騎士団対盗賊達
この戦い、数も練度の差も大きかった。
王族の護衛という一大任務という事もあって、騎士団の方が数も上回っているし、一人一人の練度もやはり騎士の方が上回っている。
これが単純な命の奪い合いならば、その暴力の差で潰せばいいであろう。
だが、こちらはあくまでも騎士団だ。
それも、このインフロールにて最大にして最強の、コミエフィン騎士団だ。
それ故に普通はそのまま暴力に任せて相手を殲滅、というわけにはいかない。
盗賊であろうと、基本的には生け捕りにして捕縛、そして近くの町などの駐屯兵にでも引き渡して後日処罰を行う、というのが流れになるであろう。
もちろん、それまでに尋問などは行うし、もし騎士団に対して過度な攻撃を行うのであれば、それなりの痛い目にはあってもらう必要があるであろう。
場合によっては命のやり取りになる。
なので、今回は全体の60パーセントくらいの騎士を盗賊との戦闘部隊、残りの40パーセントくらいを護衛兼指揮部隊として分けて戦う。
そして、それだけでもやはり実力の差はあった。
盗賊も当然頭を使わずに戦うのではなく、しっかり前衛と後衛に分かれて戦ったり、相手の方が実力が上、と判断したらしく、騎士一人に対して複数人で攻撃したりなど、戦術において基本的な戦い方は心得ているらしく、騎士によっては押され気味になる騎士も居た。
だが……
「射撃【フシーロ】!」
「水流【コリエンテ】!」
「岩石【ローカ】!」
「雷【トゥルエノ】!」
「うお!?」
「ぐあっ!」
「うわあっ!」
私達護衛部隊の方もただ指揮しながらぼーっと見ているだけではない。
私やティエラ達を含め、魔法の才能がある程度ある者たちが後衛として支援の魔法攻撃を飛ばす。
戦闘部隊の前衛が武器で攻撃しながらライン形成。
戦闘部隊の後衛……つまり、中衛に当たる人達が魔法による攻撃で本格的に蹴散らす。
そして更に後ろの護衛部隊が指揮をしながら魔法で支援して隙を埋める。
この連携によって盗賊たちのラインはじりじりと圧されて後退していく。
こちらは相手をなるべく殺さないように加減しながらの戦いでも、単純、だがそれ故にしっかりと組まれた戦術、そして実力の差により戦況はほぼほぼ決していた。
そもそも場所も場所だ。
確かにサクラの木が沢山あって見晴らしが良い、というわけではないが、それでも盗賊たちの居た場所は開けた場所。
隠れて奇襲などといった奇策も使えない状況では、真正面からの攻撃をするしかないというのはどう考えても不利であろう。
(……何か、おかしい……?)
心の中で、どこかそういう妙な不安が走った。
いくら何でも、盗賊の襲撃があまりにも無策すぎるのではないか?という疑問が心の中に浮かんだのだ。
私は、嫌な違和感を感じて構えて魔法を飛ばすのを一旦止める。
ちらり、とカサドール騎士団長の方を見ると、カサドール騎士団長も私達の方を見ている事に気が付いた。
その視線に気が付いたのは私だけらしく、私と視線が合うと、小さくカサドール騎士団長が頷くのが見える。
どうやら、カサドール騎士団長も何か違和感に気が付いたらしい。
そして、その違和感の正体は、この後すぐにわかった。
シュンっ!
ピュンっ!
「っ!!闇の風【オスク・エント】!」
「鉄の壁【イエロ・パレ―】!」
私とカサドール騎士団長が二人で馬車を囲むように防御の為に魔法を発動をする。
私の闇の風が矢を吹き飛ばし、魔法を浸食する。
カサドール騎士団長の強固な壁が、矢や魔法を弾く。
「っ、今の!?」
「あっちですわ、とっちめますわよ!」
「待て、アタシ様達が狙い撃つからティエラは位置の指示頼むわ!」
「っ、了解しましたわ!」
「私も指示するわ!」
ティエラ達も気づいたらしく、ティエラが突っ込んで行こうとするがウルティハが制止し、ティエラと私が見た方向をウルティハとエスセナが狙う、という事にする。
木を吹っ飛ばしたりしないようにマーキングしながら敵だけを狙って攻撃する、というのは二人の方が得意であろうという判断だ。
私はエスセナに、ティエラはウルティハに触れて偉大なる役者、エスセナ【グラン・アクト・セナ】の応用で視野の記憶を共有する。
「……追跡の弾丸【セグメント・パラ】!」
「追う氷撃【イエロ・バスカ】!」
狙いを定めた追跡する無属性の弾丸と氷属性の弾丸が飛んで行く。
……やがて。
「うわ!?」
「なっ、ぐあっ!」
木々の間から悲鳴が聞こえてくる。
倒れた人間達を見ると、やはりというか、盗賊達と似たような風貌。
どうやら、盗賊達の仲間らしい。
なるほど、つまりはこういうことだ。
盗賊達も三つに部隊を分ける。
まずは騎士団と戦闘し、挑発、足止めする前衛後衛の戦闘部隊二つ。
そして……指揮で足が止まっている馬車や騎士を直接狙って攻撃する、木々の間から攻撃する狙撃部隊。
この三つに分けて、狙撃部隊に賭けてこちらを攻撃してきたというわけだ。
わざと開けた場所で待っていたのも狙撃の成功率を上げる為であろう。
最初から、足止めの為に彼らは正面から騎士団に攻撃してきたという事なのだ。
「……これは……。」
「ああ、そうだな……。」
やがて戦闘は終わり、騎士達にも大した怪我人は出ずに終わった。
そして、戦闘が終わった騎士達が、ひそひそと囁き合う。
……私も、同じ事を考えていた内容であった。
「……やはりか。」
「カサドール騎士団長、これは……。」
「ああ、捕縛作業が終わったら、皆を集めてくれ。私から話さなければならない事がある。」
「私が聞いた情報……ベルナ嬢を狙う者についてだ。」
お久しぶりです。本当は100話記念でここまでの設定資料を上げるつもりだったのですが、どうにも筆が進まず……悩んだ末に、設定資料を上げるのは今回は見送ろうという事になり、普通に本編を上げる事にしました。それにしても、100話……長かったです。そしてやはりというか、思ったよりも進んでいませんね。本当はもう2年生編に入っているつもりだったのですが……まあ、ゆっくりと書いていこうと思います。いつも読んでくださる読者の皆様のおかげで続けられています。本当にありがとうございます。どうか今後ともこの作品を、どうかよろしくお願いいたします。……もしこの作品を略するなら、何て呼ぶべきでしょうかね?




