↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eden’s Gate Guardian's ‐エデンの守護者-  作者: Red/春日玲音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/38

第二十五話 Edenの開拓 食の解決!?

衣食住。


そのうち、「住」はもうなんとかなった。

「衣」も、くーちゃんのおかげで、むしろ贅沢すぎるくらいに整ってしまった。


――となれば。


残るは、ひとつ。


「……食、だよね」


思わず、小さく呟く。


これが、一番大事。


住む場所は、最悪どうにかなる。雨風さえしのげれば、馬車の中でも過ごせるし。

服だって、今あるものでしばらくは困らない。


でも。


「食べるものがなかったら……普通に死ぬよね」


当たり前のことを、改めて実感する。


持ち込んできた食材も、もう残りはわずか。

のんびりしてる余裕なんて、どこにもない。


「早めに、なんとかしないと……」


そう考えていた、ちょうどそのとき。


――がさっ、と、外から物音がした。


「あ、みぅだ」


ひょこっと顔を出したのは、いつもの小さな相棒。


そしてその表情は――


「……なにその顔」


ものすごく、自慢げだった。


胸を張ってる、っていうか。

「ほめていいよ?」って全身で言ってる。


その理由は、すぐにわかった。


「……え?」


みぅの足元に転がっているものと、口に咥えているもの。


それは――


「ウサギ……?」


でも、ただのウサギじゃない。


頭には、小さくてもしっかりした“角”。


毛並みも、どこか普通じゃない光沢がある。


「角付きの……魔物、かな」


ぽつりと呟くと。


「すごーい!!みぅ!!」


私より早く、アリシアが飛びついた。


「えらいえらい!こんなの捕まえてきたの!?」


ぎゅーっと抱きついて、わしゃわしゃと撫でまわす。


みぅは満更でもなさそうに、ふんす、と鼻を鳴らした。


「ほんと、すごいね……」


私もしゃがみこんで、そっと頭を撫でる。


「ありがとう、みぅ」


そう言うと、みぅは嬉しそうに目を細めた。


……どうやら。


自分で狩りをして、獲物を持ち帰ってきてくれたらしい。


「これ、食べられるのかな?」


私が角付きウサギを見ながら言うと、アリシアが元気よく答える。


「いけるいける!たぶん!」


「“たぶん”って……」


ちょっと不安なんだけど。


「……処理の仕方、わかる?」


恐る恐る聞くと。


「……」


アリシアは、にこっと笑ったまま固まった。


あ、これダメなやつだ。


「……解体は、私がやるわ」


後ろから、カスミさんの落ち着いた声。


振り向くと、いつの間にか現実に戻ってきていたらしい。


「さすがに、この程度の魔物なら経験があるもの」


「ほんとですか!?助かります……!」


心からほっとする。


「その代わり、調理はお願いするわよ」


「……がんばります」


ちょっと自信ないけど。


でも。


もう一度、みぅを見る。


誇らしげに胸を張ってる、小さな体。


その足元には、立派な“成果”。


「……うん」


思わず、笑みがこぼれた。


食糧問題も――


「どうにかなりそう、かな」


少なくとも、さっきまで感じていた切迫感は、もうなかった。



みぅが、毎日獲物を狩ってきてくれるようになった。


最初は偶然かと思ったけど、そんなことはなかったみたいで。

気がつけば、それがすっかり日課になっていた。


「ただいまー、って顔だね」


戻ってくるたびに、あの自慢げな表情。

足元には、必ず何かしらの獲物。


しかも、時々は――


「今日は私も同行してきたわ」


なんて言いながら、カスミさんまで一緒に帰ってくることがある。


その結果。


「……多くない?」


思わずそう言ってしまうくらいには、食材が積み上がっていた。


三人分どころじゃない。

どう見ても、食べきれる量じゃない。


「みぅは、狩りの合間に食べてるみたいだからねー」


アリシアが気楽に言う。


たしかに、みぅは持ち帰った獲物には手を付けない。

どうやら“これはみんなの分”ってちゃんと分けてくれてるみたい。


「くーちゃんは?」


『お肉、あまり食べない』


「そっか……」


つまり、ほぼ三人で消費することになる。


「……これは、保存しないとだね」


そうして、早急に始まったのが――干し肉づくりだった。


肉を切り分けて、塩を振って、干す。

単純だけど、手間はかかる。


その作業をしながら、カスミさんがぽつりと話し始めた。


「この角のあるウサギ、見慣れてきたでしょう?」


「うん。だいぶ」


最初はびっくりしたけど、今ではすっかり見慣れてしまった。


「“ホーンラビット”と呼ばれる魔物よ。比較的弱い部類に入るわ」


「へえ……あれで?」


正直、あんまり“弱い”って感じはしないんだけど。


「数で生き残るタイプなの。多産で、一部が捕食されることも前提にしている種ね」


「なるほど……」


自然って、ちゃんとバランス取れてるんだなあ。


「ただし」


カスミさんの手が止まる。


「数が多いということは――例外も生まれる、ということよ」


「例外?」


「特殊進化個体、ってやつね」


そう言って、指を一本立てる。


「例えば、脚力と瞬発力を極限まで高めて、蹴りで首を刈る“首狩りウサギ(ヴォーパルラビット)”」


「こわい」


思わず即答した。


「魔力を異常に膨れ上がらせて、雷撃を放つ“魔砲ウサギ(ライトニングホーン)”」


「もうウサギじゃないよねそれ」


「探知と隠蔽に特化して、気づかれずに仕留める“暗殺兎アサシンバニー”」


「やだ……会いたくない……」


どれもこれも、聞くだけで危険そうなのばっかり。


「しかも厄介なのは、普段は普通の個体に擬態していることね」


「え」


「油断して近づいた冒険者が、そのまま――という話も多いわ」


「ええ……」


ぞわっと背筋が冷える。


でも。


カスミさんは、そこで少しだけ視線を上げた。


「……ただ、それは“普通の森”での話」


「え?」


「ここは、“深淵の森”の最深部よ」


その言葉に、なんとなく嫌な予感がする。


「つまりね」


淡々と、告げられる。


「さっき挙げたような特殊個体と同等の能力を――“普通の個体”が持っているの」


「……はい?」


思わず、変な声が出た。


「アサシンバニー並みの探知と隠蔽。ヴォーパルラビット並みの機動力と脚力。ライトニングホーン並みに雷撃を扱う個体も珍しくないわ」


「それ、もう最強じゃない?」


「でも、この森では“最弱”よ」


「どういうことなの……」


理解が追いつかない。


あれ?私たち、いまどこに住んでるんだっけ?


「……みぅは、それを普通に狩ってるんだよね」


ぽつりと呟く。


視線の先では、みぅがのんびりと丸くなっていた。


「ええ。しかも――」


カスミさんは少しだけ苦笑する。


「私が狩るときは、かなり苦労しているのに対して、みぅはほとんど苦もなく仕留めているわ」


「やっぱり強いんだね……」


「それだけじゃないわ」


カスミさんは、少しだけ視線を伏せて言う。


「みぅが、他の個体を近づけないように調整してくれているの」


「……え?」


「でなければ、私一人では対処しきれない数が来る可能性もある」


さらっと、とんでもないことを言う。


「……みぅ」


思わず、その小さな背中を見る。


のんびりしてるように見えて、そんなことまでしてくれてたんだ。


「……私も、まだまだね」


自嘲気味に呟くカスミさん。


でも。


「いや、それでも十分すごいと思いますけど……?」


あの話を聞いたあとだと、むしろそっちの方が現実味ある。


カスミさんは、少しだけ目を丸くして――


ふっと、小さく笑った。


その横で、私は改めて思う。


「……うん」


食糧問題は、完全に解決した。


――ただし。


「なんか、別の意味で大変な場所に住んじゃった気がするなあ……」


干し肉を並べながら、私は小さくため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。