65.妹
65.妹
一方、メリーと愛路橋花音の両名。
激しい戦いの音を耳に挟みながら、少しずつ国会図書館へと歩を進める。メリーの両手には拳銃『ヘラクレス』が握られている。
メリーは戦闘が苦手だ。自発的に動くにはあまりにも体が付いていかない。だから、この『ヘラクレス』を実際、達人以上に使いこなすことはできない。
だが『トーヴハァ』を追い詰めた実力は確かである。『ヘラクレス』は無音無反動の恐ろしい兵器。威力も無反動を思わせぬ決定的な破壊的な力を見せる。実際にロバートの攻撃を無効にした甲殻獣の甲羅をたたき割り、死に至らしめた。
花音の魔術の腕もメリーに並ぶ鮮やかさがあった。彼女の操る空間制御の魔術は怪物の肉体の間に“空”を生み出す。硬い装甲の怪物は中身を“ごっそり”この術に持って行かれ、もぬけの殻となってしまう。
「ロバートと近い術ね。あなた、常人の域を超えているわ」
「そうでなければ、人類を反魂しようなんて、考えないでしょう?」
「……そうね。人間の考えることではないわね」
国会図書館入口に到着したらしい。途中の道は草や木に囲まれていたが、怪物は一体も存在しなかった。先程の絶叫で、呼ばれたように声の方へと駆けていったのを見ていた。恐らく、あちらが全て惹きつけてくれているらしい。
「心配? 妹のことが」
「……私の、最後の家族です。死んでも守らなくてはいけません」
愛路橋の表情が硬くなった。
「彼女は、いつも私ばかり気に掛けてくれます。姉だから、姉だから……そういって、いつもいつも、苦労するのは、風歌なのです」
彼女の瞳には、いっぱいの滴が溜まっていた。
「私は、妹に何もしてあげられないのでしょうか?」
「そんなこと、ないわよ」
「でも、今度だって、風歌は危険な場所へ! 私は、一体どうすればいいのかしら! ああ、私は、また、自分の判断で仲間を殺してしまうのかしら……」
メリーが、泣きじゃくる花音の背を撫でた。
「泣いては駄目。あなたがここで死んだら、風歌が悲しむ。そうでしょう?」
風歌が悲しむ。その言葉に、はっと息を飲む。
「――ごめんなさい。私は、また、慰められました。さっきも、風歌に慰められたばかりなのに……ごめんなさい。メリー様。ええ。行きましょう」




