第25階 俺たち最近モンスターと戦っていない気がするんだけど
「そういえばさ、ノンビリくんって何でこのダンジョンを攻略しているの?」
ウットリがノンビリに聞く。
「あ、あのですね、さらわれてしまった妹を救うためにこのダンジョンに挑んでいるんです」
「え!それは大変ね」
ウットリは口に手を当てた。
「はい。今の所手がかりがないんですよ」
ノンビリが頭をかく。
「そう、それは残念ね」
ウットリは残念そうな顔をした。
「その割には、結構のんびりしてるよな」
レイセイがニヤニヤしながら言った。
「そうだよ。時間が無いって言ってんのに…」
キマジメが頭を抱える。
「まぁまぁ、それがノンビリくんのいい所だから」
ウットリがキマジメをなだめる。
「なんで姉ちゃんがなだめてるんだよ…」
キマジメがげんなりする。
「それにしてもここはモンスターが出ないですね…」
シトヤカが辺りを見回しながら言った。
「というか、俺たち最近モンスターと戦っていない気がするんだけど…」
ノンビリが頭をかきながら言った。
「おい、そんな大人の事情みたいなことを言うなよ」
キマジメが言った。
「まぁ、たまたまモンスターの出ない所を歩いているだけじゃない?」
レイセイが歩き出す。
すると、何かにぶつかる。
「あ、すいません」
レイセイが謝るが、返事がない。
かわりに唸り声みたいな声が聞こえる。
「うわ、かなり怒ってる…。ぶつかっただけなのに…」
レイセイが顔を見上げた。
それは、オオカミ男だった。
「うわ、魔物だ!」
レイセイは名前負けするぐらいのオーバーリアクションで後ずさりした。
「久しぶりの魔物だ!なんか勇者っぽいな」
「勇者だろ」
キマジメがツッコむ。
「よし、行くぞ!」
ノンビリは剣を構え、オオカミ男に向かっていく。
「ウォーッ!」
しかし、オオカミ男はその剣を跳ね返した。
「くそ、剣では太刀打ちできないのか…」
ノンビリは悔しそうな顔をする。
「だったら、私の魔法の出番ね」
ウットリが魔法の杖みたいな物を取り出した。
「お、なんかスゴそう」
レイセイが言う。
「行くわよ!」
ウットリは杖をオオカミ男に向けた。
すると、杖から光が出てきた。
「お。これはいけるかもしれない!」
ノンビリは期待の眼差しを向けている。
やがて光は光線になり、オオカミ男の前に飛んでいった。
「これは決まりましたね!」
シトヤカがいつになく興奮している。
しかし、光線はオオカミ男のすぐ横をかすめていった。
「あれ?なんか外したけど…」
ノンビリが信じられないといった顔をしている。
「あれ…、いけると思ったんだけど…」
ウットリも目を丸くしている。
「も、もう1回!」
ウットリはもう一度杖をオオカミ男に向けた。
「なんか…、大丈夫かな…」
ノンビリは急に不安になってきた。
「ノンビリくん、大丈夫よさ。今度は外さないから」
ウットリは杖に魔力を込め始めた。
杖の先がまた光り始めた。
「また杖が光り始めました!」
シトヤカが言った。
「今度こそはいけそうだ!」
レイセイも興奮気味だ。
「行け!」
杖から光線が出てきた。
「今度こそ!」
ウットリが言った。
しかし、光線はまたオオカミ男のそばをかすめていった。
「あれ、おかしいわね…」
ウットリは苦笑いをしながら杖を見る。
もしかして…、この人もポンコツなのか?
ノンビリの額に汗がにじむ。
「ウットリさん、ここは僕に任せてください」
たまらずノンビリは剣を構えた。
「え?ノンビリくん、大丈夫?」
ウットリが心配する。
あなたよりは大丈夫ですよ。
ノンビリはオオカミ男に向かって、剣を構えたまま突進していく。
オオカミ男は雄叫びをあげてノンビリに向かっていく。
「うらぁ!」
ノンビリも雄叫びをあげながら、剣をオオカミ男に振るう。
オオカミ男は雄叫びをあげながら倒れる。
「…ふぅ、ようやく倒したな」
ノンビリは額の汗をぬぐう。
「ノンビリくん、スゴいわね!」
ウットリが駆け寄ってくる。
「さすが勇者ね!私もできることならお役にたちたかったけど、それどころじゃなかったものね」
「信じられないぐらい下手だったもんな」
キマジメが言う。
「キマジメ、そんなこと言わないの!」
ウットリはキマジメの肩を叩く。
「でも、威力は相当ありそうだったな。あれが当たるようになったら相当な戦力になるぞ」
レイセイが言う。
確かに、当たりはしなかったものの魔力は相当なものだった。
あの魔力が相手にぶつかれば、相当な威力になるに違いない。
「じゃあ疲れたことですし、ご飯にしましょうか」
シトヤカが笑顔で言う。
「次は敵に魔法が当たるようにしないとね」
ウットリは明るく言う。
「なんでそんなに明るく言えるのかな…」
キマジメが頭を抱える。
「き、緊張していたんですよね?初めての現場ですし…」
シトヤカは一生懸命フォローしようとしているが、言葉が出てこない。
「シトヤカさん、フォローするだけ辛くなってくるから」
キマジメがシトヤカを止める。
「俺、今日は疲れたよ。ゆっくり寝るよ」
ノンビリはあくびをした。
「…そうね、私も今日は疲れたわ」
ウットリも苦笑いをした。
他のメンバーが寝静まった頃、キマジメはずっと考えていた。
「……そうした方がいいのかな」
キマジメは静かに呟いた。




