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12読書

遅刻した……

 夕食後。満腹感に満たされ、どこか気怠げな食後のティータイム。時々茶器の当たるやページのめくられる音。茶菓子をかじる音のみが響く静かな時間。

 賑やかなのも嫌いではないが、悪の秘密結社らしくなく、静かな、穏やかな空間の方がどちらかと言えば好みであるブラックライズとガーネットは、この平穏を崩すまいと読書に勤しみ、皆がいれば満足なドン・ルークはニコニコと笑っている。

 プロフェッサーもまた、紅茶ならいざ知らず、今日のように緑茶であれば、静かに味と香りを楽しむことにしているため、

「ねえ、ブラックライズ」

 こうやって空間を壊すのは大概がスリーナイトであり、今日もいつも通り、暇を持て余したスリーナイトが隣へ座るブラックライズへ声をかけた。

「なんだ?」

「ブラックライズっていつも本読んでるよね?面白い?」

「まあ、面白くなければ、読まないけど」

「文字ばっかりだよ?絵がないんだよ?飽きない?」

「……とうの昔にそのレベルは突破したわ」

 流石にハードカバーの分厚いサイズなら途中でだらけてくるかもしれないが、少なくとも、今ブラックライズが読んでいる位の文庫サイズであれば、飽きると言うこともない。

「ほえー。ね、貸して?」

「ほら」

 パッと差し出されたその手の上に、先程まで読んでいた小説を置く。何の変哲も無い推理小説だ。意気揚々と、最初のページから読み始めるスリーナイトを見て、ブラックライズの口元に笑みが浮かぶ。

 これを機に、彼女も本を読むようになってくれれば嬉しいなと、そう考えてから、ブラックライズは考える内容を先程まで読んでいた推理小説へ戻す。

 読み進めたのは、中盤の2人目の被害者が出た辺りまで。ここまでで何となく犯人が分かってきたから、今のうちに情報を整理しようと紙とペンを手に取ると、グイグイとブラックライズの袖が引かれた。

 視線を移せば、机に突っ伏して頭から煙を上げるスリーナイトが、此方へ本を差し出していた。

「いくら何でも、早すぎるだろ。おい」

「ム〜リ〜。頭溶ける〜」

「……ちなみに何ページまで読めた?」

「10ページ〜」

「おお、何と驚き2桁とは」

 ふってわいたプロフェッサーの言葉に、スリーナイトがうつ伏せのまま、プロフェッサーへ向かってピースサイン。俄かに滲み出る『ドヤァ』の気配。パチパチとプロフェッサーの拍手の音が響く。

「いや、おかしいだろ。おかしいよな?あれ?自信なくなってきた」

「大丈夫よ。多分、アンタの方が一般には近いから」

「だよな。ああ、良かった」

 ガーネットの言葉に、ブラックライズは胸をなで下ろし、読書へ戻る。2人目の被害者が出て、数行後には警察と今回の探偵役が事件現場へとやって来る。

 あーだこーだと見解を述べる探偵と警察。その会話文を読みながら、ふと視線を感じて、ブラックライズは横を見た。うつ伏せの姿勢のまま、此方を見上げるスリーナイトの無言の催促に、今日は甘えたい日らしいと察して、読書の続きを諦め本を閉じた。

「トランプでもするか?」

「うん!取ってくる!」

 嬉しそうに走っていく背を見送って、ブラックライズは困ったような笑みを浮かべる。周囲の生暖かい視線には気がつかない振りをして。


Q.小説の好きなジャンルは?

A.

ブラックライズ:推理

ドン・ルーク:恋愛

プロフェッサー:SF

ガーネット:ホラー

スリーナイト:読めない

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