第6階 いや、俺は絶望してる訳じゃないから…
「そういえばずっと気になっていたんですけど…」
6階層に到達した時、シトヤカが言った。
「お2人はどんな魔法が使えるんですか?」
「え?俺たち?」
キマジメが言った。
キマジメは一応世間が魔法と言われている魔法は習得している。
たが、完全に習得しているとは言いがたく、時々詠唱に失敗したりする。
だが、そんな事をシトヤカに言っても仕方ないので、
「一応、基本的な魔法を唱えられるよ」
と見栄を張った。
「へぇ。キマジメさんってすごいんですね」
シトヤカの顔が綻ぶ。
キマジメはなぜかいたたまれない気持ちになった。
「ノンビリさんは何か魔法が使えるんですか?」
シトヤカはノンビリの方に話を振った。
キマジメはなぜかホッと胸を胸を撫で下ろした。
「俺は…、そんなに魔法は使えないんだよ」
ノンビリは苦笑いをしながら頭をかいた。
「俺はとてもじゃないけど、キマジメのように真面目じゃないし、飽きっぽいんだよ。だからその代わりに剣術とか武術を学んだんだよ」
「そういえば、剣術とかはすぐに習得できてたな」
キマジメが言う。
「うん、なぜか魔法だけは習得できなかったけど、剣術や武術は身についたんだよね」
ノンビリが笑う。
「だ、大丈夫ですよ!」
シトヤカがノンビリの肩に手を置いた。
「え?シトヤカさん、どうしたの?」
ノンビリがシトヤカを見る。
「ノンビリさんだって、努力すればきっと魔法が使えるようになりますよ!」
「いや、俺は絶望してる訳じゃないから…」
ノンビリが否定した。
「え、そ、そうなんですか?ご、ごめんなさい」
シトヤカが慌てて謝る。
「いいんだよ、ダンジョンに挑む人は大体が魔法が使える人だからね。魔法の方が楽にモンスターを倒せるし楽だからね…」
ノンビリが遠い目をしている。
「でも、うちの親父はどこからか剣を買ってきてね。『今日からこれがお前の魔法だ』なんて言っちゃって」
ノンビリが笑う。
「へぇ、そうなんですか」
「そこから俺は毎日剣を1000回ぐらい素振りしていたんだ。その素振りを繰り返していたら、こんなに振れるようになったんだ」
「そういえば、いつも剣を振ってたよな」
キマジメが言った。
「うん、それだけは毎日欠かさずにやってたね」
ノンビリが答える。
「なんかノンビリさんっていつもマイペースですけど、ちゃんと冒険者としての自覚は持っていたんですね」
「シトヤカさん、今までは自覚を持っていないと思っていたってこと?」
ノンビリがからかう。
「あ、え、いや、そんなことはないんですけど…」
シトヤカはかなり真面目なので、こういう冗談にもすぐに間に受けてしまう。
「シトヤカさん、ノンビリはからかってるだけだから…」
キマジメはシトヤカに忠告する。
「…え?あ、はい…」
シトヤカは何とか我に返った。
「それにしても、ここは静かだな…」
「ホントだ。モンスターも出ないよ」
ノンビリが辺りを見回す。
「でも、モンスターが出ないのはいいことじゃないか?この階は楽にクリア…」
「あ、モンスターだ」
ノンビリが奥の方を指さした。
「楽にクリア出来そうにないな」
キマジメが肩を落とす。
ノンビリが指さした方には、ゴブリンが5体ぐらい待ち構えていた。
中には、棍棒を持っている。
「…やるしかねぇな」
「せっかくゆっくりできると思ったんだけどな…」
ノンビリが残念そうな顔をする。
「……はぁっ!」
キマジメは魔法を唱えた。
ゴブリンはあっという間に倒れる。
「キマジメさんすごい・・・。」
シトヤカはキマジメの魔法に釘付けになっている。
「キマジメ、今日もキレッキレだね」
ノンビリが笑う。
「シトヤカさん、俺の鍛え抜かれた技も堪能していってよね!」
ノンビリがジャンプした。
「でぇあああ!」
ノンビリはジャンプした勢いのまま、ゴブリンに斬りかかった。
ゴブリンはそのまま消えていった。
「…本当に普段のノンビリさんからは想像つきませんね」
シトヤカが言った。
「ホントにそうだよな。でも、あいつは日々の鍛錬だけは欠かしたことはなかったんだ」
キマジメが言う。
「え、そうなんですか?」
「あぁ、妹のためでもあるんだけどな」
「…妹さんの?」
シトヤカがそう言うと、キマジメはノンビリの元に駆け寄った。
シトヤカはノンビリとキマジメの方を見た。
魔法は使えないが、それをカバーする剣術を身につけたノンビリ。
魔法を使いこなし、友人のサポートをするキマジメ。
…いいパーティーに入ったな。
シトヤカはニコッと微笑んだ。
「…あの女はどこに行った?」
ダンジョンのとある所に、1組のパーティーが探索していた。
「…シトヤカですか?」
大柄の鎧を身にまとった男が聞いた。
「…あぁ、シトヤカか?知らないよ」
リーダーらしい人物は、振り返ることも無く言った。
「あいつはどんくさいからな。一応ヒーラーを頼んだが、いつもワンテンポ遅れるんだ」
「確かにねぇ。私の方がまだパーティーに貢献出来てるからねぇ」
金髪のウェーブヘアーの女性が言った。
「どっちだっていいさ。どっちみちあのまま冒険を続けているとは到底思えないよ」
リーダーは手を腕で組み、ゆっくりと歩き出した。
「よし、次の階に進むよ」
ノンビリがそう言うと、
「おう」
「はい」
と2人は返事をし、ノンビリの後をついていった。




