idol xx1年11月6日
彼女の名は、まゆまゆ。
大人数で生き残りをかけるアイドルグループの一員だ。
子どものころから舞台に立ち続けてきた。
学芸会、発表会、そしてアイドルになってからのステージや番組出演。
その膨大な記録を、彼女はすべて残している。
動画、音声、写真。
そして、言葉をほとんど綴らない絵日記。
その時々の役柄や衣装を身にまとった自分をイメージし、ゆるキャラのように抽象化された漫画タッチで描いている。
夢や希望へ向かって伸びる、明るく前向きな線。
ひとつの公演が終わるまで、毎日毎日ページは増え続ける。
同じキャラクターを何枚も描き重ねるうちに、最後の一枚がふいに完成する。
初めはゆるキャラだった自分の投影が、終わりには写実的なデッサンへと変わり、ひとつの作品として完成している。
そこには寂しさや悲しさ、孤独が滲み、希望の裏側に沈殿していた悲観が静かに姿を現す。
まゆまゆは天然系で、少し抜けている。
一生懸命なのに、周りからはからかわれ、いじめられ、嫉妬や悪意による傷が、絵日記のキャラクターを少しずつ変えていく。
それでも、内に秘めた思いは前を向いている。
折れそうで折れない芯が、彼女の中には確かにある。
恋愛ご法度のアイドルが、アイドル生命をかけてでも俺と付き合っている。
手をつなぎ、名前で呼び合い、二人で歩く。
その瞬間だけは、世界は幸せで溢れている。
俺が守らなければならない。
彼女の本名は、篠原華水。
夢の中で、ようやくその名前を聞くことができた。




