表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アムステルダム夢記  作者: tag-tje
4/12

nikki xx1年11月25日-1

名前はニッキ。


ザイール生まれの白人の少年。


年齢は十歳。


内乱、紛争、戦争、テロ――争いの絶えない土地で、この少年はいつも「そこ」にいた。


しかも驚くべきことに、彼は常に勝者の側で戦っていたという。


敵と味方を本能だけで見分け、戦況を瞬時に読み、生き残る。


その天性の勘で、これまで何百人もの命を奪ってきた。


幼いながら、その名を知られたソルジャーだった。




ニッキは、生まれて間もなく家族をすべて失った。


建物の隅で家畜のように餌を与えらていた。


善悪を教わることもなく、生きるために人を殺すことを覚えさせられた。


食べるために動物を殺すことも、敵を倒すことも、彼の中では命の価値に違いはなかった。


そうして彼は、野生の獣のように育っていった。




日本の大学で、俺はニッキの映像を見せられた。


紛争の最前線で、刃物を構えた小さな影が、素早い動きで次々と人を倒していく。


表情は薄く冷たく、まるで獲物を狩る獣のようだった。


別の映像では、草むらに身を潜め、無我夢中で機関銃を乱射していた。


血と肉片が飛び散る地獄の中で、皆殺しにすることで生き延びる子供の姿があった。


ジャングルでは、全身に刺青を施した部族の男たちを鋭利な槍で執拗に突き刺し、冷めた表情のまま息の根を止めていた。


銃器、爆薬、刃物、古いサバイバル武器。


あらゆる手段で敵兵や部族を倒していく映像を見た。


そして俺は、その少年を取材する依頼を受け、彼のいる国へ飛んだ。




ニッキは有名人だった。


居場所はすぐにわかった。


今は川に架かる橋にいるという。


川沿いを歩くと、見物人であふれ返る橋が見えてきた。


人々の視線の先では、対岸の葦の中で部族が一人の女性を追い詰めている。


橋の上の見物人を威嚇する怒声が響く。


喧嘩ではない。


部族同士の紛争だった。


槍、弓矢、石が飛び交う。


俺はカメラを取り出そうとした。


しかし、それどころではない危険が迫っていた。


直感的に「殺される」と感じた。




その時だった。


棍棒の先にトゲ付きの鉄球を付けた武器を構え、突進する小さな影が見えた。


橋の上からは、木製の巨大な球に槍先をいくつも取り付けた兵器が、振り子の勢いで対岸へ放たれる。


女性を襲おうとしていた部族に命中し、血が噴き出した。


橋のたもとでは、二人の大人と一人の子供がロープを引き、その兵器を引き戻す。


子供が狙いを定め、大人たちが再びロープを放つ。


また一人、また一人と串刺しになって倒れていく。


部族は逃げ惑い、緑の対岸は赤く染まった。


子供は橋の上から槍を投げた。


見事に命中し、また一人が倒れる。


何本もの槍が放たれ、部族は瞬く間に壊滅した。


最後の一人に向かって、子供は槍を抱えたまま走り出す。


体当たりと同時に槍が突き刺さる。


倒れた相手から槍を引き抜き、間髪入れずにもう一突き。


さらに喉元へ一撃を加え、息の根を止めた。


周囲を見渡し、虫の息の者を探しては槍を突き刺す。


雄叫びを上げることもなく、ただ静かに立ち尽くしていた。


橋の上の民衆から歓声が沸き起こる。


その子供は英雄であり、カリスマであり、人々に慕われていた。


それがニッキだった。




橋へ戻ったニッキは人々に称えられ、一人の英雄として迎えられていた。


人垣をかき分け、俺の横を通り過ぎる。


「ニッキぃー」


俺は呼び止めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ