nikki xx1年11月25日-1
名前はニッキ。
ザイール生まれの白人の少年。
年齢は十歳。
内乱、紛争、戦争、テロ――争いの絶えない土地で、この少年はいつも「そこ」にいた。
しかも驚くべきことに、彼は常に勝者の側で戦っていたという。
敵と味方を本能だけで見分け、戦況を瞬時に読み、生き残る。
その天性の勘で、これまで何百人もの命を奪ってきた。
幼いながら、その名を知られたソルジャーだった。
ニッキは、生まれて間もなく家族をすべて失った。
建物の隅で家畜のように餌を与えらていた。
善悪を教わることもなく、生きるために人を殺すことを覚えさせられた。
食べるために動物を殺すことも、敵を倒すことも、彼の中では命の価値に違いはなかった。
そうして彼は、野生の獣のように育っていった。
日本の大学で、俺はニッキの映像を見せられた。
紛争の最前線で、刃物を構えた小さな影が、素早い動きで次々と人を倒していく。
表情は薄く冷たく、まるで獲物を狩る獣のようだった。
別の映像では、草むらに身を潜め、無我夢中で機関銃を乱射していた。
血と肉片が飛び散る地獄の中で、皆殺しにすることで生き延びる子供の姿があった。
ジャングルでは、全身に刺青を施した部族の男たちを鋭利な槍で執拗に突き刺し、冷めた表情のまま息の根を止めていた。
銃器、爆薬、刃物、古いサバイバル武器。
あらゆる手段で敵兵や部族を倒していく映像を見た。
そして俺は、その少年を取材する依頼を受け、彼のいる国へ飛んだ。
ニッキは有名人だった。
居場所はすぐにわかった。
今は川に架かる橋にいるという。
川沿いを歩くと、見物人であふれ返る橋が見えてきた。
人々の視線の先では、対岸の葦の中で部族が一人の女性を追い詰めている。
橋の上の見物人を威嚇する怒声が響く。
喧嘩ではない。
部族同士の紛争だった。
槍、弓矢、石が飛び交う。
俺はカメラを取り出そうとした。
しかし、それどころではない危険が迫っていた。
直感的に「殺される」と感じた。
その時だった。
棍棒の先にトゲ付きの鉄球を付けた武器を構え、突進する小さな影が見えた。
橋の上からは、木製の巨大な球に槍先をいくつも取り付けた兵器が、振り子の勢いで対岸へ放たれる。
女性を襲おうとしていた部族に命中し、血が噴き出した。
橋のたもとでは、二人の大人と一人の子供がロープを引き、その兵器を引き戻す。
子供が狙いを定め、大人たちが再びロープを放つ。
また一人、また一人と串刺しになって倒れていく。
部族は逃げ惑い、緑の対岸は赤く染まった。
子供は橋の上から槍を投げた。
見事に命中し、また一人が倒れる。
何本もの槍が放たれ、部族は瞬く間に壊滅した。
最後の一人に向かって、子供は槍を抱えたまま走り出す。
体当たりと同時に槍が突き刺さる。
倒れた相手から槍を引き抜き、間髪入れずにもう一突き。
さらに喉元へ一撃を加え、息の根を止めた。
周囲を見渡し、虫の息の者を探しては槍を突き刺す。
雄叫びを上げることもなく、ただ静かに立ち尽くしていた。
橋の上の民衆から歓声が沸き起こる。
その子供は英雄であり、カリスマであり、人々に慕われていた。
それがニッキだった。
橋へ戻ったニッキは人々に称えられ、一人の英雄として迎えられていた。
人垣をかき分け、俺の横を通り過ぎる。
「ニッキぃー」
俺は呼び止めた。




