11テスト採点
「……で、何で今なんだよ?」
「何でだろう?」
「ぶつぞ」
「ごめんなさい」
深夜0時も回った丑三つ時。
煌々と輝く蛍光灯に照らされるプロフェッサーの部屋で、ブラックライズとプロフェッサーの2人が向かい合わせに座っていた。お互いに相手は見ず、視線を向ける先は手元の答案用紙。
久野木高校は各学年で、定期試験の順位表を張り出すシステム。その為、答案用紙の返却をしなければいけない日があり、それが明日――というか今日。その筈なのに、プロフェッサーの担当する高2英語の採点の進み具合は6割程である。
「ったく、助け求めんなら、もっと早くに言えよ。何でわざわざ当日に言うんだよ」
「申し訳無くて……」
「あん?今更そんな――「だってゲームに熱中しすぎて、気がついたら時間経ってたんだもん」帰るわ」
「待って待って待って!」
立ち上がろうとするブラックライズの手首を掴んで、プロフェッサーがふるふると首を振る。
「諦めろ。大人しく怒られろ」
「いや!いやなの!教頭先生に怒られるのだけはいや!屈辱的な意味で!」
「気持ちは分かるけどさ」
よく言うところの『イメージの悪い教頭』がそのまま具現化したような人である。何故かブラックライズは目の敵にしているし、ドン・ルークは校長だからつきまとっている。後、説教がウザい。
少し悩んで、仕方がないかとブラックライズは呟いた。プロフェッサーから派生して、自分までも怒られかねない。何もしてないのに。
……いや、プロフェッサーを手伝わない、つまり何もしなければ採点が終わらずに怒られるということは、手伝えば、何かすれば怒られない……あれ?
「訳が分からなくなってきた」
「その発言が良く分からないけど……兎に角Help」
「分かったって。手伝ってやっから。終わらせるぞ」
「Thank you! Black!」
嬉しそうに笑い、一足先に採点に戻るプロフェッサー。ブラックライズも座り直し、置いた赤ペンを手にとって丸を付け始める。問題は選択肢多めの問題だからあまり時間もかからないだろうと、なるべく希望的観測をしながら、淀みなく手を動かしていくこと暫く。
ふとブラックライズの手が止まった。少し首を傾げて、プロフェッサーへと話し掛ける。
「なあ、プロフェッサー」
「何?」
「このマイシスターから始まる比較級の英文って、シスターとブラザーの訳は姉でも妹でも兄でも弟でも何でもいいの?」
「うん、いいよ。主語がsisterでbrotherよりも上手にviolinが弾けますって文になってれば」
「《私の妹は私の兄より上手にバイオリンが弾けます》だったら?」
「兄より優れた妹なんていないってコメントして、×付けといて」
「ごめんちょっと意味が分からない」
それでも言われた通りに×。そしてコメント。
「でも、和訳の問題って面白いよね。その人の人間性が見えるよ」
「言わんとせんことは分かるが……」
「例えば、I hopeから始まるto不定詞の英文訳だったらブラックライズはどう訳す?」
「ほにゃららしたい、って書くかな。望むとか希望するって意味なら、それでも間違えてないだろ」
「でも、真面目にほにゃららする事を望む、希望するって書く人もいるよね。そう言うの見てて面白い。とりあえず、今の私はImagineって単語を《幻想》って訳した子に容赦なく×を付けるのが凄く素敵。思い違いも良いところだよね、Imagineだけに」
「それは英単語の意味を知らないと分からないし、分かってもまんま何も掛けてないって分かるから微妙」
クルリと一度ペンを回してから、止まっていた手を採点へと戻すブラックライズ。難しい話は分からないから、とりあえず何も考えずに手を動かすことに決めた。そうしないと終わらないと察したから。
EFの英語成績ランキング
1位:プロフェッサー『凄く日本英語に違和感を覚える、生粋のアメリカ人』
2位:ガーネット『TOEICレベルB相当』
3位:ブラックライズ『TOEICレベルC相当』
4位:ドン・ルーク『一般大学レベル。会話は頑張れば何とか』
5位:スリーナイト『エイゴ ムツカシクテ ヨク ワカリマセン』




