第26階 …少し話さない?
「ついに26階か…」
ノンビリが階段を登りきった時に言った。
「ついにここまできたか…」
ノンビリは汗を拭いながら言った。
「『やっとこ子にきた』みたいな感じ出してるけど、まだ序盤だぞ…」
キマジメがツッコむ。
「いいじゃねぇか。俺にはとっては大きな一歩なんだよ」
「宇宙飛行士みたいに言うな」
「お前ら漫才師みたいだな」
レイセイがクスクス笑う。
「今日はここでテントを張りましょうか」
シトヤカが言うと、
「野営だ野営!」
とノンビリが手を叩いて喜んだ。
「キャンプな…」
キマジメはまたツッコむ。
その夜。
シトヤカは夜中に目が覚めた。
なぜか眠れなかった。
ちょっと外に出てみよう。
シトヤカはテントの中から外に出た。
すると、そこにはウットリがいた。
ウットリは月明かりに照らされて、昼間の感じとは少し違っていた。
「あら、シトヤカちゃん、起きてきたの?」
ウットリはシトヤカに気がついた。
「は、はい、なんか眠れなくて…」
シトヤカはウットリのそばに来た。
「ウットリさんも眠れないのですか?」
シトヤカも聞く。
「…いや、私はこういう時間が好きなのよ。みんなが寝静まったこの何とも言えない時間が」
ウットリが窓に映る星空を見ながら言った。
「…少し話さない?」
「…あ、はい…」
シトヤカはウットリの隣に座る。
「シトヤカちゃんはなんで冒険者になったの?」
ウットリが聞く。
「私の父は冒険者だったんです」
シトヤカが口を開く。
「毎回ダンジョンに行っては、得意気な顔をして帰ってくる父がとてもカッコよくて…。そんな父のような冒険者になりたいと思ったんです」
「へぇ、そうなんだ」
「自慢の父でした。父がダンジョンから帰ってくると、周りから賛辞の声が送られるんです。それが子供ながらにスゴく嬉しくて」
「じゃあ、そのお父さんの意志を継いで…」
「あの…、父はまだ生きています」
「あ、ごめんなさい…」
ウットリは口を抑える。
「じゃあ、冒険者になったのもお父様の影響なの?」
ウットリが慌てて聞く。
「そうです。私も父みたいに旅をしてみたいと思ったんです」
シトヤカがニコッと笑った。
「…とても素敵なお父様だったのね」
ウットリもニコッと笑った。
「ウットリさんはなぜ旅に出たのですか?」
今度はシトヤカが聞く。
「家はね、シトヤカちゃんみたく両親が勇者って訳じゃなかったの」
「そうなんですか」
「キマジメも勇者を目指している感じじゃなくてね、いつもノンビリくんと遊んでいたのよ」
ウットリは昔を思い出すように話す。
「ある時、1人の勇者が攻略することは不可能だと言われていたダンジョンを全部攻略したとニュースでやっていたの。それをテレビで観ていたキマジメは目をキラキラ輝かせて」
「はい」
「それでノンビリくんを誘って、勇者になるための訓練を受け始めたのよ。ノンビリくんは嫌がっていたみたいだけどね」
ウットリが笑う。
「…なんか想像できる気がします」
「でしょ?」
2人で一斉に笑う。
「それで、ウットリさんはなぜ魔女になったんてすか?」
ウットリが聞く。
「それはね、キマジメを助けたかったの 」
ウットリが言った。
「キマジメは確かに強いけど、融通が聞かないことがあるでしょ?」
「うーん…、確かに」
思い当たる節があるのか、シトヤカが同意した。
「だから、キマジメと一緒にパーティーを組もうとしたのよ。キマジメだって、お姉ちゃんが来たいた方が心強いでしょ?」
「ま、まぁ、そうですね」
「だから、弟子入りしてしっかり技術を磨いて、魔法の面からキマジメを支えようと思ったのよ」
「へぇ」
シトヤカは相槌を打つ。
「でも、キマジメったら『お姉ちゃんとはパーティー組まない』って言って組んでくれないの。ヒドくない?」
ウットリは頬を膨らませる。
「ま、まぁそうですね…」
シトヤカは苦笑いをする。
「仕方ないから、私は他のパーティーに入ってダンジョンを回っていたんだけどね。やっぱりキマジメと回りたくてパーティーを抜けてきたのよ」
「どれだけ弟さんが好きなんですか…」
シトヤカがツッコむ。
「そうして色んなダンジョンを探していたら、あなた達と出会ったわけ」
「スゴい嬉しそうですね」
「そりゃ嬉しかったわよ。やっとキマジメに会えたんだもん。しかもノンビリくんまで…」
ウットリは口元が緩みっぱなしである。
「ホントに好きなんですね」
「大好きよ。普段は素っ気ない感じもあるけど、とても優しい子なんだから」
ウットリが言った。
「それは私も感じています。キマジメさんってかなり優しいですよね」
シトヤカが笑う。
「…やっぱり変わってないのね」
ウットリも笑う。
「…私たちもそろそろ寝ましょうか」
「はい」
シトヤカとウットリは眠りについた。
「さて、出発するか」
次の日の朝、ノンビリは出発することにした。
シトヤカはキマジメの方を見る。
「シトヤカさん、どうかした?」
キマジメはシトヤカの方を見た。
「…いや、なんでもないです」
シトヤカが笑顔をみせた。
ウットリはその様子を見て、笑顔を見せた。
「どうしたの?早く行くよ!」
ノンビリが声をかける。
「今行くわ!」
ウットリ達は急いでノンビリの方へ向かって走り出した。




