第5階 まずやられないようにして下さい!
「5階層に着いたな」
ノンビリが辺りを見渡す。
ノンビリ達は5階層に到着していた。
「こんなにのんびりダンジョン攻略しててもいいのかね。妹を助けなくちゃいけないのに」
キマジメがため息をついた。
「え?妹?何ですかそれは?」
シトヤカがキマジメに聞いた。
「あぁ、ノンビリの妹はこのダンジョンで行方不明になっちまってよ。だから、今こうしてダンジョン攻略しているんだよ」
「へぇ、そうなんですか」
キマジメはちらっとノンビリの方を見る。
「シトヤカさん、なんで俺の方を見ているの?」
ノンビリか言った。
「いや、ノンビリさんも見かけによらずに苦労なさっているんだなぁと思いまして」
シトヤカは遠い目をした。
「え?な、何?」
ノンビリはシトヤカに聞いた。
「だって、妹さんを助けるためにこのダンジョンに挑んでいるんでしょう?かなり大変じゃないかって」
「うーん…、大変っていうか、楽しいの方が勝ってるかな」
ノンビリが言った。
「…楽しいって?」
「うちの妹はそう簡単にやられちゃうような奴じゃないからさ。焦らなくても大丈夫なんじゃないかなって」
シトヤカは、にっこりと笑った。
「信頼しているんですね」
「まぁ、そうだね」
ノンビリも笑った。
「おい、2人とも!敵が来たぞ!」
キマジメが2人に声をかける。
奥の方から、ゴブリンの群れがこちらに向かってきていた。
「かなり多いよ…!」
ノンビリも驚く程にゴブリンの群れは大量に連なっていた。
「これはかなり多いぞ…!」
キマジメは剣を構えた。
「キマジメ、もしやられちゃっても回復薬はたくさんあるから気にせずいけ!」
「まずやられないようにして下さい!」
シトヤカが注意をする。
「そ、そうだね」
ノンビリが苦笑いをする。
「おい、加勢してくれ!」
キマジメが2人に叫ぶ。
「あ、ゴメン」
ノンビリは急いでゴブリンの群れの元に向かう。
「おらぁ!」
ノンビリとキマジメは剣を振り回してゴブリン達を倒していく。
「回復はまかせて下さい」
シトヤカは2人の回復に集中している。
「これで全部かな」
キマジメが額に流れる汗を拭う。
「…結構多かったな」
ノンビリが息を吐く。
「私も少しばかり疲れました・・・」
シトヤカはその場に座りこむ。
「薬使おう」
キマジメが回復薬の入った袋に手を伸ばすと、
「ダメですよ!大事に使わないとすぐになくなりますよ!」
とシトヤカの激が飛ぶ。
「今がその使い時じゃない?」
キマジメはなんとも言えない顔をした。
「いや、次はいつ買えるか分からないんですよ。すごい強いモンスターに会った時に回復薬がない、なんてことになったらどうするんですか?そのために計画的に使わなくちゃダメなんですよ」
「き、厳しいな…」
キマジメがちょっとひるむ。
「…昔、似たようなことがあったんです」
「突然語り始めたぞ」
「話させてあげなよ。せっかくの機会なんだから」
ノンビリがキマジメを促す。
「私の兄も冒険者だったので、よくダンジョンに潜っていたんです。それで『すぐ戻れるだろ』って装備も何もしてこなかったんです。アイテムも最小限の物しか持ってこなくて」
「そりゃ、ダンジョンナメてるな」
「『山をナメてる』みたいに言うな」
キマジメがつっこむ。
「そうしたら案の定強い敵が現れまして、最小限のアイテムしか持っていなくて回復が追いつかなくて、結局やられちゃったんです」
シトヤカは伏し目がちに言った。
「もしかしてお兄さんはもう…」
「あ、今も生きていますよ」
シトヤカが顔を上げた。
「あ、そうなのか…」
キマジメが慌てる。
「その時に『アイテムは多めに持っておこう』と思ったんです。途中で困らないように」
「いや、当たり前だけどね・・・」
キマジメが言った。
「確かにアイテムは無駄遣いしちゃダメだな・・・」
ノンビリは噛み締めるように言った。
「ここに学んでいるヤツがいたよ…」
キマジメが言った。
「そうなんです。だからむやみやたらにアイテムを使っちゃダメなんですよ」
シトヤカはキマジメに諭すように言った。
「いや、それは分かっているけど…」
キマジメが言うと、
「あ、敵だ!」
ノンビリが指さした。
またゴブリンの群れがこっちにやってきた。
「また来たのかよ!」
キマジメとシトヤカは戦闘態勢に入った。
「ノンビリ、頼むぞ!」
キマジメがノンビリに声をかける。
「やれやれ、やるしかないようだね」
ノンビリは重い腰をあげた。
「よし、行くぞ!」
キマジメのかけ声で、3人はゴブリンの群れに立ち向かっていった。
「おらぁ!」
キマジメは武器を振り回して、ゴブリンを退治していく。
「よし、俺も」
ノンビリも腰から剣を出すと、ゴブリンに切りかかった。
「…スゴい」
シトヤカは本来の役目の回復をすっかり忘れ、ノンビリ達の戦闘に見入っていた。
「…やっと全部倒したな」
キマジメは額に流れる汗を手で拭きながら言った。
「今のはちょっと手強かったね」
ノンビリは剣を戻しながら言った。
「…スゴいですね。回復する暇なんでありません」
シトヤカは息が上がっている。
「…シトヤカさん」
ノンビリはシトヤカに声をかける。
「これからはアイテムを無駄遣いしないよう心がけるから安心して」
シトヤカはしばらく黙った後、
「いや、当たり前ですよ!アイテム代だって馬鹿にならないんですからね!」
とノンビリをたしなめた。
「はい、気をつけます…」
ノンビリは少ししゅんとしながら後をついていった。




