怪しき影 その1
お久しぶりです、更新が遅くなってしまい申し訳ありません……。体調があまり良くなかったのとストレスが酷かったのでお休み期間を作っていました。だいぶ解決したので、これからまた連載を執筆していこうと思います。これからも頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします。
任務の前から様子がおかしかったカサドール騎士団長。
その口から出てきた情報……。
「最近、とある情報が引っ掛かってきた。今回の遊覧によるベルナ嬢の次期王女候補争いの有利になるのを良く思わない貴族の一部が、今回の遊覧の妨害、そしてそれによるセプレンディ家の失脚……もしくは、ベルナ嬢の暗殺を狙う者が居る、と。」
「そんな……随分物騒な話ですね。」
「私もまだ確証を持てなかった。が、それでも可能性としては存在する、と考えて今回の護衛任務、騎士を多く連れてきたが……どうやら噂は本当な可能性が高いようだ。盗賊達の様子を見る感じな。」
「……なるほど、確かに誰かの指示による行動に見えましたね。」
なるほど、次期王族最有力候補に暗殺や失脚を狙う者、か。
それならば、確かになるべく情報を確実にしてから言うべきであろう。
不確定な情報では騎士達を混乱させるし、もしそれで貴族、しかも恐らく同じく次期王女候補やその繋がりのある貴族にもし冤罪をかけたり、なにか失敗してしまったら……騎士団の立場は失脚の可能性が高い。
立場が危うくなれば、騎士団の力の弱体化を招く。
権力的にも、そして治安維持する武力としてもだ。
そうすれば当然ながらこういった不正……例えば、貴族によるこういった暗殺などといった政治的不正。
民をこういった暴力で支配、そして金などに困った騎士や警備兵を金や私兵による脅しなどで買収し、更に不正を見逃させて自分達の都合を通す。
コミエドールでずっと見てきた光景だ。
それをこのコミエフィンでやらせるわけにはいかない。
ましてや地方のコミエドールでさえ庶民達の苦しみは少ないものではなかったのだ。
中央都市であるコミエフィンがもしコミエドールのように治安が悪くなる……いや、貴族の力の違いを考えるに、それ以上になる可能性が高いと考えたら、それは絶対に防がなければならない。
国の中央都市が治安が悪くなるというのは確実に地方にも、国全体にも影響を及ぼすだろう。
そんな悪夢が現実になれば、来年の学園生活どころではなくなるだろう。
間違いなくルートにも影響が出る。
つまり……私は今回、ベルナを命も立場も、そして騎士団も守らなければいけないのだ。
だが、そんな状況で、私はベルナとシャル王子が仲良くなるのを防ぐ、なんて出来るのだろうか?
それに、そんな妨害の加担のような事をすれば、私の立場なども危うくなるかもしれない。
もしそうなれば、来年私が学園に居られるかも分からなくなってしまう。
そうなれば、ソルスの覚醒を促すというイベントが起きないのではないか?
……考えて、私は頭の中がこんがらがってきた。
私はどうすればいいのか、決断するのに迷っている時だった。
「なるほど、そういう事情だったんだね。」
「王子殿下!……今のお話を聞いていらっしゃったのですか?」
いつのまにかシャル王子が立っていた。
こんなに目立つ存在でありながら気配を悟られないのが上手いのか、私も気づいていなかったので驚いたが、カサドール騎士団長はそれほど大きくは驚いていなかった辺り、良くあることなのであろうか?
「そりゃあ、僕だって異常くらいは気づくさ。それよりも、先程の賊達は?」
「今捕縛した賊は尋問を行っています。その後、近くの町の駐屯所に部隊の一部の騎士が連れて行ってから更に尋問、その後は審判を行う事になっています。幸いにも負傷した騎士も少なく、大きな負傷をした騎士も居ないので、怪我の処置、回復に少々時間はかかりますが、その間の警備も問題ないかと。」
「そうか、騎士の皆、特に負傷した騎士には務めご苦労と言ってくれ。とはいえ、賊の為に時間も取られるし、騎士の戦力も多少なりとも削がれるか……。最初からそれが狙い、という事だろうかな。」
「王子殿下は、この襲撃がまだ続くと読んでいると?」
「目的をベルナに絞るならね。個の力で騎士団を上回るというのは簡単ではないし、かといってそこまでやって騎士団を壊滅させるなら狙いはベルナだけ、という事はない可能性が高い。それにそれくらい強力な存在をぶつけるならこの遊覧自体を最初から止める為にここでぶつける可能性が高い。最後の方で万全を期して……という可能性もなくはないけどね。」
「私達を超える強者による襲撃……考えたくもありませんな。」
シャル王子が言う可能性も確かに高い。
コミエフィン騎士団は確かにこの国でも強力な騎士団だ。
だが中央都市の騎士団という事もあってか、基本的には相手を殺すよりも捕縛して審判にかける、ということが多い。
もちろんいざという時には遠慮はしないが、それでも基本的には捕縛、という方針ならその為に力を加減したり、捕縛のために人員を割いたりする、というのは特徴であると同時に明確な弱点だ、とも言えるであろう。
そして、それを自覚しているのは当然だ、本人たちも、その騎士団を使う王族達も。
そして、その騎士団を攻略しようとする者達が居るならば、当然。
「どうしますか、毎回こうやって捕縛というのは、リスクがあるかもしれないと考えるなら、場合によっては……。」
「今はまだ方針は変えない方向で行こう。場合によってはベルナや僕も戦線に立つよ。」
「王子殿下……確かに貴方様の実力は私含めて騎士団の誰よりも強い、何ならばこの国においても貴方様を超える実力者はそうは居ないでしょう。ですがそれでも貴方様の身に何かあれば……。」
「なに、もし狙いが本当にベルナなら、僕を狙う可能性は低いさ。それにベルナも実力ある魔法使いだ。何もしないよりは戦力として加わった方が、守るなら良いと思うよ。馬車の中では動けない的になるわけだしね。」
「王子殿下……。」
「それに……僕がその裏に居る貴族の正体を掴まなきゃ、罰を与えられないからね。」
「……自分とベルナ様の身を第一にお考えてください、絶対ですよ。」
「ああ、僕の身の重要性くらい、わかっているさ。」
やがてカサドール騎士団長は折れたらしく、シャル王子とベルナが戦線に立つことを許可した。
(……ベルナとも話した方がいいかな)
多分だけど、ベルナも戦線に立つことに異論は無いだろうけど……それでも、友達として一応話しておきたい。
「カサドール騎士団長、リジャール王子、今の話、ベルナ嬢の話してきてもいいでしょうか?」
「マルニーニャ嬢……そうだね、君なら頼めそうだね。わかった、頼むよ。」
「私からも、お願いいたします。」
「はい、ありがとうございます。」
私は、二人の許可を取って馬車の方……ベルナの所へ向かった。




