必要としてくれるなら
「キス必須じゃないですから! その顔やめてください!」
「おお、そうなのですか」
「でもキスで効果があるんですよね?」
「ありますけど……でもそもそも、それで根本的解決になるとは」
「ま、それもそうじゃのう」
笑うのをやめたシロナが、周囲を見回しながらそう言い放つ。
「この周囲にまき散らされとるのは、地を蝕む毒じゃ。一時的に耐性を得て毒を排除したところで、どうにもなるまい」
「しかし、このままでは……」
「ま、何も出来ないとは言うとらん。レイドよ、お主の真価は毒耐性ではあるまい?」
「……【ドロップ】のことか? でも、何を……あっ」
「倒すべきモノは、そこら中にあるじゃろ?」
……毒に侵された草。試しにその1つをむしってみる。
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
「これが……毒消しの粉?」
地面に落ちた袋を開けてみると、何やらキラキラした粉が入っているのが見えた。
「おお、これは……」
「なんて奇麗な魔力……これなら、もしかして」
「レイド、それをその辺に撒いてみよ」
「あ、ああ」
村長とイチェリアの視線が俺の手の中の袋を追うのを感じながら、俺はシロナの言うとおりに袋の中身を周囲にばら撒く。すると……粉はキラキラと輝きながら周囲に広がり……地面についた場所から、毒々しい色が消えていく。泡立っていた場所も、まるで普通の地面のような何かになっていく。
「おおおおおおお……!」
「凄いです! これなら!」
にわかにあがる歓声。なるほど、そういうことか……! それなら!
「よし、俺に任せてください!」
草むしりの仕事は散々やったから得意だし、俺には【毒耐性】もある。つまり……俺になら出来るってことだ。まずは、近くの毒草を全部むしってやる!
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
凄いな、毒消ししかドロップしない。まさか、他にドロップする可能性とかがないってことなのか? だけど、今は助かる。
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】からスキル【蝕地毒】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】からジョブ【毒草】がドロップしました!―
―【蝕地毒草】から【毒消しの粉(蝕地毒)】がドロップしました!―
……なんか、また俺に草なジョブが増えた気がする。ええい、今は気にしちゃダメだ。
そうやって俺は毒草をむしっていき……やがて、毒消しの粉の入った袋の山が積みあがる。
「はあ……つ、疲れた。もう立てない……」
「ずーっと動いとったからのう。さもありなん」
「よし、皆! 使徒殿の頑張りを無駄にするでない! 儂等でこの粉を撒くのだ!」
村長の掛け声で、村人のゴブリンたちが手に手に袋をとってあちこちに走って粉を撒いていく。その度に毒々しい地面は消え……村人たちの顔色もよくなっていくのが分かった。
そうやって、朝になる頃には……村人たちの歓声と、すっかり綺麗になった風景がそこにはあった。
「なんとかなった、か……」
「うむ。お主の手柄じゃぞ?」
「俺1人の、じゃないけどな。むしろ俺1人じゃ……」
村中に粉を撒いたのは村人の皆だし……俺1人じゃ、この方法を思いつくことすら出来なかった。シロナの助言があって……いや、そもそもシロナと出会って、俺はこういう事をできる力を手に入れた。
「俺1人じゃ、何も出来なかった。この力だって、シロナのおかげだ」
「それはもうお主の力じゃよ。力を使う意思もお主のもの。それに偽りはあるまい」
「だとしても……ありがとう。俺に、この力をくれて。おかげで、誰かの役に立てた」
必要とされて。それに、応えることができた。
「まあ、その礼は受け取っておこう。じゃが、お主がどう生きるかはお主次第。それを忘れるでないぞ?」
「分かってる。俺は……」
俺は……俺を必要としてくれるなら。それなら、モンスターでもいいかなって。
そんなことを思いながら、疲労で意識を彼方へと飛ばした。




