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14理不尽

「おーい、席つけー」

 授業をきっちり6時限済ませ、帰りのSHR前の教室。

 もう両手で数える程度しかできない今の2年B組におけるHRのため、教室に入りながら暁深はクラス内に声を掛けるも、効果が薄い。理由は単純で、全員が返却された答案用紙を見ているから。6時限目に返却されたばかりの英語が、トレンドであるようだ。

「お前らー。今更テストと睨めっこしても点数はかわらねーぞー。間違えた問題やり直すなら、後でやれー」

「でもせんせー。納得いかないんですよー」

 ふと暁深の呼び掛けに声が挙がる。高校にしては珍しい高校1年の3学期に中途入学してきたこと生徒で、暁深が顧問を務める整体部の部員の部員の一人である。名前は桐生千里。千里と書いて、“ちさと”でも“せんり”でもなく“ちり”と読ませる。どちらの字も音読だ。

「どうしたー、せんさとー」

 断じて両方訓読ではない。

「だから、ちりですよ!何でわざわざ倍の文字数使うんですか!」

「久野木高校生としての訓練が足らないからだな」

「毎度言いますけど、高校生としての訓練って何なんですか!」

「それを探すのも訓練だと、毎回言っているだろうが」

「理不尽すぎます!この問答!」

「個人的には面白いから、恒例行事にしていきたいな」

 というよりもはや恒例行事になっている。2年B組の生徒たちは、とりあえずこの問答が終幕するまでに静かになればそれで良しと考えているくらいだ。知らぬは本人たちばかりである。

「理不尽というなら、このテストもそうです!何で×なんですか、この答え!」

 ビシリと突きつけられた答案用紙に目を移す。82点と中々に上出来な点数だ。一体何が不服だというのだろうか。

「此処です!」

 此方につきつけたまま、千里が指さしたのは和訳問題。私の妹は〜で始まったその文章は、普通に×がつけられ、近くにはコメントで「兄より優れた妹なんていない」の一言。暁深の字で書いてある。

「分からないじゃないですか!居ますよ!」(((え?其処なの?)))

 話し声が聞こえてきたクラスの生徒たちが同時に思う。てっきり、訳が合ってるのに、×であることに文句を言うのかと思いきや、まさかの展開。

 続きを聞き逃すまいと、会話の振りを続けながら、聞き耳をたてていると、あー、と暁深が口を開いた。

「俺も訳分からんから気にするな」

(((まさかの丸投げ!?)))

「でも、これ書いたの暁深先生ですよね!?」

(((分かるの!?)))

「まあ、そうだけどさ」

(((正解だった!)))

「とりあえず、俺に言われてもどうしようもねーよ。リア先生に言ってくれ」

(((ごもっとも!)))

「言ったら、暁深先生に言えって言われたんですよ!」

「マジでか。どうしろってんだよ」

「さあ?とりあえず、言われたとおり、暁深先生に言ったんで、何とかして下さい」

「あー、んじゃ、後でもっかいリア先生の所に持ってけ。俺はリア先生に任せるって伝えてくれ。それが嫌なら諦めろ。3点くらいなら変わらんだろ、せんさとの点数なら」

(((それでいいのか教師!)))

 思うも口にせず。2人のやり取りが終わるのを悟ってクラスメイトが静かになって席に着く。唯一席に着いていないのは千里のみ。

 振り返り、その事に気がついた千里が渋い顔をする。さっきまで話してただろお前らと思いながら、たった一言口にする。

「これが訓練された久野木高校生?」

「知らなかったのか?」

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