apx3.復讐の女神たち①
あとがきや設定資料読んでくださった方向け。
短めです。
本編に入れるのは蛇足、無ければ無いで、もやもやされていた人もいたかな?
ウィッデンプーセは宙に浮かんで自分を見下ろすエイメナースを前にして背筋に悪寒を感じていた。
「何か、言いたいことがあるのではないか?」
「・・・・・・」
彼の問いに何も答えず、エイメナースはただ冷たく見つめるのみ。
呼んだのはお前だろう、用があるならさっさと言え、そして解放しろということか。
「神々は皆、天界にいる、地上にはもうそなたの知己はいないぞ」
仕方なくウィッデンプーセは長年地上を離れていたエイメナースに状況を伝えた。
多くの神々が獣に食われたが、エイメナースによって獣は封じられ追跡される恐れが無くなってから神々は天界へ向かったので彼女は他の神々のその後を知らない筈だ。
「関係ありません。私は妹を迎えに行きたいだけです」
「それだけか?地上を、人間をどうするつもりだ?」
静かに、だが明らかに怒気を露わにしているエイメナースが愛しい妹を迎えに行くだけで済ませるようには見えなかった。
「むろん、根絶やしにします。地上を作り直してあの子が過ごしやすい環境に整え直すのです」
あっさり人類を絶滅させる、とエイメナースは答えた。
「いかん!今は人の時代だ。神の介入は禁じられている。大人しく天界へ向かうのだ、エイメナース」
「誰が決めたというのです?何故私が従わなければならないのですか?」
ウィッデンプーセは断固として宣言したが、エイメナースに従う気は全く無かった。
「アル・アクトールが次の時代を予言し、モレスとアナヴィスィーケのお二人が決められた事だ」
「あの狂神が?あんな道化の言うことに従う気はありません。アナヴィスィーケには後でエイダーナが話します」
主神の言う事であれば従うであろうというウィッデンプーセの期待はあっさり裏切られた。
アナヴィスィーケは娘に弱い。そしてモレスはアナヴィスィーケに弱い。
「いかんというに!予言を覆せば何が起きるかわからんぞ!!」
アル・アクトールは道化に違いないが、彼の言うことを無視したものの末路は悲惨だった。
ウィッデンプーセは警告したが、それさえエイメナースは無視した。
「だから何だというのですか、大体貴方はここで何をしているのです?誰も居ない議事堂でぼんやりするより天界に帰って鐘でもついていればいいでしょう」
「私は主神より人の時代を見守るよう厳命されているのだ!!」
侮辱に対してさすがにウィッデンプーセも憤った。
人間の一派からは、魔術師達からは最高神として敬われてさえいるのだ。
「ほう、では私の妹があれほど悲痛に泣いて助けを求めていたというのに助けて下さらなかったのですか。あくまでも人間の味方をするというのですね」
エイメナースの目が冷ややかな眼差しから敵を見るものに変わりつつあった。
その力は暴風の様に吹き荒れ神々の議事堂を席捲した。
ウィッデンプーセが以前危惧した通り、エイメナースは多くの神々を喰らった獣を封印した事で逆に取り込んでしまっていたのだ。
その時、誰かが近づいてくる気がしてエイメナースもウィッデンプーセも一瞬そちらに気が取られたが、思い過ごしだったようだ。
天の神々は現世に介入しない、神の議事堂に近づけるのはエイメナースの妹くらいだろう。
もし彼女が再訪すればウィッデンプーセは天界に送り届けてやるつもりだった。
視線が外れた一瞬にウィッデンプーセは息をついた。
薄れたとはいえ億単位の人類から信仰を集め力の源とするウィッデンプーセではあったが、その間に日和った。
「いや、私は次の時代に引き継ぐ為にその時が来るまで眠りについていた。残念ながらそなたの妹神の嘆きを聞くことは出来なかった」
非力だが、あらゆる命を育む森の女神はあらゆる命へ影響を及ぼす。
エイメナースの怒りの対象が人類だけであるならば、御の字ではなかろうか。
生命などまた作り直せばいいのだ。
自分に復讐鬼と化した女神の怒りが向くのは御免蒙る。
鬼母神と言われた樹木の大神も怒ると手が付けられなかった。
この一族は面倒過ぎる。
観念したウィッデンプーセは早々に諦め、時間を操って少しでも時間を稼ぎ、誤魔化す事にしたのだった。
アイラカーラ「そっ閉じ」




