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XNUMX  作者: 一太
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xnumx(91)~(92)

(91)欲求に忠実なところがすごく人間っぽい感じがする


「ジョニー・蒼のことはあまり知らないが、沢口明菜については少し知っているよ」と俺は言った。

「へぇー意外。カズさんはアイドルとかタレントには興味ないのかと思った。」とアリスは言った。「童顔で巨乳がタイプなんだ?」

「そういうわけじゃない。ただ・・」今その沢口明菜と一緒に帰省しているんだ、と言いかけて俺は口ごもった。その事をアリスに告げるのは、はたして得策と言えるのだろうか?ここに至るまでの経緯はあまりにも複雑だし、それらを省いて話す事で何か新しい混乱の煙が立ち上がりはしないだろうか?そもそもアリスが友人だと認めた沢口明菜もこっちに来てしまっているのでは、アリスに緊急事態が起きても対処する事は出来ない。彼は未成年で、それだけでも最低限身の安全は保障されるべきなのに、俺も含めてなぜアリスの味方は今、誰も傍にいてやれてないのだろう?

「ただ、何?」とアリスは言葉の続きを催促した。

「あ、いや・・えっと、沢口明菜とはちょっと前に仕事で顔を合わせた事があってね、だから知っているんだよ」

「ふーん、そうなんだ・・」

「最近はいつ沢口明菜と連絡を取ったんだ?」

「しばらく取ってないよ。だって前の携帯は無くなっちゃったし・・・番号も分からないから、もう連絡は取れないかもね」

 ・・そうか、ドラゴンの事務所で壊されたと言っていたな。

「えーと、実は俺も・・その・・仕事で沢口明菜さんを取材したんだけど、うーんと・・その時、彼女の連絡先を教えて貰ったんだよ」

「えーーっ!そうなの?!明菜ちゃん、ああ見えて気難しいから大人の人は全然信用しないんだよ、やっぱりカズさんはすごいね!ボクが言うのも変だけど、明菜ちゃん普段アドレス交換なんて絶対しない人だよ」

「そうなのか・・・」一緒に新幹線に乗って来て、これから同じ部屋にしばらく泊ると言ったらアリスは卒倒するだろうか?

「とにかく俺が連絡先を知ってるから番号とアドレスを、キミが今使ってる俺が渡した携帯電話に送っておくよ、後で連絡してみたらいい。」

「うん、わかった。あ、でも知らない番号からだと明菜ちゃん出てくれないかもな・・警戒心も強い人だから」

「確かにそうかも知れないが、多分大丈夫だと思うよ」俺が先に沢口明菜に言っておけばいい。

「そう?・・分かった。番号貰ったら連絡してみるね」

「ああ」今は距離が離れているが、きっと沢口明菜ならこれからもアリスを助けてくれるだろう。

「そう言えば、ボクその時、ジョニー・蒼とも連絡先を交換したんだ。ジョニーさんのマネージャーづてに、また撮影で呼ぶかも知れないからって言われて。ほら、ボク、純粋なモデルじゃないから事務所とかに入ってるわけじゃないしさ、使ってた携帯の番号を教えたんだよ。そしたら一回本人から直接電話がかかってきて食事をしたんだ」

「そうなのか。どんな人だった?世界的に活躍しているシンガーっていうのは」

「うーーん・・・」とアリスは長い間を取った。

「ゲイなのかも知れないし、ロリコンなのかも知れない。」

「えっ?」

「あ、うそうそ、何か変な事をされたとかそういうのはないよ、ボクの例の仕事みたいな事は何もしてないし、(パパ)になったわけでもない。ただ二人でご飯を食べただけ。すっごく高そうなレストランの個室で。」

「そうか・・」

「さっきのはジョーダンだけどさ。でも、普通に考えて大人の男性がボクを誘うのって、それがただの食事だとしても変でしょ?確かにボクはアルビノだし、初対面の人にはほとんど女の子に間違われるけど、現実的には14歳の男子だよ?興味があるのはロリコンかゲイに決まってるじゃない?」

 そう言われると部屋まで貸して、匿っている俺は相当ヤバイやつじゃないだろうか・・・。

「カズさんみたいに困った時に助けてくれるような信用できる大人じゃなきゃ、ボクだってあまり係わりたくないよ。」

「そ、そうか・・よかった」

「でもね、なんて言うかジョニー・蒼はまた違う意味で特別だった」

「ん?どういう意味だい?」

「すごく優しくてジェントルで物静かな人なんだけど、目の前に座ってテーブルを囲んでいると変な気分になるんだ」

「というと?」

「うまく説明できないんだけど、なんて言うか吸い込まれそうになるっていうか・・・」

「魅力的って意味かな?」

「うーん、確かにカッコ良くて話も面白くて女性にはそう見えるんだろうけど、それだけじゃなくて・・どう言えばいいんだろう・・真っ黒い球体が大きな口を開けて全てを吸いこもうとしているような・・・」

「ブラックホール」と俺は言った。

「そう!それ、ブラックホール!!ジョニー・蒼の後ろに大きなブラックホールみたいな物がずっと見えてたんだ・・・あっ、本当に見えているわけじゃないよ、ボクは霊能者とかそういうのが見える人じゃないからね。でも表面的には魅力的な人ではあるんだけど、彼の後ろにあるそのブラックホールみたいな計り知れない何かが、ボクだけじゃなくそこにある全てを空間ごと飲み込もうとしているような気がして落ち着かなかったんだよ。ご飯は多分、美味しい物が沢山出てきたんだけど、ボクはずっと怯えていて味が分からなかった。とにかく凄く怖かったんだ」

「そうか・・・」

「ボクはこの歳にしては人生経験が豊富な方だし、怖い目にも沢山遭ってきた。施設の院長先生とか、ヤクザの人とか、顧客だったブルジョワの変態夫婦とかもすごく変で怖い人達だったけど、そういう人たちとはまた違う恐さだったなぁ」

「どう違うんだろう?」

「何て言うか・・今言った人たちはとても変わってるんだけど、人間的な怖さというか・・欲求に忠実なところがすごく人間っぽい感じがするんだよね。金欲的なのも暴力的なのも性欲的なのも。その人たちは、今思えば誰もが持ってるそういう基本的な欲求が強いだけのような気がする。度が過ぎるけど、それなら同じ人間としてまだ理解できるもんね。でもジョニー・蒼からはそういう感じはしなかった。何かそれ以外の力に突き動かされているような・・・そもそもなんでボクを呼び出したのか、ボクから何を欲しがっているのかがさっぱり分からなかったんだ。彼自身もきっと分かってないと思う。・・・ごめん、上手く言えなくて」

「いやいや、こっちこそすまない。またジャーナリストの悪い所が出てしまったよ、こんなにその件を深堀するつもりはなかったんだ」

「ううん、でも久しぶりにその事を思い出して、ボクもその独特な空気感を思い出したよ。貴重な体験だったなぁ・・大スターってみんなあんな感じなのかな・・明菜ちゃんは全然違ったけど。」

 確かに沢口明菜は全く違う。XNUMXビルで最初に会った時は仕事モードで近寄りがたい女優のオーラがあったが、今の彼女は例えるなら下町育ちのお祭り好きの女の子という感じだ。小さな経験でも大きく変貌を遂げる年齢ではあるが、自分の事を誰も知らない田舎に来て、本当の自分を取り戻しているのかも知れない。それは明確な変化ではあるが、強引に「チェンジ」するのとはわけが違う。

「あ、思い出したと言えばボク、ジョニー・蒼の電話番号ならまだ覚えてるよ。すっごく単純な番号だったから」

「そうなのか?」

「0X0-369-369」

「おいおい、あんまり人の電話番号を簡単に言うもんじゃないよ」

「あはは、そうだね。世界的に有名な歌手だもんね。でも単純でしょ?覚えるつもりがなくても覚えちゃう番号だよ。もちろんボクからかける事はないけど」

 確かにジョニー・蒼はアリスが頼れるような大人とは言えないかも知れない。

 その時、玄関の引き戸が開いて沢口明菜が「たっだいまー!」と大きな声を上げて戻って来た。俺はなぜか焦ってしまい「わるい、ちょっと人が来てしまったからまた連絡するよ、沢口明菜のアドレスと番号はすぐに送るから、それじゃまた」と言ってアリスとの電話を切ってしまった。

「見て見て」

 振り返ると部屋に入って来た沢口明菜はウリ坊を抱えていた。

「エルビス持てた」



(92)サンドウィッチの木になっていた採れたての玉子サンド


 俺が返事をせずに呆れていると

「ウリ坊おばさんならぬ、ウリ坊アイドル爆誕なんだけど!」と言って沢口明菜は高笑いした。

 すると廊下の方から「エルビス~、エルビス~」とウリ坊を呼ぶ、ノダさんの声が聞こえた。

「やばっ!」そう言って沢口明菜は慌てて戸を開いてウリ坊を廊下に逃がした。

「また勝手に触ると怒られるぞ」と俺が言うと、彼女は「いや、あっちから懐いてきたから抱き上げただけだし」と言って少し機嫌を損ねた。笑って貰えると思ったのかも知れない。

「はい。」

 沢口明菜は手に持ったビニール袋を俺に渡してきた。

「ん?」

「お散歩してたらリアカーみたいのでサンドイッチ売ってたから」

「俺に?」

「うん、なんかお腹減ってそうだったし」

「ああ、それはありがとう」

「別に、アタシ現金持ってないから払ってないし。アキちゃんに宿泊代に足しといて貰ったから。」

「そうか。わかった」

 俺は袋からラップに包んであるだけのハムサンドと玉子サンドを取り出して、ハムサンドの方から食べ始めた。沢口明菜はドカっと音を立てるようにテーブルの向かい側に座った。

 見た目はただの食パンにハムとレタスとチーズが挟まっただけの、どこにでもあるサンドウィッチだったが一口食べて俺は思わず「うーん」と唸ってしまった。・・なぜだ?何かが違う。例えるなら走った後に冷たい井戸水を飲んだような心地よさだ。

「うまい?」と沢口明菜が訊いた。

「ああ、驚くほどね。朝からまともな物を食べてなかったからかな。いや・・素材がすごく自然な感じがするからかも知れない。添加物を感じないんだ、これは美味いよ」

「そう言えば無農薬とか全部自家製だとか、売ってたおっちゃんが言ってたかも」

「へー、俺の知ってる人かも知れないな、この辺は農家が多いからね」そう言いながら俺は一瞬でハムサンドを平らげてしまった。

「あっ、ずるーい!アタシも食べたかったのにー」

「ああ、すまない。じゃあこっちはキミのだ」

 俺は玉子サンドを沢口明菜に渡そうとした。

「ううん、どっちもカズのだよ。アタシこれでもタレントなんで間食はしません。体型には気を付けてますんで。」

「そうか・・じゃあ遠慮なく」

 ラップを剥がして今度は玉子サンドに食いつくと、こちらもシンプル極まりなかったが、逆に何かを足す必要がないほどに完成されていた。これはやはり素材の美味さだ。何か体に入って来るエネルギーの質が違う・・何かこれと似た物を少し前に食べた気がする・・・誰かが作ったドーナツだったような・・?そんな満足げに食事をする俺の姿を沢口明菜は黙って見守っていた。

「そう見続けられると食べづらいな。落ち着かないよ」

「いいじゃん。どう?ヤバイ?」

「ああ、良い意味で。」

「やっぱ、あーん」

 口を開けている沢口明菜の方にパンを持って行くと、映画で見た人食いサメのように素早く角に嚙みついて「やばっ!マジで美味いんだけど!見た目とギャップあり過ぎじゃない?」と言った。

「確かにこのシンプルさで、ここまで味わいがあるとは思わないよな」

「うん、そう!採れたてって感じ」

「あはは、そうか。まさにこれはサンドウィッチの木になっていた、採れたての玉子サンドだ」

「あー、バカにしてるー!」

「いや、してないよ。俺もそう感じたんだ。さっきのハムサンドも漁師が釣り上げたばかりの、まだ元気に動いているハムサンドだった」

「ピチピチだった?」

「ああ」

「アタシぐらい?」

「同級生じゃないかな?」

「あはははっ」

 いい加減な事を永遠に話していられるのが友達の定義かも知れない。

「ところでノダさんとの散歩はどうだった?」

「楽しかったよ。田んぼと山ばっかで景色はずっと変わらなかったけどね。」

「そうだろうな」

「でも意外と喋ってくれた。家族の事とか、この辺の事とか。アキちゃんのお母さんは隣町の出身なんだって。アキちゃんはK町で生まれたらしいんだけど、お母さんはW町で何十年か前に起きた山火事の唯一の生き残りらしいよ。カズ知ってた?」

「山火事?」

「そう。なんか神社が燃えてその火が村に移っていってどうのとか・・けっこう大きな火事だったらしいけど」

 そんな大きな出来事なら地元民は全員知っているはずだ。けれど親たちからも数十年前にW町で大規模な山火事があったなんて聞いたことがない。

「ところでカズさぁ?」

「ん?」

「これからどうするの?」

「そうだな・・・まずはこっちに来てるはずのセーラを探すよ」

「セーラちゃん、やっぱり戻って来てるの?」

「わからない。昨日セーラの母親に会って訊いてみたんだけど、実家にはいないと言われた。でも俺はもう戻ってると思う」

「そうなんだ・・セーラちゃんのお母さんってどんな人?」

「スナックを経営しているフィリピン人だよ。セーラとは違って押しが強い。でも困ってる人を見ると助けてしまうようなところがあって、そこはセーラにも似てるかな。顔は目以外はあまり似ていない似てるけど。」

「へぇー。アタシは入れ違いぐらいで事務所入ったからあんまり知らないんだけど、確かにセーラちゃんは後輩思いで面倒見がいいって言われてたよ。」

「そうだろうね」

「んで、セーラちゃん見つけたらどうすんの?」

「キミに詳しく言ってなかったけど、セーラは今殺人容疑で警察に追われているんだ。」

「えっ!うっそ何それ!?ガチ?」

 俺は頷いて残りのサンドウィッチを咀嚼してからお茶を湯呑に注いで半分ほど飲み、喋る為の準備を整えた。

「新幹線で俺たちの後ろの席にいた刑事たちはその件でセーラを追っているんだ」

「そうなの!?カズじゃなかったんだ・・ってかセーラちゃん、人殺したの?」

「殺してない。でもそう思われている」

「そっか、でもやってないんだよね?」

「やってない。絶対に。」

「ちなみに誰を殺したって事になってるの?」

「GSW出版の社長だったモウリ・ケンヂという男だ。」

「GSW出版?・・雑誌とか出してる?」

「ああ、芸能人や政界のスキャンダル、ヤクザや裏社会なんかの事を面白おかしく書いている雑誌を出版していた小さな会社だよ」

「その雑誌ってコンビニとかで500円ぐらいで売ってるやつ?」

「そうそう」

「あ、なんか見た事あるかも。アタシも一回、アイドル達の乱交パーティーとか言って、伏せ名で記事書かれた事あったわ」

「そういうインチキなでっちあげの記事で、バカな購買者を煽ってるくだらない雑誌さ」

「うん、まぁでもアタシの記事はホントなんだけどね」

「えっ?」

「まぁいいんじゃんそれは。そんで、なんでその人をセーラちゃんが殺した事になってるの?」

 俺は一旦落ち着こうと、残りのお茶を流し込んだ。

「少し前にモウリが自社ビルの中で突然死した。死因ははっきりしないけど警察も当初は病死と考えていた。モウリは太っていて六十代で常に眼帯をしていて、どう見ても健康そうには見えなかったしね。でも監視カメラにモウリが死んだ直前にGSW出版から出てきた不審な人物が映っていた。明らかに変装した人間で、丁度モウリの死亡推定時刻とも一致する。それがセーラだった。」

「ガチなの!?」

「ああ」

「えー、でもセーラちゃんがなんでその人を殺さなきゃいけないの?」

「少し前にその雑誌はセーラが昔AVに出ていた事を記事にしていた。警察はその事を恨んで、という動機付けをしている」

「え・・セーラちゃんってAV出てたの?・・でもうちの事務所、大手だからそういうチェックは厳しいよ。前職とかも調べてから契約するし・・本当に本人なのかな?」

「いわゆる裏ビデオってやつで、十数年も前の素人の時に出た、世の中の誰も知らないような作品だ。持ってる人は少ないだろうし、女優の池上セーラと同一人物だと思う人は限りなくゼロに近いと思う。だけどモウリはそれを見つけて記事にした。まるで真っ暗闇から小さな糸の先端を掴んで大きな何かを引きずり出すように。」

「そうなんだ・・・」

「俺はあまり人を簡単には嫌いにならないんだけど、モウリという男は最初から何か独特の湿度や粘着性を感じて好きになれなかったな」

「あ、カズも会った事がある人なんだ」

「ああ。あぶなくその雑誌で記事を書くところだったよ。でもモウリという人間は恐ろしいほど仕事ができる。どんな闇からも人の好奇心をくすぐるような物を見つけて来る。その才能は認めなければいけない。扱うジャンルは違うけど同業者としてね」

「そっか・・・でセーラちゃんを見つけたらどうするの?」

「まず彼女が警察に追われている事を知っているのか、自分が容疑者になっている事を知っているのかを確認したい。多分知っているだろうけどね。だとしたらなぜ逃げているのか・・やっていないとは思っているけど真意を確かめたい。そして何か理由があるなら手助けをするつもりだ。例えば状況が落ち着くまでどこかで匿ったり・・」

「ふーん・・」と沢口明菜は何か言いたそうな返事をした。

「どうして?」

「アタシはカズとセーラちゃんとテッちゃんが同級生って事ぐらいしか知らないけどさ、その事件前までは頻繁に連絡を取っていたんでしょう?でもセーラちゃんが今カズに連絡してこないって事は何か理由があるんじゃないの?」

「と言うと?」

「例えば巻き込みたくないとか、迷惑かけたくないとか・・アタシもセーラちゃんが人を殺すような人ではないと思うけど、助けるとか匿うとかはカズの一方的な考えって感じがする」

「なるほど・・」確かにセーラがそれを望んでいるかは別の話だ。手助けは俺のエゴなのか・・。

「でもセーラちゃんに会って真意を確かめたいっていうのはいいと思う。それは心配している友達としてはまっとうな権利だもんね。アタシもセーラ先輩に憧れてこの仕事始めたんだし、どっちにしても理由を知りたいよ」

「だよな」

「じゃあとりあえず心当たりがありそうなとこ探しに行こうよ」

「うん、そうしよう」

「ほかに地元でやりたい事ある?」

「ほか・・?他ってなんだ?」

 俺は少し考えてみたが何も思いつかなかった。そもそも沢口明菜から出たその質問の主旨がよく分からなかった。俺はセーラ探しの為に地元に帰って来たのではないだろうか・・・?

「特にないならまぁいいよ。今はとにかく出かけよ!」そう言って沢口明菜はすばやく立ち上がった。

「散歩から戻って来たばかりだけどいいのか?」と俺が訊くと「若者の体力なめんなよ」と腕を十字にクロスした。

「わかった。じゃあ歩きながら話そう。俺達にはセーラの他に共通の友人がいる事が分かったんだ」

「マジ!?何それ!誰だろうー」と言いながら沢口明菜はさっさと廊下に出て行った・・・と思ったら顔だけ部屋に戻して「美味しかったでしょ?国民的アイドルが齧ったサンドウィッチ」と言って、古いアメリカのアニメに出てくる意地悪な犬のようにシッシッシッと笑った。

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