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XNUMX  作者: 一太
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(108)ルールはフルーツバスケットみたいだけど

      和のダイアリー  19 く12/31 小みそか>


これをカズが読んでいる時、私はきっともう新幹線に乗っています。

だから最初に謝っておくね。ごめんなさい。とっても、とーってもカワイイ女の子が突然そばからいなくなっちゃってすっごく寂しいでしょ?ウザったかったかもだけど、もう追っかけても遅いんだからね!w

 

今カズは怒ってお風呂に行っちゃったから、丁度いいタイミングだなと思って私はこれを書いてます。ブログだけど色んな人に見せる為じゃなくて、これはアナタ宛ての手紙ってこと。ここに丁度いい紙もペンもなかったから、ネット上に書き込むしかなかったの。メンバー限定記事にして、パスワードもそこのテーブルに置いておいたやつだからカズしか読めないんだよ。誰かがアクセスしたらすぐ分かるから、カズが読んだと思ったらこの記事は消すね。文章をコピーとかして保存しないでよ!ww


カズの言ったとおり、私たちは短期間ですっごく仲良しになれたよね?だから正直言うと私も今は少し寂しい。勘違いかもだけど、私達ほんの一瞬の間だけ両想いだったのかなぁ・・なんて。・・ううん、これはやっぱりただの勘違いだね!でも勘違いこそが恋っていう説もあるよね?爆

そういえばテッちゃんが前に、世の中の全ては勘違いで出来てるって言ってた。今ならその意味もなんとなく分かるよ。


私はね、子供の頃セーラちゃんの舞台を観て憧れて、チェンジの能力を使えば自分もそうなれるかもって勘違いしたの。だってそれまであんなに素敵な人を見た事なかったから!!

それで芸能界には上手く入れたんだけど、やっぱりセーラちゃんにはなれなかったな。そりゃあ会社とか他の人からみれば私は売れっ子で、セーラちゃんよりかなり成功してるって思われてるだろうけど、別に売れたいとか有名になりたかったんじゃなくて、私はただセーラちゃんみたいな素敵な女性になりたかっただけなの。そこを根本的に勘違いしてたみたい。・・人って自分が勘違いしてるって気づいた時には大体もう手遅れなんだよね・・・私はすごく大きな過ちを沢山犯してしまいました。

その一つは、あれだけ大好きでそのままでも超超超素敵だったセーラちゃんを、チェンジさせてしまった事。ー


 ・・・俺はそこでブログを読む手が止まった。セーラをチェンジさせただって!?そんな話聞いていないぞ・・なぜそんな事を・・・。

 確かにマツシタの葬儀で再会したセーラは驚くほど美しくなっていた。それはけして見た目の事だけじゃなく、あの空気の読めない少女だったメンソレが、慎ましさと気品を兼ね備えた大人の女性になっていて、その変貌は成長の範疇をはるかに超えていたし、芸能の仕事をしているからという理由だけでは到底説明できるものではなかった。・・・しかし、もしそれが本当だったとして、誰かがその人の本質そのものを勝手に変えてしまう事など許されるのだろうか?

 俺は以前から沢口明菜の力に強い違和感を感じていた。百歩譲って自分の力で自分自身を変えるのはいいだろう。それは特殊なやり方ではあるが、ある意味努力の範疇かも知れない。けれど本人が望んでいないのに他人が勝手にその人の人生を変えてしまうというのは、それが例え良い変化だったとしても正しい事なのだろうか?例えるならそれは、強烈な虐待や事件やそれに近い体験を経験して、人格が変わらざるを得なかったような状況と同じ事ではないのだろうか?実際、彼女の母親や昔の同級生などはその変化に耐えられなかったせいで悲しい道を辿っている。「アナタの為を思ってやった」などという言葉の多くは一方的なエゴから発せられているものだ。・・・だが、セーラがマツシタと同じように自らチェンジを頼んだという可能性もあるのか・・・。

 問いただしたい相手は誰もが不在で疑問を一人で解決する術はなく、俺は仕方なく黙って続きを読むことにした。・・すると、すぐ後に一つの答えが書かれていた。


ー セーラちゃんを勝手にチェンジさせてしまった事は今もすごく後悔してる。私が一方的にイタいファンで、あんなに素敵な女優さんなんだからもっと売れてほしい、もっと人気者になってほしいっていう思いからやってしまって事だから。私が事務所に入ってすぐの頃、セーラちゃんはもう引退しようとしてた。それを知って本当に悲しくて・・・だって一緒にドラマや舞台に出るのが夢だったんだもん・・・それで偶然、セーラちゃんと事務所の廊下で会った時に新人として挨拶して握手させて貰ったんだけど、その時に思わずチェンジさせちゃったの。・・言ったっけ?私はお互いをしっかり認識し合って触らないとチェンジ出来ないからさ。(安心して、カズの事はチェンジさせてないよ。)


その後のセーラちゃんはご存じのとおり、すっごくキレイになってどこか垢抜けて、急にCMも決まって(ほらあの生理用品のCM、見た事あるでしょ?)ブレイクしそうだったから、もしかしたら事務所辞めないって言ってくれるかなーって思ってたんだけど、そうはいかなかった。結局一緒にお仕事する機会もなかったよ・・。


セーラちゃんの事で私がはっきり気づいたのはね(その人の幸せは、その人しか分からない)って事。どんなに周りがその人の事を思ってやった事だとしても実際には、間違ってるかも知れないんだよね。例えば、ホームレスのおじいさんに百万円あげたとしてもさ、その人が欲しいのは今すぐ飲める一杯の水の方かも知れないじゃん?足が悪くて買いに行けないとか、なんか理由があってさ。こんな札束、今のオレにはどーしよーもねーよって言われるかも知れない。やっぱり自分だけの気持ちで勝手に動くんじゃなくて、相手の言葉にきちんと耳を傾けないとダメなんだよね。

だからね、私が今まで良かれと思ってチェンジさせた人達の多くは幸せになってないと思うの。パパも出世すればみんながハッピーになると思ってチェンジさせたんだけど、結局忙しくなって海外に仕事に行って事故に遭った。ママも、同級生だったコウくんもテッちゃんも・・・みんなこの世界からいなくなっちゃった・・その罪は本当に重いよね・・・だから私は私のやり方で、これからその罪を償っていこうと思ってます。・・・あ、カズがお風呂から帰ってきた!はや!!カラスかよっww 続きは朝に書こうっと。ー


 ・・・ここで大きく改行されている。・・そうか・・やっぱり沢口明菜はバカじゃないな。全てを分かった上で俺と旅をしていたんだ。これは彼女の贖罪の旅でもあったんだ。・・俺は携帯の画面をそのまま下にスクロールした。


ー 昨晩からの続き。カズ、横でめっちゃ爆睡。ウケるw

テッちゃんがあの薬の副作用で、切れたら気絶するように眠くなるって言ってたもんね。こんな事して申し訳ないと思ってるよ、私がもう少し頭が良ければ違った方法も取れたんだろうけど・・・でももう全ては済んだことだね。しかも上手くいったんだから良しとしよう、結果オーライだ!

急いで続きを書くね。あと1,2時間ぐらいで夜明けだし、アナタが起きる前にここを出たいから。


私の償い。それは一生、沢口明菜として生きる事。

牧村和子はもうこの世界にいません。私は沢口明菜として、これから死ぬまで大嫌いな芸能界をしっかりと大きく手を振りながら歩いて行こうと思ってます。

今私は超売れっ子で、映画もドラマも雑誌も何年も先までスケジュールが埋まってるの。自分でも笑っちゃうけど(国民の妹)とか(千年に一人のアイドル)とか言われててさw

すごくありがたいんだけど、でもそれは一時のもの。例えば私が何かの不祥事で突然いなくなっても、またすぐに同じような子が出て来て代わりを務めるよ。そして私の事なんてすぐに忘れ去られる。そういう世界。ルールはフルーツバスケットみたいだけど、でももう私はそこでしか生きる事が出来ません。

なぜかと言うと、昨夜の大晦日にアナタに抱かれて私はチェンジの能力を完全に失ったからです。

だからもう、違う人間には二度となれないの。ー


「なんだって!!」と俺は、部屋の中で一人大声を上げた。焦って口を押えたが、そもそも他の客なんていないのだから気にする必要はなかった。

 ・・・チェンジがもう出来ない?俺と寝て力を失った・・?どうして?・・なぜ分かっててそうしたんだ?・・・俺は急いで続きを読んだ。


ー お母さんが死んでから、私はこの忌々しい呪われた能力をどうしても消したかった。もしかしたらその為にアナタを利用したのかも知れない。ちゃんと相談もせず・・昨日の事、カズは嫌だったかも知れないよね・・だとしたらごめんなさい。でもね、カズの手助けをしたかったのも本当なんだよ。

アナタは地元に戻って来てから何をするのか目的を完全に見失っていました。多分、そんな事ないって言うだろうけど、そういう力がこの町全体に及んでいるの。カズや私なんかがどうやっても抵抗できない、もの凄い力が。

だからそれ自体をすっきり取り除く事は出来ないけど、私とカズが二人で新しいエネルギーを作り出せば、アナタだけでもその力の外側に抜け出す事が出来るって分かってた。(どうしてそれを私が知ったかは文章にするには難しいし長すぎるの)とにかくそれは、この土地にいる人たちには絶対に出来ないこと。だって、この町の人の為にかけられている呪術みたいなものだから。

その為に私は自分の力を失う事を捧げた。こういう時にはどうしても生贄が必要だからね・・・でもそれは元々私が望んだ事だったから丁度良かったんだ。もし上手くいっていれば、カズは自分の目的をしっかりと思い出しているだろうし、忘れていたこと自体を忘れてると思う。そしてアナタは本当のアナタ、カワハラ・カズヒコに戻っている。

目に見える証拠があるよ。今すぐ窓を開けて空を見てみて。ー


 俺はブログに書いてある指示通りに立ち上がって窓を開けた。

 雲もなく見慣れた風景の上に青空が広がっている。天気は快晴、いつものように田舎の空は高い・・・が、「なんだよ・・これ・・・」

 その手前に薄雲った灰色の分厚い膜のような物が、この世界を覆いつくしている。こんなの見た事ないぞ・・・俺は答えを求めて携帯を見た。その先に沢口明菜はこう書いていた。


ー グレーの結界が見えてるなら、カズがその力の外に抜けた証だよ

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