13通勤前
秘密結社EFの本部は、彼らが教師を行っている久野木高校敷地内のちょうど真下。地下に、7層に渡って存在している。 その為、通勤に使われるのはもっぱら地上直通のエレベーターが使われる。最短で多めに見積もっても片道30秒。素晴らしい立地条件である。
だがその影響で、早起きが苦手な者が多い。低血圧気味のガーネットもその1人だ。
普段仕事に行く分なら余り問題無いのだが、朝一番で会議などがあればその限りではなく、今日の朝も、ガーネット同様に朝一番の会議のため、何時もの指令室で朝食を終え、珈琲を飲んでいたブラックライズの耳にドタバタと急ぎ足の足音が聞こえてきた。
「ね、寝過ごしたー!」
おざなりに着たスーツに寝癖の目立つ頭と、久野木高校が誇るクールビューティこと天宮瑠璃事務員のファンには見せられない姿で、ガーネットが指令室へと駆け込んできた。
そんなガーネットへブラックライズが片手を挙げて挨拶をすると、ヘアブラシがその上げた手へと飛んでくる。
危なげなくそれをキャッチして、クルクルと手の中で回しながら、ブラックライズはガーネットの次の言葉を待つ。
「髪、宜しく」
「了解。いいから飯を食べとけ。作って置いたから」
「ありがと」
ガーネットが自分の席に座ったのを確認してから、ブラックライズはその背後へ回り、ヘアブラシをガーネットの長い黒髪へ当てる。シャンプーの香りは当然として、仄かな硝煙の香りがブラックライズの鼻腔を擽る。どうやら昨晩は射撃訓練を行っていたらしい。シャワーで落としきれないのは、すっかり染み着いてしまっているからだろうか。
「言っても無駄かもしれないけど、少し硝煙の香りがする」
「どうしようもないわね。香水で誤魔化せれば誤魔化すけど。いつもより気になるくらい?」
「少し。でも気がつかないと思う。嗅ぎなれていないなら」
「なら大丈夫ね。こんなに近くまで来るのアンタくらいだし。とりあえず、早く終わらせて。アンタも会議なんでしょ?」
「そーなんだよ。何でわざわざ春休み間近のこの時期に職員会議があるんだろうな。おまけに2年の学年団のみってさ」
「4月から最高学年だからでしょ。それに受験生。春休み中の凄し方は大事じゃない
「大事なのは俺じゃなくて生徒の方じゃないか。少なくとも朝っぱらから早起きさせてまで話し合わなきゃいけないような、緊急じみた用件ではねぇと思う」
ガーネットほどではないと言え、どちらかと言えば朝が苦手なブラックライズが、そうぼやく。口がいつもより悪いのは眠いからだと知っているガーネットは、「確かにね」とだけ短く同意。正直な話、自分も愚痴を言いたい気分なのだが、ブラックライズの場合、直接的に関わっていないにも関わらず、事務員にもあまり好かれていない教頭が、今回の会議の原因と知っているだけに尚更だ。自分の話は今晩にも聴いて貰おうと考えて、ガーネットは髪を梳くブラックライズの手を止めた。
寝癖はすっかり直っている。いつもは結んだりもするけど、今回はパス。通勤に片道30秒とはいえ、流石にぎりぎりに行くのは不味いから、身支度に使える時間は残り少ない。
「ブラックライズ。私、後は化粧とかだけだから、先に行って良いわよ」
「ん。分かった。じゃあ、先に行くな」
ヘアブラシをガーネットへ返して、ブラックライズは自分の椅子の脇に置かれていた鞄を手に取った。
「それじゃあ、行ってきます天宮さん。今日も1日頑張りましょう」
「はい。行ってらっしゃい、黒本先生。今日も1日頑張ってください」
お互いの表の名前を呼ぶという裏の世界から表の世界へ。悪の秘密結社から教師へと変わる儀式を終えて、暁深は通勤用のエレベーターへと向かって歩き出した。
Q.朝が強い順は?
A.こんな感じ
スリーナイト≧ドン・ルーク>プロフェッサー>ブラックライズ>ガーネット
以外や以外。スリーナイトが一番強かったりする。遠出などで朝が早いときは、ブラックライズやガーネットを起こすのは彼女の仕事。
今回はスリーナイトには起きる理由が無かったから起きなかった。




