花探しとジュビア先生
私は学園の図書館に来ていた。
ベルナ、ティエラは王城の書庫や植物に詳しい貴族に頼りに行った、ウルティハとエスセナは実家に戻って資料を探しに行った。
なので、今日は私とジュビア先生で行動だ。
……そういえば、ジュビア先生と二人で行動するのは久しぶりだ。
というか、なんなら最近はベルナやティエラと親交を深めるのに忙しかった為、ウルティハとエスセナとの時間も最近は減っていた気がする。
(二人が帰ってきたら、二人とも話したいな)
と思うのであった。
まあ、あの二人の事であるから少しの間話せないからって気にしたりはしなさそうだが。
というかあの二人は、多分数年くらい久しぶりに出会ったとしても同じような対応をしてきそうだ。
そういう変な執着心みたいな物が無いのはあの二人の良い所だと思う。
自分の好きなものには夢中になれる、楽しく努力出来るというのはある種の才能である種の狂気のような物も必要なのであろうな、と思う気がする。
(……そういえば、私の心も狂気のような物なのかな)
前世で見た漫画とかの物語を思い出す。
その中で、異世界転移や異世界転生をした人達はその世界でのんびり暮らすだとか、英雄になるだとか、そういう幸せに暮らそうとか静かに暗そうという人達が多かった。
そういう作者の考えというのもあると思うが、基本的には大体の人ならそうなりたい、そうしたいと思うのがきっと普通なのであろう。
なら、自ら地位も命も幸せも捨てようとしている私は一体なんなのであろうか、
……きっと、私は、普通ではないのだろう。
転生した機会も、無駄にするような生き方、もったいないかもしれないし、仮に私を転生させた神様という存在が居るとしたら、きっと嘆いてしまうかもしれない。
そう考えると、申し訳ないようにも感じてしまう部分もある。
でも、それでも、それでも構わないと私には思えてしまう。
だって、それでもいいって、全てを投げ出してしまっても構わないと。
そう思える人に、私は出会えたのだから。
そう思える、美しい人に私は出会ってしまったのだから。
だから、もしその時が来たら……。
その時は、もしあの子がそれで幸せになるのなら、それでいいのだ。
いつか、あの子の記憶の彼方から消えてしまっても。
……もしかしたら、少しでも、記憶の片隅にでも覚えていてくれたら嬉しいけれど。
「……嬢、…ルニ嬢、マルニ嬢!」
「っ!?あ、あれ、は、はいっ。」
「どうしたんだ、急に。本を読んでいたら急にぼーっとして……虚ろな目をしていたぞ。」
「ああ、えっと……大丈夫です、ちょっと、考え事をしていて……。」
「……見たところ、危険な魔導書などではなさそうだな、そこは安心……といった所かな。日頃の疲れでも溜まっているのなら、急ぎすぎる物でもないから、少し休むといいぞ。」
「大丈夫です、少し、考え事で感傷に浸っていただけですから。集中し直します。」
「そうか……わかった、くれぐれも無理はしないでくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
いけないいけない。
考え事で落ち込み過ぎて明らかにぼーっとしていた。
最近、少し考えすぎというか、少々繊細になりすぎている気がしている。
……タイムリミットが近づいている、というのが気持ちに影響しているのかもしれない。
それか、行動によって未来が変わる選択肢を選ばなければいけないという事に少々ナイーブになってしまっているのかもしれない。
どちらにしろ、今は頭から追いやるべきことだ。
今は、ベルナとリジャール王子の為に花を調べる事が先決だ。
「これはどうですか、コミエフィンに咲く秋野ばらとか……。」
「確かに自然を感じられて良いかもしれないね……人工的な物なら、この庭園なんかもいいだろう。普段は自由に解放されているゾーンと、貴族御用達の観光ゾーンがあるからなかなか悪くないんじゃないか?」
「確かに人工的な観光名所もありですね。人工的な物もありなら、この少し山に入った所にある、桜日から貰った木から育った紅葉地帯とか……。」
私達は二人でああだこうだと言いながら、良いと思った物はメモに書き記していく。
そのメモはどんどん進んでいき、日が暮れてそろそろ自室に帰る時間になる頃には半分くらいは埋まってしまっていた。
特に教師であり学者でもあるジュビア先生のメモの記入は早く、そして詳しく書かれていた。
こういうメモの書き方だけでも私とは全然違う辺り、実力の違いを痛感させられる。
「よし、今日はそろそろいいだろう。マルニーニャ嬢、君はそろそろ帰るといい。私もそろそろ教師としての仕事をしようと思うからね。」
「はい、今日は付き合ってくださり、ありがとうございます。また明日。」
「ああ、また明日、良き夜を。」
「……あ。」
図書館から出ようと、数歩歩いた後に私はとある事が浮かんだ。
せっかくだ、ここで質問してしまっても構わないだろう。
そう思って振り返った。
「……?マルニーニャ嬢、どうかしたかな?」
「あの……幾つか聞きたい事があって。今丁度いいから、今聞いてもいいですか?」
「うん……?ああ、私が答えられる範囲なら構わないさ。」
「ありがとうございます。」
許可を貰った私は頭の中で考える。
そうだな、まずは……。
「今回の件、ジュビア先生はどう思っていますか?」
「今回の件、というと、花見遊覧の事を決めた事かい?それとも護衛の依頼の事かな?」
「一応両方……ですかね。でもどちらかというと護衛の依頼についての方でしょうか。」
「そうだな……まず、花見遊覧の件については特に私が言うことは無いかな。元々私が君達にベルナ嬢を紹介したんだ、元々ウルティハ嬢とエスセナ嬢も狙っていたようでもあるとはいえ、始まりは私だ。そう考えたら、結果的に君達で一緒に考えた事は、セプレンディ家の後ろ盾にもなるし、君達の王族との繋がりにもなると考えれば、悪くはない事だと思うし、結果的には悪いものではないと思っている。」
「なるほど……。」
「次に依頼の事について、だが……まあ、確かに少々良い判断だ、とはあまり言えないな。私も流石にリジャール王子殿下としょっちゅう話す機会がある、というわけではないが、少なくとも人を見る目は確かだ、と判断している。だからきっと今回の人選も間違いないだろう……と思っている。だがそれはそれとして、少々身内贔屓過ぎるのではないか、とも感じているというのが正直な感想かな。……もちろんだが、この件については秘密にすておいてくれたまえ。」
「も、もちろんです……ありがとうございます。それと……。」
「それと?」
今までの質問ももちろん大事だ。
だが、今回の質問はある意味で一番大事な質問だ。
私は意を決して質問する。
「今、好意を持っているの方は、いらっしゃいますか!?」
「……随分急な話だな……。」
「気になったので。」
「私に気があるのかい?」
「そういうわけではありませんけど……聞いておきたい理由がありまして。」
「ふむ……その理由というのが気になるが……。」
「すみません、今は話せないので……。」
「だろうな、そんな予感はしたよ。……しかし、好意か……。」
ジュビア先生は少し考え込む。
そして、返事は決まったらしい。
「恐らく恋愛的な好意と思うが、今は恋愛的な好意を持つ人は居ないよ。……というか、今はあまりそういうのは考えていないかな。」
「そうですか……わかりました、ありがとうございます。」
「君に良いことかはわからないが、どういたしまして。」
「ええ……では、また明日。」
「ああ、また明日。」
私は頭を下げて再び歩き、図書館を後にする。
一応、ジュビア先生のルートに入る可能性も確認はしたかった。
好意を持つ人は居ないのは良かったが、恋愛に積極的ではない点は気になる。
いざという時の為に何か準備出来る事はあるだろうか……。
そう思いながら、私は自分の部屋に戻ったのであった。
最近は執筆中に寝落ちすることもあるのでしっかり起きて居られるように健康的な生活をしたいですね。




