amsterdam xx5年6月26日
アムステルダムは、全住民の協力によって封鎖されていた。
ロックダウンだ。
住民たちは口をそろえて、「ざまぁみろ」と笑っている。
俺は、旅人らしいハードボイルドな女と行動を共にしていた。
二人の目的は、コーヒーショップへたどり着くことだった。
ロックダウン中でも持ち帰りはできるという情報は得ていた。
だが、どこへ向かってもバリケードが築かれ、本格的な封鎖でなかなか先へ進めない。
何度も道を変え、裏道を抜けようとした。
それでも最後は運河に行く手を阻まれ、完全な行き止まりになった。
俺たちは諦めてベンチに腰を下ろした。
一本巻いて火をつける。
彼女の分にも火を移し、そのまま手渡した。
二人でゆっくりと煙をくゆらせながら、しばらく休憩した。
やがて、酔っ払った若い男三人組がこちらへ近寄ってきた。
少し離れたところで立ち止まり、円陣を組んでコソコソと何かを話している。
すると、打ち上げ花火を俺たちに向けて撃ってきた。
俺が立ち上がるより早く、彼女は迷わず三人へ詰め寄った。
彼女を守ろうと、俺も立ち上がる。
その瞬間、三人組は一目散に逃げ出していった。
「俺って、そんなにイカツく見えるのか……」
俺は苦笑した。
騒ぎが収まると、俺たちは再び運河のほとりに腰を下ろした。
もう一本巻き、改めて火をつけた。
今度は、その一本を二人で回した。
俺は彼女の肩を抱き寄せ、ゆっくりと流れる運河を眺めていた。
ロックダウンで人っ子一人いないアムステルダムは、静寂の中で時間が止まっていた。
どうせならと、夜更けの静かな街を独り占めするように歩く。
ハードボイルドな女と二人だけのアムステルダムを楽しんでいた。
その最中、夢から覚めてしまった。
彼女の名前も聞いていない。
もう会えない。
久しぶりに、センチメンタルになった。




