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第1話 生命の起源

第1話:神の仕事はまず『水やり』から?


ーーー地球誕生から約1億年


「うわぁ……何これ、ひどい泥団子だな……」


俺――テクロナスは、神様の作業空間モニタールームから眼下に広がる巨大な球体を見下ろして、引き気味に呟いた。


ドロドロに溶けたマグマが泡立ち、空からは隕石がバンバン降り注ぎ、毒ガスのような煙が充満している。これが俺の担当する惑星『地球』の初期状態らしい。文明育成どころか、住居としても完全に欠陥物件である。


「テクロナス様、何を呆けているのですか。まずは生物が生きるための基盤となる『水』を用意するのです!」


隣で腕を組む従者のルナが、テキパキと指示を出してくる。


「水? ああ、海を作れってことか。でもこんなアツアツの泥団子に水ぶっかけたら、一瞬で蒸発しないか?」


「甘いです、テクロナス様! だからこそ水蒸気にするのですよ! マグマや隕石から噴出した大量の水蒸気が空に溜まり、分厚い雲を作っています。地表の温度が下がれば、それが一気に『雨』となって降り注ぎ、冷却と同時に海を形成するんです!」


「へー、科学的ー。じゃあ、ポチッとな」


俺が神力を注ぎ込むと、地球を覆う暗雲から猛烈な大雨が降り始めた。

何百年、何千年と降り続いた雨は地表を急速に冷やし、やがて巨大な『海』を作り上げた。


「おおー! すごいじゃん! 青い海ができたぞ!」


「ふふん、これで第一段階クリアです。海ができたことで、水の中に様々な化学物質やミネラルが溶け込みました。雷のエネルギーなどでそれらが結合し、生命の材料となる『有機物』が作られる準備が整ったのです!」


「なるほどなー。で、その生命ってのはいつ頃できるんだ?」


「そうですね……それらが複雑に組み合わさって細胞になるまで、あと数億年くらい待てば最初の生命が誕生するかと」


「数億年!? 気が遠くなる話だな……まあでも、俺は根っからのニートだからな。寝て待つのは大得意だぜ。ベッドに入ってゴロゴロしてたら数億年なんてあっという間――」


「はいはい、だらけようとしないでください。サクッと時間を進めますよー【時間加速・大】!」


「ちょっと待って!? 俺の睡眠時間がーーッ!?」


ルナが操作パネルを雑に叩くと、目の前の地球の映像が超高速で回転し始めた。


ーーー地球誕生から約8億年


「……はぁ、息が切れた……」


「ただ見てただけでしょ。ほらテクロナス様、見てください!」


拡大モニターを見ると、温かい海の底で、目に見えないほど小さな『単細胞生物』が誕生していた。


「おお……! なんか生き物っぽいのが生まれた!」


「海の中の有機物が奇跡的に膜で包まれ、代謝と複製を行う仕組み――つまり『細胞』を持ったんです! これがすべての地球生命の始祖ですよ!」


「お、おう……! ルナの解説のおかげで、なんか凄さが分かって愛着湧いてきたかも!」


ニート神様とスパルタ従者による、超ロングスパンな文明育成が本格的にスタートしたのだった。

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