第3話「恋の始まりは突然に」
令和が始まりましたね(*´ω`*)
ゴールデンウィークいかがお過ごしでしょうか?
さて、第3話でございます。
では、どうぞ!
ゆりえは大阪行きの飛行機の中で幼少期の頃の夢を見ていた。
『ゆりえ』
『なあに、お母さん』
幼少期の頃は母・光子が信仰する宗教をゆりえも信仰していて、母娘の関係は良好であった。
『マドンナリリーはね、聖母マリア様の象徴とされていて、聖書にもいっぱい出てくるのはゆりえも知っているわよね?』
『うん』
『だからゆりえ、このお花は大事に育てなくてはならないの。わかった?』
光子は昔、母方の祖父母宅の温室を約6畳分の面積で借りてマドンナリリーを育てていた。それを宗教施設に持って行き、礼拝室をマドンナリリーで飾り立てていたのだ。
しかし、そこにはマドンナリリーだけではなかった。
『もうひとつ大事なことを教えるわ』
『なあに?』
『黒百合の花は私達を裏切った者に送る花よ。もし、信仰をやめて神に背いた者がいたならばゆりえ、黒百合のの花一輪にをその人の元へ贈りなさい。そして死の祈りを捧げるの。わかった?』
そして時は流れ高校時代へ。
『ゆりえ、集会に行くわよ』
『私行かない』
『どうして?小さい時はあんなに張り切ってたのに』
『もう子供騙しなんて信じない』
『子供騙しですって?あなた、学校で悪魔が憑いたのよ!今すぐ集会に行きましょう!』
光子はゆりえの腕を掴み、引っ張った。
『嫌だってば!痛いってお母さん!』
ゆりえは光子の手を振り払った。
『まぁこの子ったら!いったいどんな悪魔憑いたのかしら!主よ、我に力を与え給え!ライト!クロス!ライト!クロス!」
光子はゆりえの背中に馬乗りになり、鞭で叩いた。
ーーバシッ!バシッ!バシッ!
『やめて!痛い!痛いってば!こんなの虐待だって!』
『お黙り!悪魔ァァァァァ!!!』
『いやぁぁぁぁ!!!』
ゆりえはそこで目が覚めた。額には汗が滲んでいる。
「大丈夫か?魘されとったで?」
「だ…大丈夫です」
ゆりえは大丈夫ではなかった。
(私はお母さんにとっては裏切り者。もしかしたら今頃ポストには黒百合の花が…)
大人になった今馬鹿げた話に過ぎないのだが、心の奥では恐ろしく思っている自分がいることをゆりえは知った。
(帰ったら黒百合のが一輪ポストに入っているかもしれない…黒百合には「復讐」の意味があるから…)
ドギマギさせていると、
「初めての飛行機、怖いんか?」
と古瀬が聞いてきた。
「へ?」
ゆりえは無意識のうちに古瀬の手を握っていた。
「あ、あのこれは…その…」
「素直に怖いって言えばええやろ?」
「こ…怖いです」
フライト中、2人はずっと手を握っていた。
古瀬の優しさに、ゆりえは男らしさを感じた。
大阪に着き、2人は古瀬の両親が眠る霊園に訪れた。
「うちの親はこの菓子が好きやったんや」
古瀬は空港近くにある知り合いの店から購入してきたパネットーネを墓の供物台に置いた。パネットーネはスポンジケーキの中に、レーズンなどのドライフルーツが練りこまれたマフィンのような菓子である。
「古瀬さんのご両親がお好きだっただけあって、とても美味しそうです」
「あとで食べればええ。どうせ持ち帰らなあかんし、食べるのも勉強やで」
「いいんですか?楽しみです」
2人は線香を焚き、墓に向かって手を合わせた。
「おとう、おかん、こん子はゆりえ。うちの従業員で、住み込みで働いてくれてんねん」
古瀬が亡き両親に対してであるが自分を紹介してくれた…ゆりえは改めて自分の居場所を見つけた喜びを覚えた。
墓参りを終え、2人は霊園近くの公園でパネットーネをランチとして食べることにした。
「さっぱりとした味で美味しいです古瀬さん」
「そうか、ゆりえもパネットーネ美味いかぁ。買うてきて正解やわ。今度は俺が作ったるわ」
「ほんとですか?楽しみだなぁ、古瀬さんが作るパネットーネ」
「あ、そうや、一緒に作ったらええ特訓になるで」
「古瀬さんが教えてくれるんですか?!」
「せやで。時間あるときにでも教えたるわ。花嫁修業にもなるやろ」
「花嫁修業…私結婚するのかなぁ」
「まだ20歳やから焦らんでもええけど、修業は早い方がええやろ。俺の方が焦らんとやばいけどな」
古瀬は29歳だ。忙しい彼でも結婚願望があるのかもしれない。
「料理できるし、こんなにいい人なのになんで彼女いないのか、私には不思議です」
「仕事が忙しいから違う業界の子やとすれ違いになってしまうから傷つけるがオチやろ」
なんとなくその言葉にゆりえは経験があるのだろうと思った。古瀬が優しくて面倒見のいい性格だとこの1ヶ月間で認識しているゆりえには、仕事の忙しさと彼の繊細な優しさが友達止まりになってしまうような気がした。
ランチのあとは大阪を観光した。大阪が初めてのゆりえのために古瀬は思い出のある場所を案内した。
幼少期に幼馴染と遊んだ公園、通った小学校、中学校、大阪の子供ならば学校行事で何度も行く太陽の塔、成人式に登るあべのハルカス、大阪北部の人間はあまり近づきたくないテレビでも超有名道頓堀…などなど、時間と体力が許す限り2人は回った。
クタクタになった2人が泊まったのは梅田のビジネスホテルだ。新しくもそれほど古くもない、普通のホテルだ。
しかし、普通でないことが一点起きた。
「なんの手違いが起きれば2人で一部屋、シングルベッドひとつになるんです?しかもソファーなし」
予約したホテル側の手違いで一部屋にシングルベッドひとつになってしまったのである。しかもホテルは満室でこれ以上部屋を用意することができない、と言うことだった。ほかにホテルをネットで検索するも、どこも満室という状況だ。
「しゃあないわ。今日はここで2人背中合わせで寝よう」
「 …変なこと、しないでくださいね?」
ゆりえは布団で胸元を隠し、上目遣いで古瀬に訴えた。天敵に見つけられてしまったハムスターのような愛らしさがあり、古瀬はどきりとした。
「襲わんわ。そないなことしたら関係崩れるやろ?それに今日はそんな体力ないから安心せい」
そういうと古瀬はゆりえの頭を優しく撫でた。
「先に風呂入り。俺、飲みもん買うてくるわ」
古瀬は部屋を出て行った。
残されたゆりえは大きな手で撫でられドキドキしている自分に気づいた。
風呂に入り白Tシャツにピンクのハーフパンツ姿で出てくると、買い物から帰ってきた古瀬がベッドに腰掛けていた。
「おかえりなさい」
「ゆりえの好きなもん、買うてきたで」
コンビニの袋から出てきたのは、ゆりえの好きな桃味の炭酸水だ。
「ありがとうございます!今お金払いますね!」
バッグから財布を出そうとするゆりえを古瀬は止める。
「そんなんええ、ええから」
「なぜ…悪いじゃないですか、ホテル代から何から何まで…」
「俺が好きで出してるんや。ゆりえのお金は借金返済に当てないとあかんやろ?」
「そう、ですけど…でもまたなぜ自分の好きで出すなんて」
「なんでやろうな」
そう言って古瀬は微笑むと、古瀬は0カロリーのコーラを飲んだ。
「俺風呂入るから、先に寝とき」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
疲れているせいか、ゆりえはすぐに眠りに落ちていった。
翌朝、目覚めると2人はお互い向かい合わせになって寝ていた。狭いシングルベッドで2人の距離は0に等しい。
「おはようさん…」
「おはようございます…」
寝起きの古瀬はなんだか言葉に表せないほど、妖艶な大人の男の色気が漂っていた。この人は本当にかっこいい人なのだ、そう思い
ゆりえはドキドキした。
「どないしたん?…ん?」
本人はわかっていないようだが、寝起きの甘いマスクに関西弁とのギャップが更にゆりえを惑わせドキドキさせる。
「ゆりえ…水取ってくれんか?俺朝苦手やねん」
頼みごとをされゆりえはハッと我に返った。すっかり見惚れてしまった自分に気づいたのだ。
冷蔵庫から水を取り出し古瀬に渡す。
「ありがとう…」
起き上がり気だるそうに水を飲む姿も色気を感じる。再びぼぉーと見惚れていると古瀬が話しかけてきた。
「ゆりえ、朝シャンする派か?」
「ええ、まあ」
「なら先入り。女の子やから準備に時間かかるやろ。俺まだボーとしとるで、後で入るわ」
「わかりました…じゃあお先に」
バスタオルと着替え、そして一式が入ったポーチを持ってバスルームに入る。
(息が止まるほど美しいって言うのかな…本当に止まるほど見惚れっちゃったし)
シャワーを浴びながらゆりえは気づいた。自分は彼に恋をしてしまったのだと。
シャワーから上がり古瀬と入れ替わるようにバスルームから出た。ベッドには微かに古瀬の温もりと体臭が残っていて、ゆりえは少しの間布団を被って包まれてみた。
本人が見ればきっとドン引きしてしまうであろうことも、恋をしている人間にはできてしまう。それにしても、好きな人の香りはなぜこんなに心が安らぐのだろう化。20年生きていても未だその答えは見つからないゆりえであった。
帰りの飛行機でゆりえは夢をみていた。
夢の中でゆりえは平日の偶の休日をのんびりベッドの中で過ごしていると、店の勝手口のインターホンをしつこく鳴らす音が聞こえてきた。
ーーピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポンピンポン!
古瀬は調理中なのか気づいていない様子だ。
ゆりえはベッドから起き上がり1階に降りてインターホンのモニターを覗いた。しかしいるはずの人物がいないのだ。勝手口の扉を開けてみるが、やはりそこには誰もいない。
「小学生のいたずらかなぁ…」
2階の自室に戻ろうと踵を返すと、真後ろに鬼の形相で立っている母の姿があった。両手には黒百合の花束を抱えている。
「…」
何か呪文のような言葉を呟きながら迫ってくる母の来襲に、ゆりえは兢々(きょうきょう)として後退りをする。
「…主よ、我に力を与え給え。今ここにいる悪魔に愛の裁きを!!」
母が呟いていたのは、宗教内でやっている悪魔払いの儀式の呪文だった。
「ライト!クロス!ライト!クロス!悪魔よ去れ!」
母は花束を振り回し、ゆりえを叩く。
「いや!やめてよ!お母さんやめて!」
花束で叩かれながらも抵抗を続けていると、どこからかゆりえを呼ぶ声がしてきた。
「ゆりえ、ゆりえ、起きるんやゆりえーー」
夢から目を覚ますと、古瀬が心配そうにゆりえを見ていた。
「魘されてたでぇ。悪夢でも見てたんか?」
「…はい」
額に触れてみるとびっしょり汗をかいていた。すかさず古瀬がハンドタオルで汗を拭ってくれた。
「もうすぐで空港着くでぇ、安心し」
「はい」
古瀬の大きな手がゆりえの小さな手を優しく包む込んだ。そんな古瀬の優しさにゆりえは安心感を覚えた。
今回も最後までお読みくださった皆様、ありがとうございます。
私事ではございますが、かぐら初のレビューがつきました!ありがとうございます!
令和時代も頑張って書きますのでよろしくお願いします!(*´ω`*)
では、第4話でお会いしましょう!




