第23階 なんか鼻の下伸びていませんか?
「23階に着いた…」
ノンビリ達は23階層にたどり着いた。
「まだ23階か…。先は長いな…」
キマジメが汗をぬぐう。
「ちょっとここで休憩しよう」
ノンビリは腰を下ろした。
「お前はいつも休憩してるじゃねぇか…」
キマジメが呆れた様子で言う。
「俺もここで休憩しようかな」
レイセイも腰を下ろす。
「いや、お前も休憩するのかよ」
キマジメがツッコむ。
「じゃあ、私も…」
シトヤカも腰を下ろす。
「いや、シトヤカさんまで?」
キマジメは二度見した。
「いや、さすがに冗談ですよ」
シトヤカが笑って立ち上がった。
「シトヤカさんが言うと、冗談に聞こえないんだよ…」
キマジメはため息をついた。
「さて、みんながここで休むんなら、俺はここを散歩してこようかな」
キマジメはそう言うと、奥へと歩いていった。
「聞こえるように言ったね」
ノンビリが言った。
「確かにな」
レイセイがニヤリと笑う。
「あの…」
聞き慣れない声がした。
とても綺麗で、柔らかな声だった。
「はい、なんでしょうか?」
ノンビリは声のする方を向いた。
声の主は、腰まで伸ばした少し茶色の髪に、少し大きめの帽子を被り、魔女のローブのようなものを身にまとっている。
そのローブにはスリットが入っていて、脚が少し見えている。
この人、魔女だな。
ノンビリは直感的にそう思った。
しかし、綺麗な人だな。
ノンビリは女性の顔を見る。
顔立ちが整ったまさに正統派美人といったところか。
「ノンビリさん、なんか鼻の下伸びていませんか?」
シトヤカがノンビリに言う。
「い、いや、そんなことないよ」
ノンビリは慌てて手を横に振った。
「すいません。それでご用件はなんでしょうか?」
ノンビリは女性の方に向き直った。
「ちょっと教えてほしいことがあるんですけど…」
女性はためらいがちに話した。
「教えてほしいこと?」
ノンビリが聞いた。
「ここら辺に『ノンビリ』っていう冒険者がいると聞いたんだけど、どこにいるんですか?」
ノンビリはドキッとした。
まさか自分のことをこんな美人が探して尋ねてくるなんて。
まいったな。
「あの…、その『ノンビリ』っていうのは…… 」
ノンビリがためらいがちに切り出した。
「何ですか?」
女性がまじまじとノンビリの顔を見る。
「…僕、なんですけど…」
ノンビリは自分の正体を明かした後、横目でその女性の顔を見た。
「あ、あなたが…?」
女性は驚きと困惑が入り交じったような顔をしている。
そりゃ信じられないよな。
「そう!あなたが!」
女性の顔が急に明るくなった。
「私、ウットリっていうの!魔女なんだけど、あなたの噂を聞きつけて仲間になりたいと思ってここまでやってきたの!」
「なんかいきなり距離詰めてきたな」
レイセイが言う。
「なんか同じ人だとは思えませんね」
シトヤカが言った。
「ぼ、僕の噂って…?」
ウットリが積極的なせいか、ノンビリは少し押され気味だ。
「なんでもさらわれた妹さんを救うために、幼なじみと一緒にこのダンジョンの攻略に挑んでいるとか」
「え?なんで知ってるんですか?」
ノンビリは驚いた様子でウットリに聞く。
「実は私、噂好きで人の噂とかゴシップとか大好きなの」
ウットリはこれ以上ない程の笑顔になった。
「そんな満面の笑みで言われても…」
ノンビリは本格的に困ってしまった。
「おい、まだそこにいるのか?」
キマジメが帰ってきた。
「あら、あなたもいたの?」
ウットリはキマジメに話しかける。
「お、おい!何でこんなところにいるんだよ!」
なぜかキマジメはウットリに向かってキレているかのような態度を見せた。
「おいキマジメ、初対面の情報に向かってなにキレてんだよ」
「いや、初対面っていうか…」
キマジメはそこで口ごもり、
「俺の姉ちゃんだよ…」
と言った。
「は?」
「姉ちゃん?」
一同は信じられないといった感じでキマジメを見ている。
「ちょっとキマジメ、みんなの前でバラさないでよ」
ウットリは少し頬を赤らめてキマジメに注意した。
「改めて自己紹介します。私は魔女のウットリ。キマジメの姉です」
ウットリは改めて自己紹介した。
「…俺は幼なじみの姉ちゃんにドキドキしたのか…」
ノンビリはなぜか言い知れぬ罪悪感に襲われた。
「ノンビリくんとキマジメがダンジョンに入ったっていう聞いたからなんだか面白そうだと思ってついてきたの。そしたら見失っちゃって…」
「そんなに俺達早く進んでねぇよ」
キマジメが姉にツッコむ。
「早いよ。私が怪談上がる頃にはもう3段ぐらい上がっているでしょ~?」
「それは姉ちゃんが方向音痴なだけだろ」
「ちょ、本当のこと言わないでよ!」
キマジメとウットリは喧嘩寸前穏花やり取りを繰り広げている。
「まさか、兄弟とは思いませんでした」
シトヤカが言う。
「キマジメにあんな綺麗な姉ちゃんいたんだな」
レイセイが口元を緩ませながら言った。
「レイセイ、お前デレデレしすぎ」
ノンビリがボソッと言った。
「な、なんでそんなことわかるんだよ!」
レイセイが反論する。
「ねぇ、私も旅についていっていいかしら?」
ウットリが一同に呼びかける。
「ちょ、姉ちゃん、何勝手なこと…」
キマジメは引き止める。
「私はいいですよ。キマジメさんのお姉さんなら悪い人じゃないでしょうから」
シトヤカは二つ返事で了承した。
「俺もいいよ」
レイセイも了承した。
「ノンビリはどうなんだ?」
キマジメはノンビリに問いかける。
「俺もいいよ」
ノンビリも了承した。
「決まりね。それじゃ、キマジメ共々これからよろしくお願いします」
ウットリが頭を下げると、拍手が沸き起こった。
また苦労しそうだな…。
キマジメはそっとお腹をさすった。




