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第5話 二つ目の巣



ジュー


(....あれ..、この音って確か...)



 誰もいなくなり、ただ夜の風が俺の頬を撫でる。

 陽王は何を求めているのか、俺が助けたことが間違いだったのだろうか。


 ただ、涙は流れていなかった。

 扉から陽王が出て行ったあと、どこからかまたあの変な音がした。


 そして、俺も自宅に帰ることにした。

 ベッドに入った俺は助けることができた安堵感と、どこか謎の罪悪感を感じてしまった。


 あの日から一週間が過ぎた。

 特に放課後、陽王と話すことはなかった。



「...はぁー..、朝かー...」


ーー「最近ため息ばっかりねー...」


「行き詰まってるんだよ」


ーー「勉強に?」


「....やっぱいいや」


ーー「恋愛に?」


「......いやそういうのではないんだけど...」


ーー「何かはわからないけど...!人は話すだけで救われるものよ?」


「どういうこと...?」


ーー「まあ頑張りなさいって意味」


「あー......わかった!おっけー!」



 一週間後の朝となった俺は、母の助言により陽王にまた話しかけることを決意した。


 これはなんとなくだ。

 助けたのに俺をフル無視した罰?とかかな。


 そして17時前になった俺は学校に着き、1時間目の授業を始めた。


 1時間目は論理国語。

 担当の先生がいなかったので、今日は自習だ。



「ふぁー...ねっむいしだりー」


ーー「食堂行って何か食べたんですか?」


「いや?...なんか緊張とか感じるとあくびが出やすいらしいよ」


ーー「緊張...?何にですか?」


「...確かに...俺緊張してないよな...」


ーー「無意識ってことですか」


「そうだな」



 俺の隣の席にいる、未来が話しかけてきた。

 俺は何に緊張しているのだろう。


 そもそも、自習の時間っていうのは誰も真面目にやらなくない?

 という考えを「あいつ」がぶち壊した。



(陽王...!?あいつ真面目タイプなのか!?)



ーー「どこ見てんですか?」


「あ、い...いやぁ?外綺麗だなって思っただけだよ」


ーー「外...暗くて何も見えないですけど?」


「...見えるはずもないだろう。その闇の中に、あらゆる芸術が隠されていることを!」


ーー「えー...」


「...嘘だよ。」


ーー「氷結の王って呼ばれてる人がこれですか?」


「うるせぇな!...別に、ただ言ってみただけだ」


ーー「ふーん...」



 何気ない一日だ。

 このなんともいえない暗さが好きだ。


 けどみんなは暑い暑いと、うちわなどを使ってこの時間を凌いでいる。


 そして、時は過ぎ放課後。

 俺は思い切って、陽王が必ず残るこの教室の隅に身を縮こませた。



(...やっぱいるんだよなー...なんて話しかけよう。前は大丈夫だった?...いやこれだとこうなるよな...」



「まあ大丈夫だった?」


ーー「大丈夫じゃない。」


「あ...そ、そうだよな」


ーー「来ないで」


「......あ」


ーー「近づかないで」


「....はい」



(これが失敗例だ!!絶対にこんなことにはさせまい!)



 そして、俺はようやく立ち上がり話しかけようとした。

 すると、俺の存在に今更気付いたのかびっくりして初めて顔を上げた。



「....あ、えと...陽王驚かせたな...」


ーー「.......別に」


「....じゃあここからでいいからちょっと話さないか....っておおい!!」


ーー「...ついてこないで」


「えぇ...そんなことある?」



 俺が話を進めようとすると、陽王は教室から出て行ってしまった。

 どこに行ったのかは、大体予想がつく。


 怒られるが、俺は今日絶対に話をすると決めたんだ


 数十分後。

 俺はあの「図書室」に向かった。



(やっぱり...ここが陽王の第二の巣ってわけか!)



ーー「..........。」



(気づいてない...何読んでるんだ?)



 図書室に入ると、陽王は前と同じ隅にいた。

 そして、前とは別の本を机の上に広げて読んでいる



(そーっと...そーっとだ...俺は今スパイとしてこの任務に降り立っている者だ...)



ーー「何やってるんですか?」


「はっ!?せっかく足音立てずに来たのに!」


ーー「え...変質者かなんかですか?」


「ちっげぇわ!!待てよ、合ってるのか?いややっぱ違う!」



 カウンターの、前お世話になった人に声を上げられてバレてしまった。

 こうして、俺のスパイ任務は失敗に終わった。


 陽王の方を見ると、目があった。



ーー「.....え?」


「あ...あぁいやこれは違くてですね!」


ーー「来ないで」

「来ないで」


ーー「!?」


「ふっふっふー...君の第一声は知ってたぜ?」


ーー「....なんで来たの」


「まあ...それはなんていうか、元気してるかなって思ってさ...」


ーー「...元気よ」


「いじめ...とかはもうないか?」


ーー「....うん」


「よかったぁ...ほんとによかった...。...あれ、てかその本...」



 この図書室の隅にいる陽王。

 カウンターという遠目の距離から俺たちは話す。


 そして、すこーーしだけ近づき陽王が読んでいた本の題名をみた。


 これは運命というやつか、俺が前に返した本を読んでいた。



ーー「...なに」


「その本...前に俺が返したやつだ!」


ーー「え...!?あ...そうなんだ」


「そうそう!!並木に気になる人ができたけど彼女は人を拒絶している...」



(あれ?...なんか俺とこいつみたいだ...だって唯一俺に近づいてこない存在だし...気になるは気になるよな)



ーー「...まだそこまで読んでないんだけど」


「え...ほんとにごめん。ネタバレしちゃったわ」


ーー「....いいよ。けどその代わりどっかいって」


「了解っす...」



(俺がそんな簡単に帰ると思うか!?ふふふ、侮ったな!帰れとは言われていない。この図書室で離れればいいだけだ)



 どっか行けと言われたが、帰る気は尚更なくなった

 帰れとは言われてない。


 だから俺は、この図書室内のテーブルと椅子がある場所に本を本棚から取り出し、座った。



「いつしかの花...どういう本なんだ...?」


ーー「あ、それ!!最近入荷した本の一つです!」


「え、ああそうなんですか?」


ーー「はい!まさか1人目があなただったなんて!」



 カウンター担当の、さっき俺の計画を邪魔した先輩らしき人にそう言われた。


 カウンターから近い席だというのもあったのだろう



(...この図書室毎回...なんか心地いいんだよな...)



ーー「いやーそれにしても暑いですねー。ここだけは教室ほどじゃないのが不思議ですけど」


「...多分それ俺です」


ーー「え?」


「静かにしてくださいよ...?」


ーー「...うん」


「俺...氷結の王って呼ばれてる世界に1人だけの、あの絶滅危惧種なんです」


ーー「えぇぇぇぇぇぁ!?!?」


「いやいや静かにしてくださいって!」


ーー「あぁごめん...でもそれ本当?触ってみてもいい?」


「いや実は俺に触れると...低音火傷するんで!」


「火傷じゃないんだ...あ、確かに冷たいってことだもんね!」


「そういうわけです...凍傷って言い方もあるけど俺的にはこっちの方がお気にです。」


ーー「へぇーすごいね!確かに君の隣冷たい!」


「あぁいや...!そんな近づかないでください...」


ーー「あー...ごめん!」


「はい...恥ずいんで...」



(...は!?陽王なんで帰る!?ちょっと待ってくれぇ...)



 座って本を読もうとすれば先輩らしきこの人に邪魔されるわ、ちょっとは仲良くなれるかと期待していた陽王は帰って行ってしまった。


 あの本は借りないらしい。



(...もしかして...あの本気に入らなかった?ネタバレしちゃったからか!?だとしたら恥っず!!何勝手にネタバレしてんだよ俺...!!)



「せ、先輩...俺先帰るんで!」


ーー「え...?急にどうしたの!?」


「やっべ!これは急用だ!!急がないと!」


ーー「...演技にしか見えないけど...?」


「あぁいや違くてですね!!あ、じゃあこの本借りるんでまたきます!!」


ーー「わかった...。絶対返してね!」


「了解致しました!」



 そして帰り際に本を借りた俺は、陽王の元に走る。

 正直いうが、これはストーカーだ。


 けどなぜか話したかった。



ーーーーー(まだ教室いてくれよ!!)

 

















 


第5話ありがとうございました!

ブクマや感想評価などいろいろよろしくお願いします!

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