表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢と幻のキネマ館  作者: 黒木 静
『白と黒のメリー 白黒編』
90/453

80.暗黒

 


 80.暗黒



 メリー達は深淵の中を歩いていた。花音はその後に続く。

 すでに半分以上を踏破し、残りは今下へ降りているこの螺旋階段のみである。

 張り詰めた雰囲気。それは螺旋階段の端々から感じ、二人の精神を徐々に削りとっていた。花音は息をするのも苦しそうに喘ぎ、メリーは奥にある邪悪の気配が、自身の中に眠る“本能”とせめぎ合っているのを感じていた。


「あなたに行っておきたいことがあるわ……私を透視してごらんなさい」


「……透視……え、ええ。分かりました」


 その場で怪物の瞳を開く。半身怪物の花音には難の苦にもならないことだった。そして、メリーの服の裏側を知る。そこは何も着ていない、ただの少女の裸体だった。

 メリーの首筋から胸に掛けて走る健康な色をした血管。腕はさらりと伸び、まるでシルクのような輝きを纏っていた。腹から足先まで、まるで芸術品のように整った体だ。


「何が見えた?」


「メリー様の体……です」


「もっと深く見てご覧なさい」


 花音は言われた通り、より深く透視した。しかし、肝心の内蔵や血管が見えない。それを覆う膜のようなものが邪魔している。それは、透視防止用のシンボルだ。


「透視を防ぐ武装があります」


「ええ。そう。私はこれ以上見せられない体なの……しかし、あなたには正体を晒してしまうことになるでしょう……アブホースは、必ず私の“弱点”を突いてくる……だから、もしものことがあったら……あなたは私の心を魔法で消しなさい」


「――精神汚染ですか?」


「それより厄介なこと……分かったかしら?」


「はい。お任せください」


 

 そして、闇が深まる。

 暗黒の玉座へと辿りつく……。

 東京地下、ジオフロント。広大な敷地を誇るこの場所。その天井は今まで歩いてきた分とほぼ同じ。地上へ向けて突き出したビル群。居住区は団地状で、連なった形で点在していた。その中を、二人は慎重に歩いていく……メリーの感じ取る先に、その気配がある――花音はこのジオフロントの暗さの中に、いつそれが出てくるのか、気が気ではなかった。一点の照明すらないこの空間は、あまりにも虚無が満ちていた。


『――拒むものは無く……ただ模倣ミメーシスへと形を変えるのみ――』


『――陶酔する原型イデア。混乱する想起アナムネーシス――』


『――産婆術は反転する。生むものは死に絶え、死ぬものは蘇る――』


『――模倣しか知らぬ怪物よ。生み出すことを定めた女王よ――』


『――お前に何が分かる――我が世界の一端でも垣間見たつもりか――』



「――偽りの、穢れた人形が――」



 暗闇が、眼前を覆い隠す――――ただならぬ気配。それは、『暗黒のアブホース』。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ