64.強襲
64.強襲
黒鉄の巨体は、左手のレーザーライフルを敵へと向けた。びっしりと繋がれたケーブルの先には、一体どんな動力があるのか知れたものではない。
『くぅぅらいなさぁぁぁああいいい! レェェェザァァビィィムゥゥウウ!』
黒兎の情熱的(?)な掛け声が耳朶を震わせる。そして、その震えは空気を伝播し、大気を切り裂いた! 白い光線が『ウボ・サスラ』の頭蓋をふっ飛ばす!
体が斜めになり、徐々に力なく倒れていく。それは『ウボ・サスラ』の停止を表していた。
『――『ウボ・サスラ』の心臓は“頭”! 絵本たんの幻視、私には聞こえたわよ! 絵本たぁぁぁぁぁあああああん!』
これには、全員の顔に驚愕が浮かんだ!
「ふっ……あの馬鹿、やりおったわ!」
「すごい……都市伝説を真実に変える力? あんな魔術、僕は知らないぞ!」
「あははっ! これはすごいわ! お母さまにも見せたいくらいね!」
「全く、どいつもこいつも、焼き殺したくなるくらい、馬鹿ばっか!」
「――すごいわ……黒兎さん!」
『いよおぉぉぉぉおおおおし! 次行ってみようか! 空中の怪物を葬る―――』
さらなる爆音!
皆が一斉に目を瞑った。閃光は激しく、スカイツリー一体を瞬かせた。
さらに滞りなく発生する地震! 足元をすくわれそうになる。バランス感覚を失う前に、雨道が声を張り上げた。
「ちっ! 皆、伏せろ!」
「何だって言うんだよ!」
「こら! ばかロバート! 速く隠れて頂戴!」
「風歌さん、速く!」
「え、ええっ!」
……………………。
……………。
……そして、煙の立ち込める中、全員の瞳に写ったのは、黒兎操る巨大決戦兵器の勇ましい雄姿……。
否、――――この影は違う。黒兎の兵器では………無い!
そう……この姿は。
大きな、鯨だ。
「―――――――そ、そんな……『爆、炎弾(メガ、フレア)』………?」
風歌の驚愕はもっともだ。こんな馬鹿みたいな破壊力を持つ攻撃を持つ怪物は一体しかいない。黒兎の操る人型兵器を、『天磐戸』ごと吹き飛ばす怪物なんて……。
「な、何故あいつが、何故あいつが居るんだッ!」
雨道でさえ、あまりに巨大な敵を前に恐怖した。
絶望。破壊。爆炎。怪物。軍勢。天樹。崩壊した、黒兎の決戦兵器。
突きつけられた現実。煙が霧散していくごとに姿を現していく死神。
圧倒的な存在力を持つ鯨の怪物は、地上をその影で覆い隠していく。
ウェンディは知っている。怪物を纏めた本の中にあった凶悪な、その怪物の正体を。
「あれが……―――『バハムット』!」
すでに対決から、一時間が経過していた。




