王族護衛と怪しき影
「はあ……。」
「随分と憂鬱そうですね、お嬢様。」
「断れない依頼だったから、断らなかったけど……流石に困惑したわね。」
「いいじゃないですか、王族からの直接の指名など、騎士としては栄誉ではないですか。」
「それはそうなんだけどね……はあ。」
私はため息をつく。
フレリスの作る食事は今日も美味しい。
だが、その肝心の私の気持ちがどうにも沈んだままだ。
「それに、お嬢様、嫌というわけではないのでしょう?」
「……まあ、嫌というわけではないわ。あまりに急な事だから頭が追いついていないだけというか……まだ騎士として学園の卒業もしてないのにこんな重役を任されるのは流石に荷が重いわよ。」
「まあ、確かに大変なのはわかりますが、だからこそ知らない王族の方ではないのは救いではないですか?」
「そうね……。」
そう、話は数時間前に戻る……。
「い、いや、あの……私達、まだ騎士志望で学園を卒業していない未熟な生徒で……!」
「サンターリオ学園の騎士志望生は学園に居る時代から成績優秀な者は警護任務の実績を積む事も少なくない。それに君達なら連携を取りやすいから、ただ騎士を集めるよりはずっと有効だと思うけど。」
「あ、アタシ様達は騎士志望ではないんだけど……。」
「君達も魔法を使った後衛をいざという時に任される事もあるだろう、野党などの事や悪徳貴族からの妨害を考えると経験は積んでおいた方がいいだろう?それに破龍の儀で君達も参加をする事を考えるなら実戦経験を積むかもしれないと考えると、悪くないはずだ。」
「そ……れは、そうだけど……。」
「アタクシはやりますわ!」
「ティエラ……!?」
「アタクシはそもそもベルナ様の為に騎士を目指していたようなものですもの!ベルナ様を守る事に繋がるのなら、断る理由がありませんもの!それに利益的に考えても、アタクシの活躍でバレンティア家の名声に繋がりますもの!同じ騎士志望のマルニ様ももちろんやりますわよね!?」
「え……私は……。」
……まあ、確かに、事実として私が騎士志望な事を考えると、確かに断る理由は無い。
事実として王家に近づく事で騎士としての実績を積むのは大きな前進になるし、先程ソルスの事を紹介したからソルスにも有利な環境を作れる……という意味では好機ではあろう。
だが、私の計画は、ソルスがリジャール王子ルートに入る事が前提の部分が大きい。
つまり、デートが上手く行って結果的にベルナが次期王女に正式に選ばれては、いよいよソルスがどういう道筋を辿るかわからないのだ。
無理矢理にでもジュビア先生とくっつけてジュビア先生ルートに入るようにするか、それともなんとかオスクリダ家の養子として迎え入れて……。
いやいや、それは不味い。
いずれ没落するのがほとんど確定している貴族の家に養子に入れるというのはどう考えてもソルスの為にならない。
それくらいならば、私の友達の中の誰かにソルスを託す方がきっとずっと何倍もマシであろう。
もし、例え二度と会う事が出来なくなったとしても、だ。
……とにかく、私も断る理由は無い。
「そう、ね……私としても、非常に有難い話ね。……リジャール王子殿下、そのお話、私は是非お受けしようと思います。」
「おお、良かったよ!君には特に参加して欲しかったんだ、マルニーニャ嬢。闇属性に対する偏見払拭にも君の力は必要だと思っていたからね。」
「なるほど……そういう理由でしたら、是非。」
「……で、残るはウルティハ嬢とエスセナ嬢、君達はどうかな?」
「……はあ、マルニが受けるなら、アタシ様達も受けるかなあ。」
「右に同じ、そもそも僕はティハと一蓮托生、運命共同体だ。ティハか僕のどちらかが受けたいと思うなら、余程断る理由が無い限りは僕達は一緒に行動するからね。僕もやるよ、その護衛任務とやらを!」
「話が纏まって良かった!」
私達の返事にリジャール王子は嬉しそうに笑う。
ここまでの計算は果たしてしていたのかわからないが、この天才王子ならしていても不思議ではないであろう。
「君達の部隊がどういう役割かなどの詳しい説明は追々話すとしよう!サンターリオ学園や騎士団にはボクから説明も行う!父上や母上にはもう説明済みだからね。後は手回しだ!さあ、ここから忙しくなるぞ~!」
そんな事を言う王子の顔は明らかにはしゃいでいた。
王子、という立場上、あまりはしゃいだりするような事h会出来ないのであろう事くらいは私でも想像はつく。
それを考えると、この王子が子どものようにはしゃいで居られるというのはとても平和な事というか、もしかしたら有難い事なのかもしれない。
ありがたやありがたやと手でも拝むべきであろうか。
ともかくこうして、私達は王族の護衛任務を受ける事が決定したのであった。
……そして、今に至る。
私は依頼を受けたはいいものの、断り辛い内容であったから断らなかったのではなく、そもそも断る気が無かったのではないのであろうか、と思ってセルフで落ち込んでいたのであったのだ。
一方、その頃、とある場所にて。
貴族達が話していた。
その貴族……特に女性が多かったのだが、その貴族達は周りの目を、気にしていたし逆に気にしていなかった。
だってそうなのだ、今、この貴族達にとって一番大切なのは自分達……正確にはその貴族達の娘たる令嬢達であるが。
つまりは、蹴落とす、という行為はあって当たり前なのだ。
そういう時ほど団結してしまうのが貴族達の悪い癖。なのかもしれない。
「ベルナ嬢、社交界の問題児達と次々にコミュニティを作っているみたいですわよ。」
「あらあら、それは大変。もし王子電荷に何かがあったら大変ですわ。」
「魔法研究の変人に舞台女優、それに闇属性使いう……バレンティア家の令嬢も一緒みたいですわよ。」
「なんて寄せ集めのような、しかも闇属性の使い手にセプレンディ家の引っ付き虫のようなバレンティア家の令嬢なんて……!」
そうしてざわざわと噂は、言葉は、歪んだ思いが伝わっていく。
この歪みを認知している人間は、はたしてここに居るのであろうか。
この花見、ただでは終わらない物であった。
少しお久しぶりです。最近の生活リズムの変化に身体がまだ慣れていないせいか思うように執筆が進まず、体調も良くなかったため遅くなりました、申し訳ございません。早くこの執筆活動を増やした生活サイクルに身体を慣らしていきたいものです。




