ゾンビ(哲学)
「へ⁉」
「もっと怖いの想像してました」
「な、ナンパですか⁉ お気持ちは嬉しいですけど私はその!」
「あ、いや。そういうのじゃないです」
流石にレッサーゴブリンと比べたって言ったら怒られるだろうって分かるくらいの頭は俺にだってある。
「そ、そうですか? えーと、それより、その! こうして会ったばかりでお願いするのも恐縮なのですが!」
「あ、はい」
「そこに積んである薬草類、もし売り先が決まっていないであればお売り頂けませんでしょうか⁉」
俺は思わずシロナと顔を見合わせ……少女に視線を戻し「いいですよ」と答える。
「勿論無理を言っているのは承知です! しかし此方にも……え?」
「だから売りますよ。必要なんでしょう?」
「え、はい。それはもちろん。でも……え? 本当にいいんですか?」
「売り先が決まってるわけじゃないですし」
俺の言葉に少女は疑問符を浮かべ……やがて「あー」と呟く。
「……薬師様?」
「違います」
「薬屋さん」
「違います」
「商人」
「違います」
「何かしらの商売の方!」
「違います。別に売り物でもないんです」
「実は困ってる妹さんとか村の方とかが」
「根無し草です」
あと薬草です。なんか毒耐性の効果とかあるらしいですよ。ハハッ。
そんな事を頭の中で考えてる俺に少女は更に首を傾げ、俺をじっと見る。
「……なんで、こんなに薬草を?」
「やむにやまれぬ事情がありまして」
いやほんと。こんなに薬草あっても持ち運べないよな。テンション上がってやりすぎた感は否めない。
「でも、そういうことなら全部買い取らせていただいても?」
「ええ、勿論です。あ、でも俺お金貰っても……」
「はあ。確かに多少のゴルドをお持ちみたいですけど」
言いながら少女が視線を向けたのは、あのゴルドとか呼ばれてる銅貨の山だ。
……え? これもしかしてゴブリンのお金なのか?
「でも、精々200ゴルドですよね? これだけの量の薬草であれば、最低でも20万ゴルドはしますよ?」
「えっ。あ、いや。そういう意味じゃ」
「こやつはのう、人間社会を追い出されたばかりじゃからの。モンスター界隈の事は分かっとらんのよ」
「はあ、そうなんですか」
シロナのフォローに納得したように頷いた少女は、俺にパッと笑顔を向けてくる。うーん、普通に可愛いんだよな、この子。
「そういうことでしたら、人間お辞めになってモンスターになったってことですよね?」
「違うと思います」
「でも人間の中で暮らせないわけですよね?」
「それは、まあ」
「だったらいいじゃないですか! モンスターってことで!」
「いや、人間とモンスターの境界ってそういうもんじゃないような」
「でもゾンビとかデュラハンとかも人間やめてモンスターになってるわけですし」
「まず死んでないんですよねえ……」
「社会的には死んどるがの」
それ以上追い詰めると泣くぞ? 事実だけどさ。




