいって思う人間になる為に、沢口明菜として頑張っていくよ!チェンジなんて使わなくてもセーラちゃんみたいな素敵な女性になってみせるからね!!(惚れんなよ!爆)
あ、そういえばセーラちゃんの事なんだけど、私がこういう言い方をするのも変だけど、無理に探さない方がいいと思う。きっとセーラちゃんも今、私と同じように自分自身に戻ろうとしてるんじゃないかな?その為に地元に帰って来てるんじゃないかって、そんな気がするの。
みんな、自分探しとか言って旅に出たりするけど、どこに行ったって自分は自分なんだから、まず自分の内側と向かい合わなきゃダメなんだよね。どうすれば幸せそうに見えるか?じゃなくて自分は本当はどうしたいのか、本当は何が欲しいのか、どうありたいのかって。
だからカズが無理やり見つけなくても、セーラちゃんの探してるものが見つかったらきっと自分から出てくると思うよ、それまで待ってあげてね
あとアリスちゃんの事は一足先に帰った私が陰ながらちゃんとフォローします!
変なやつらに追われてるらしいけど、何かあったらうちの事務所のコワモテ俳優陣を送り込むから安心して!あ、そしたらカズのマンションに住んでる人達がビビっちゃうか!あははっ
とにかくアリスちゃんとはずっとこれからも友達だから安心してね!私友達少ないからアリスちゃんは貴重な存在なのw
でもね、残念だけどカズとはもう会えないと思う。
連絡先を消したとしてもアリスちゃんを通せば会えない事もないだろうけど、お互い一周外にいるって感じでいいよね?
何ていうか・・会えるけど会わない方がいい関係ってあるじゃん?私たちも多分そうなったんだと思う。・・カズならこの意味分かるでしょ?
でも、昨日急にプロポーズしたのはマジだったからね!(フルなよ!!怒)
今もカズとなら結婚出来るって思ってるし。てか、私めっちゃわがままだから他の人とは無理かもしんない。ww
やっぱ好きなタイプと結婚相手って違うんだねー、もう一生結婚なんてこと考えないだろうなー。
そんなわけできっと私は一生独身で、これからもチンミモゴモゴ?・・あれ?チビノモウリョウ?なんだっけ?(たぶん沢口明菜は魑魅魍魎と書きたかったのだと推測される)とにかくわけのわからん人ばっかりの芸能界で一人、頑張って生きていこうと思ってます。・・いや、マジであの世界って私のチェンジどころじゃない特殊能力を持ってる人たちばっかだからさ!全然才能ないのにいきなり売れっ子になる人とかザラだもんね!きっと成功する為に悪魔と契約してる人とかもマジでいると思う、あのジョニー蒼も絶対そう!!!
あ、そうだそうだ、昨日も言ったけどジョニー蒼とのアポは必ず取るからね。アリスちゃんも連絡先知ってるかもだけど、だからって簡単に会える人じゃないから。でも私がなんとかする!本当に彼がカズの同級生のシタウケ君なのかどうか・・それは会ってのお楽しみだねww
だから非通知とか知らない番号から電話きても一応出れるようにしといてね、ジョニー蒼関係の人の場合もあるから。
では長くなりましたが、この辺でブログという名の手紙を終わりにします。
もしかしたらもうこのブログ自体更新しないかも。だって良い事も悪い事も、全ては私の中にしっかりと刻み込まれてるから。ここに残しておく必要ないもんね。
でもカズの事は絶対忘れないよ!今までデートしたイケメン俳優や男性アイドルの事はもう忘れちゃったけど、カズとのこの一週間の出来事はどんなに時間が経ってもきっと時々思い出すと思う。本当は来月の私の二十歳の誕生日もアリスちゃんと一緒に祝って欲しかったんだけど・・・とにかくカズなら絶対答えを見つけられると思うから頑張ってね!短い時間だったけどホントにホントにありがとう!すっごく楽しかった!!それじゃあ元気でね!!!
P.S. 今電車に乗りました。まだ読んでないみたいだからきっとカズは起きてないね。このローカル線も嫌いじゃないなぁ・・てか好き。でもきっともう乗る事はないだろうね・・・アキちゃんとエルビスにもよろしく伝えて下さい。あっ、そう言えば実はアキちゃんも結界見えてるよ!どうしてなのか訊いてみたら?
最後に、ブログのタイトルの<小みそか>についてだけど・・・
・・ブログはここで終わっていた。多分、ページのアクセス反応を見て、俺が読み始めた事に気づいたのだろう、文章はそれ以上書き足されず、俺が読み終えてページをリロードするとブログは削除されていた。きっと今ごろ彼女は、ローカル線を降りて新幹線に乗り換えたはずだ。帰りも豪華なグランクラスを使っているだろうか?
俺自身は沢口明菜をどう思っていたのか・・・好きじゃないと言えば嘘になるが、それはいわゆる恋愛感情とは程遠いものだ。感覚としては年齢と同じぐらい離れている。俺は彼女に恋をしていたのではなく、多分憧れていたのだと思う。いや、過去形ではなく今も憧れている。その豹のような滑らかで強い肉体と美貌だけではなく、ブログの文章からも感じる、その知性と意志の強さに。
自分が選択した結果を他人のせいにしない事の重要性、どう見られたいかではなく、自分がどうありたいかが大切なんだと、それに気づいた19歳の少女。彼女は沢山のヒントを俺にくれた、それこそ命をかけて。そしてこんな俺の事を(答えを見つけられる人間だと)信用してくれている、それに報いねばならない。
俺は窓に向かって大きく伸びをしながら「まずは、この灰色の空についてノダさんに訊いてみるか」と、独り言ちた。




