デモンフォース
「でも、なんていうか……」
「ん?」
風が、吹く。平原に吹く風は、少女の髪を揺らして。
「貴方たぶん、こっち側に来たほうがいいと思うんです。やっぱり、あんまり人間っぽくないですもの」
「……俺は、人間だよ」
「貴方がそう言うならそれでも。だとしても、さっきのお話だと人間のとこでは泊めてくれませんよね?」
「うぐっ」
まあ、そうなんだよなあ。そりゃそうだけどさ。でもだからってモンスターかあ……。
「何か勘違いしてそうだから言っておくとのう。別にモンスターは『人間絶対滅ぼす主義』ってわけではないぞ?」
「えっ」
「むしろ、それは……」
言いかけたシロナの耳がピクリと動き、少女が先ほどのひも付き石……ペンデュラムを手の平から糸を垂らすような構えにする。そして遅れて俺も……ゾクリ、とした感覚を感じた。
「な、んだ……⁉」
「来るぞ。デモンフォースの尖兵どもがの……!」
「はい。でも、これは……!」
地面から、闇が這い上がる。急速に形を成していくそれは……無数のレッサーゴブリンの形になっていく。その向こうには、何やら毒々しい色の粘液の巨大な塊。ボコボコと音を立てながら隆起するソレは、すさまじい嫌悪感すら感じさせる。
「ビッグポイズンウーズ……! こんな所に!」
「ウーズ⁉ それって洞窟に出るとかいうモンスターじゃ」
「デモンとモンスターを一緒にしないでください!」
「ええ⁉ ご、ごめんなさい⁉」
「とにかく説明は後じゃ。ほれ、そこのナイフを拾って構えとけ」
「あ、ああ」
ドロップしたナイフのうちの一本を拾って、レッサーゴブリン達を俺は睨みつける。
よく分からんが……こっちには3人もいるんだ。しかも1人は神様だ。そう簡単に負けやしないぞ!
「ギイイイイイイイ!」
「ゴブアアアアア!」
掛け声をあげてこちらに向かってくるレッサーゴブリン達の顔面に、風を裂いて飛んだ長方形の紙のようなものが貼りつく。何やら読めない文字か図形が書かれたソレは……シロナの小さな呟きと共に輝きを放つ。
「爆ぜよ」
轟音。レッサーゴブリン達の身体が爆発と共に吹き飛び、巻き起こる粉塵に向かって少女が指を突き付ける。
「導くは光の矢。弓神星より来たる輝きよあれ! レクスアロウズ!」
そうして放たれたのは光の矢の群れ。およそ十数本ほどはあろうかという光の矢が降り注ぎ……やがて粉塵が晴れた後には、ゴブリンの死骸しか残ってはいない。
「お、おおー……」
凄いな、あっという間じゃないか!
「ふう、なんとか……」
「まだじゃ!」
「えっ……」
驚いた様子の少女の足元に、何かがゴプリと音を立てて漏れ出してくる。
「危な……!」
「きゃっ!」
少女を突き飛ばそうと駆け寄って、間に合わなくて。俺と少女は地面から湧き出したビッグポイズンウーズに飲み込まれてしまう。




