第6話 10秒の約束
「...陽王ー!!」
図書室から教室へ俺は走る。
なんとしてでも、陽王と仲良くなりたい。
いや、まともに話してみたいんだと思う。
とりあえず走る!!
ーー「....?」
「はっ...!陽王!」
ーー「近づかないで」
「あ...そうでしたね」
自分のクラスである5組教室に入ると、陽王が驚いた顔でこちらをみた。
だが完全には近づけない。
またいつも通り、「近づかないで」が俺の心に刺さってしまった。
「じゃあこの距離でいいか...?」
ーー「.....もっと」
「...はい」
そして俺は言われるがまま教室の隅に移動した。
陽王と俺の席は対角線上になっているので、どちらとも席に座るだけで隅同士の関係となった。
ーー「.........。」
(また寝てるフリじゃん...!!そんな顔隠さなくてもいいのに...)
「...陽王?別に寝てるフリとかしなくても...」
ーー「...気安く呼ばないで」
「...ごめん。でも聞きたいことがあってな」
ーー「....なに」
「いや...なんでいっつも放課後さ...隅にいるのかなって思って」
ーー「...人の勝手でしょ」
「あぁ...まあそうなんだけど」
ーー「...私帰る」
「え!?...いやなんで!?」
ーー「別に...帰りたくなっただけ」
「えー...いや、待ってほしい!」
ーー「...用はもうないはずだけど」
「明日!...とりあえず明日また図書室で話さないか!?」
ーー「........」
(...頼む!!お前は...お前だけは!そのミステリアスな感じがたまんねぇんだよぉぉぁぁぁあ!!)
ーー「.......10秒...」
「....え?」
ーー「.......10秒だけ!それでいいでしょ....」
「...マジか!サンキュー陽王!」
そう許可を出した陽王は、無言で荷物を持って家に帰った。
10秒だけ、10秒だけでも許してもらえた。
俺にとって、この10秒は神のような時間だった。
1秒でも3秒でも、5秒でもなく10秒。
最高の気分で俺は家に帰ることができた。
明るくした部屋で俺はスマホをいじる。
(...また99件...みんな暇すぎだろ...)
またもグループラインが動いていた。
グループラインがこんなに動くクラスも珍しいのではないか。
だが帰った後のこの時間が、少しだけ俺の楽しみになっていた。
「今日はなんの話だっ...!?」
ポチッ
ーー「いや不審者かー...怖いな...」
ーー「今どこにいると思う?」
ーー「浅井川橋とか?」
ーー「あそこねー...確かに」
ーー「俺はあそこの無人公園かな...人の気配とかないから余計きてそうじゃね?」
ーー「うわそれあるわ!」
ーー「あそこのトイレ電気つかないから入れないんだよなー...」
(いやなんの話!?不審者!?...本当だったらやばいな...)
トーク画面には「不審者」が今どこにいるかの考察がされていた。
そこで、俺は初めてそこに参加してみた。
「不審者とは」
ーー「す、、涼男だ!!」
ーー「絶滅危惧種はラインでも絶滅危惧種だったあの涼男が今ここに!」
ーー「不審者ってなに?」
ーー「わかんない人も来たから改めて話そうぜ!」
ーー「こっからが夜だあぁぁ!!!!」
(はしゃぎすぎだろこいつら...不審者でそこまで盛り上がるの?普通怖がったりしないの?)
俺的にはめちゃくちゃ怖い。
チキって学校に行かなくなるとかではないが、
なんとしてでも不審者の情報を聞き出したい。
「不審者ってどこ情報なんだ?」
ーー「昨日のニュース!昨日まではもっと遠かったけど、もしかしたらここら辺にいるかもってなって」
「怖いな」
ーー「えーかわいいー!」
ーー「かわよ」
ーー「これが俺たちの涼男だ!お前らに取られてたまるかよ!」
(いや意味わかんねぇだけど!?さっさとその不審者について教えてくれよ!)
「服装とかなんかない?」
ーー「ないかな」
ーー「うん、そこまではわからないらしいよ!」
ーー「今俺たちで探しに行ってみる?」
ーー「それいいじゃん!!」
ーー「フォーー!!最高だぁぁぁぁ!!!」
ーー「夜はこっからだぁぁぁあ!!!」
ーー「いや行かないよ!?バカでしょ」
ーー「どうせなら全員でいく?」
ーー「賛っ成!!不審者捕まえてテレビのろうぜ!」
ーー「男子高校生5人が不審者を撃退。とかな!」
ーー「それめっちゃいいじゃん!いこー!!」
(いやよくねぇから!!頭大丈夫か!?逆に返り討ちにされると思うけど!?)
「いやいや!男子高校生5人が何者かに刺され死亡しましたとかいうニュースだわ!」
ーー「私もそうだよ!」
ーー「絶対にいかない!」
ーー「涼男くんしかまともな人いないの?」
ーー「えー....涼男ー!頼む!」
ーー「嫌なら俺たちだけで行っちゃうけど?」
「行ってろ」
ーー「冷たっ!」
ーー「冷めてぇぇ!!!」
ーー「物理的にも冷たいのに...!!」
(...陽王が行くとしたら...、ビビった顔見たいかも)
「...誰行くんだ」
ーー「行く気になったのか涼男!!」
ーー「これは沼るわ...」
パチッ
(うわ電源切れたぁ...最悪だ)
結構話していたのかもしれない。
電源が切れ、この先のメッセージのやり取りがわからなくなった。
ここで俺は迷う。
陽王が行くわけないと思うが、あいつは隅が好きなのでさっき言っていた無人公園とやらにいそうだ。
それを信じて行くか?それとも行かないか?
今の時刻はちょうど9時。
帰ってきてからまだ30分くらいしかたっていない。
休みたい気持ちもある。
そこで、俺は決めた。
「...行くかーー」
(絶対に生きて帰る...!!そして明日!陽王との約束を果たすんだ!!...ぶっちゃけこのやつ来てくれたらいいんだけど...)
そう願った俺は行くことを決意した。
集合場所がわからないことだけが不安だが、多分その無人公園あたりだろう。
「...念の為これ持ってくか」
机の引き出しから「ある物」を取り出し、服のポケットに入れた。
適当に着た服はパーカー系だ。
そして俺は無人公園に出向いた。
「うわ...怖っわ!!マジで人の気配ないじゃん」
ーー「あ!涼男ー!来てくれたのか!?」
「おお奇遇だな。あのあと電源切れて見れなかったんだ」
ーー「それでも来てくれるなんて...お前最高だよ!」
この無人公園前で待っていると、1人目が来た。
集合場所はやはりここだったらしい。
こいつの名前は「松宮陸翔。
俺の席の一つ後ろにいる者だ。
ガサガサッ!
「え!?」
ーー「もしかして...あそこにいるのか...!?」
「どうする?」
ーー「いくしかねぇよ!!」
突如ガサガサと音がした方向に俺たちは走った。
この無人公園の奥、木や草でいっぱいの場所。
ーーーーー(頼むー...絶対に出てくんなよ!)
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