美しき優しい思いと、醜い迫りし悪意
「よし、じゃあ集まった情報を整理しようじゃないか。まずはベルナとティエラから!」
「私たちは……書庫の本を調べたり……中立派の、貴族や、王家の人に聞いたりしてた……。」
「普段はベルナ様が他の貴族の方となかなか話す機会が無いですから、とても頑張っていたのをこのティエラ、しっかり見ていましたわ~!あ、もちろんアタクシも色んな貴族の方に話を聞いたりしましたのよ!」
「私の為でも、あるから……頑張るのは、当たり前、かなあ……って……。」
「それで、アタクシ達が調べた事ですわねっ、アタクシ達は、貴族御用達の観光先を調べましたわ!」
ベルナが魔法で映像を出す。
ベルナやティエラにも映像を出す魔法は教えていたので使える……筈なのだが、どうもティエラはいまいち要領を掴めていないらしく、ティエラはまだ上手く使えないのでこうやってベルナがやっているのであろう。
映像には、花や植物が美しく咲き誇る景色や滝や街を見下ろす美しい景色が見えた。
花や植物は分かるが滝や街……?と思っていると、説明は続いた。
「花を見に行くなら、近くの絶景ポイントも見に行った方が良いという事で、貴族がよく行く観光地や別荘地の周りにある観光スポットを教えてもらいましたわ!」
「なるほど……僕は一般的な観光地を調べたけど、君達は貴族の隠れた名所を調べた、という事だね?」
「そういう事ですわっ!人脈が少なくとも調べる方法はありますもの!」
ふんす、と自慢げに言うティエラ。
私たちはおー、と二人に向かってぱちぱちと小さく拍手をする。
「しっかり情報集めてきたってことだね!じゃあ次は僕!といってもさっき言ったけど、シレーナに集まっている観光プランの情報を調べてきたんだ。貴族御用達のポイントに比べたら美しさでは負けるかもしれないけれど、それでも王道の観光スポットを巡るのはきっと良い経験になるだろう!」
「つまり……観光名所は、その二つを合わせて、考えれば……色々巡れる……?」
「もちろん、時間の兼ね合いや警備とかの兼ね合いもあるとは思うけど……それでも、花を中心に見ながら、ルートの中に観光名所をついでに行けば確かに良い遊覧になりそうね。」
「そのとおり!さすがだね!」
なるほど、観光名所、と一口に言っても、その中には花見スポットの近くにある絶景や植物によって彩られた景色など色々とあるであろう。
建造物だとかアートだとかが観光名所だけではないのだ。
それに、今この時期なら特に紅葉などで色づいた山なんかは特に景色が良いだろう。
そう考えると、ただ一口に花見、と言っても色々な楽しみ方があるという事だなと思う。
ここまで計算している辺り、二人ともなんというか流石だと思わざるを得ない。
特にエスセナに関してはシレーナでの観光業の勉強の一環にもなったてあろうから抜け目がない。
「んじゃあ次はマルニ!」
「私?私はジュビア先生と一緒に学園の図書館で一緒にこの時期に見頃になる植物や花を探していたわ。大体のメモは出来ているわよ。多分ジュビア先生の書いたメモの方がもっと正確だとは思うけど……。」
そう言って自分が纏めたメモとジュビア先生が纏めたメモを机の上に置く。
皆それをパラパラと見ていく。
(……流石に緊張するなあ……)
そう心の中で思いながら、その様子を見る。
なるべく、その緊張を顔に出さないようにはしているけれど……はたして隠せているであろうか。
やがて……特にティエラ以外の頭が良い三人はすぐに見終わったらしく、顔を上げる。
「うん、いいんじゃねえか?基本的には一般的な本の資料を纏めただけだけど、見栄えが良い花の特徴や群生地だとか、そういう基本的な情報からその花に関する花言葉や逸話みたいな小ネタまでかきこんである辺り、初心者には持ってこいって感じだな!」
「僕もだよ、それにジュビア先生のメモに遜色無いししっかり纏められていてとても勉強になった!」
「……もし、小さい紙に纏めて置けるなら、持ち歩いていたいかも……。」
「ふう……そう言ってもらえて助かるわ。」
良かった、ちゃんと役立てていたようだ。
ついほっと安堵の息が漏れてしまう。
そんな私の番が終わると、エスセナは再び話を進める。
「じゃあ最後にティハ、君は何を調べてきたんだい!?」
「アタシ様もメモって所だと似たような感じだけど……これだなっ。」
「……これは……?」
ウルティハが出したメモ。
そのメモに書かれていたのは私が書いた物と似ている。
だが、その書かれている内容が全く異なった。
「アタシ様の一家が研究者一族なのは前にも言っただろ?これは植物に詳しい姉様に頼んで作ってもらったメモなんだよ。」
「でも、書かれているの、見た目が綺麗な花とかが少ないし、中には毒のある物も少なくないわよ?」
「だからこそだよ。」
ウルティハはメモをパラパラとめくりながら一つ一つを解説していく。
「これはよく間違えて近づいて怪我したり毒で酷い目に逢いやすい花、これは薬に使われてる植物、これは繊維が使われてる植物。……よく観光で危険な目に逢いやすい植物や、逆に目立たないけど色んな形で国を支えている植物が書いてある。」
「……見て、ほしかった……ってこと……?」
「そういう事みたいだな、もちろん綺麗な花を見るのも楽しみ方ではあるけど、こういう物をみて想いを馳せるのも楽しみ方……ってやつらしいぜっ。」
「……なるほど……ありがとう。これから、王女の立場になる、なら……尚更、大事な、気持ち……だね。」
「おうよっ。」
ベルナは微笑む。
確かに、偉い立場になるなら、こういった素材だとか気をつけなければいけない植物に関する知識などはその時その時にしか調べたりしないだろう。
だからこそ、今知ってほしかったのであろう。
これからの未来を支えていく花や植物を。
「よし、じゃあ資料を纏めて、読みやすいように纏めて王家の人々や騎士団の人達に渡す事にしようじゃないか!」
「ええ、そうね。」
私たちは、資料作成にああでもないこうでもないと言いながら、資料作りに励むのであった。
……一方その頃。
とある男がひっそりと。
とある貴族がにやりと笑った。
「ふふふ……これで計画は決まった。後は当日に襲撃し、ベルナ嬢……ああ、あとあの邪魔なバレンティア家の令嬢も消してしまえば、これで邪魔者が消えるな……くくく。」
誰も聞いていない所で、そう呟いたのは、ティエラに貴族が観光に行く穴場を教えた貴族の一人。
その貴族は、ベルナと次期王女争いをする貴族との契約を結んでいた。
ベルナ・セプレンディを消す事。
そうすれば、次期王女になった時には重要な地位に置いて重用する、という、実質的な貴族としての格上げを約束する物であった。
だから、敢えて穴場を教えたのだ。
自分達が襲撃しやすい場所に誘いこむ為に。
ベルナ達に、悪意の魔手が迫っている事を、マルニ達はまだ知らない……。
もう一話今日中に更新出来たらいいなあと思います。そろそろベルナ&ティエラ編もクライマックスが近いので、ペースを上げていけたら良いなと思います。




